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【 Crew.3 】 ボランティアスタッフ/里佳さん

地方の小さなクラブにとって、ホームゲームの運営は一大イベントでありながら、クラブスタッフのみでは実行不可能な大仕事。ボランティアとして携わってくれる方々の尽力があってこそ、ホームゲームの開催ができている。前編では、2023シーズンよりボランティアスタッフとして活動されているサポーターの里佳さんに思いを聞いた。

PROFILE
里佳(りか)さん 大阪府出身、福井在住25年
子供時代は野球が好きで、西宮球場に通っていた時期もあった。
コロナ禍前までは娘さんと一緒にアイドルのコンサートを楽しむ。
2022シーズンより福井ユナイテッドのサポーターに。
推しは志摩豪瑠選手。 

ー まず、ボランティアでの業務内容について教えてください
私の担当で1番多かったのが、グッズ売り場です。売り場での販売は、品出しから担当しています。ボランティアの集合時には、売り場のワゴンはあらかじめセットされていますが、ボランティアみんなで商品を並べて、試合が始まる2時間前から販売をして、試合終了後の撤収のところまで行います。

ー グッズ売り場での売れ筋やオススメは?
シーズン当初は、やはり新しいタオルマフラー。通称”タオマフ”を買われる方が多いと思います。そして新しいグッズ。例えば、昨年にクリアボトルが出たときは、クリアボトルとカメイ珈琲店さんのコーヒーセットを結構買っていただけました。新しいグッズが出ると、やはりそれを目当てに来ていただいてますね。そして試合終了後には、帰りにもう1回ガチャガチャを回していかれる方が特に多い印象です。

ー 売り場では選手の人気度とかもわかったりする?
そうですね、ガチャのところでは。出てきたカプセルを開けてから、「やったー!」との声が聞こえたりするので、それで分かります(笑)

ー そもそも、福井ユナイテッドを初めて見に行かれた理由は?
実は私、福井ユナイテッドを応援するようになったのも、その前年度なんですね。2022シーズンの4月、北信越リーグ開幕戦で初めて観に行きました。
それまでは全く、福井ユナイテッドのことを知らなかったんです(笑)。地域リーグの存在も知りませんでした。2021年11月に全国地域サッカーチャンピオンズリーグが三重であったというニュースを新聞で読んで、そこで初めて、福井にこんなチームがあるんだっていうのを知ったんです。
もともとは音楽関係が結構好きだったので、ライブに行ったりするのを楽しみにしていて、自分自身も女声合唱をやっていました。でも、その頃はコロナ禍でその辺りがやっぱりやりづらくなっていました。そこで、ちょっと新しい何か楽しみがないかなって思っていたときでした。
そんなときに『ディス・イズ・ザ・デイ』っていう本を読んだんですね。たまたま図書館で借りたものです。その本は、サッカーの国内リーグの話なんです。福井も鯖江のチームが架空のチームの一つとして登場します。
フィクションなんですけど、それぞれのエンブレムとか、本拠地とかも設定されていて、すっごくそれが面白かったんです。試合とかサッカーのことが詳しい訳じゃなくて、最終節観戦に向かうサポーターの心情や人間模様が描かれているんです。この本と、地域リーグのチームが福井にもあるんだって知ったのがちょうど同じ時期だったんですね。2021年の11~12月ぐらい。だから、福井にも地域リーグがあるんだったら、4月になったら観に行こうと思っていました。

ー 誰かに誘われたとかじゃなくて?
誘われたんじゃないんです。でも、テクノポート福井スタジアムにはJリーグのチームが来たときに観に行ったことがあったんですよ。多分、娘が小学校の低学年だったから、17、8年前かな? 確か、京都サンガFCとべカルタ仙台の試合?そのときに、すっごい間近で見ることができました。Jリーグが開幕した頃は何回かスタジアムに見に行ったことはあるけど、お値段の安い席で見たし、スタジアムが陸上競技場ですっごい遠いところから見ている感覚でした。それが、テクノポートは球技専用スタジアムで、すっごい近くでみて感動したっていうのはずっと記憶にはあって。また観に行こうかなと思っていたんです。

ー 2007シーズン以来のサッカー観戦はどうでしたか?
そうですね、楽しかったです。試合も7-0で勝ったんでね。北川滉平選手がすごい活躍しましたし、ベンチには藤吉監督がいました。名前を知っている人が監督をしているってのが、まずは感動でした。あと、やっぱりコロナ禍では密閉とか密集とかダメだったでしょ。みんな楽しそうにサッカーしていましたし、広い空間っていうのが一番気持ち良かったです。開放感が嬉しかったですね。

2022.4.10 ホーム開幕戦でリベルタス千曲FC戦、北川滉平選手(右)の活躍もあり7-0で勝利

ー 2022シーズンはコロナ禍で声出し応援が禁止でしたね
はい、静かに見てましたね。
のどかで静かだけど、楽しかった。

ー 14年ぶりのサッカー観戦から、福井ユナイテッドにハマったきっかけは?
多分、サポーターのボヘミさんがいなかったら、もしかしたらこんなにハマっていなかったと思います。初めて福井ユナイテッドを見に行った開幕戦のトイレで、偶然お会いしたんです。そしたら青いアフロを被ったボヘミさんから「こんなかっこうで私はいるんです。もうすっごい楽しいんですよ!」って言われて。"ほー"ってなったのが最初の出会いでした。

テクノポート福井スタジアムのゴール裏を青に染める福井ユナイテッドサポーター

ー 青いアフロは強烈ですよね
メインスタンドから見ていたときに、なんかサポーターっぽい人もいるなとは思っていたんですけど。 トイレで青いアフロを見て「ゲッ!」て思っていました(笑)当時はサポーターの人のイメージって怖いってのがあって、海外ではフーリガン*とかいますから。でも福井ユナイテッドのサポーターは穏やかですし、ここだったら見ていられるかなというのは大きかったですね。ガンガン応援したいなという人には、なんか物足りんなと思われるかもしれないですけど。

*フーリガン
サッカーの観戦中に暴れたり、試合進行を妨害する熱狂的なサッカーファン

 

ー 福井のサポーターの方はいつも温かい目で見守ってくれています。時には厳しい意見も必要との声も耳にしますが
でも、もう私たちの年代は 「やっぱり選手は頑張ってるんやから、そんなのは、なんで私らが言わなあかんの、言わなくても選手が一番わかってるやん」 という思いです。それに、言ってもスッキリはしないでしょ。絶対に心に残るから。あんなん言わんかったら良かった、っていう思いになるんやったら、言わないほうが良い。自分が絶対にできないようなことを選手はされているのですから。性格的にやっぱり、負けたらウダウダっていうのは嫌なんで。もう次、はい次はもう切り替えて、です。嫌なことは残さないタイプですね。

ー チームで推しの選手はいますか?
います。志摩豪瑠選手です。

ー その理由は?
全く選手のことはわかっていなかったんですが、とりあえず2023シーズンは新加入した選手はちゃんと覚えようと思って、選手個人のインスタとかSNSをフォローしたりとかしました。そこから試合を見に行ったときに、すごいプレーが気持ちよかった。ピッチに入るときには必ず一礼をするし、出るときにも一礼。あと、監督らに何か言われたら、手を振って応えてるんですね。そういう姿が気持ちよくて、プレーが上手とかよりも、その姿がいいなと思って。それが始まりです。

里佳さんの"推し"  志摩豪瑠選手は2023シーズンに加入。身体を張った守備が持ち味

ー では、ボランティアを始めたきっかけは?
2022シーズンの途中で、FBC(福井放送)の番組だったと思うんですけど、ボランティア紹介の放送を見ました。その番組の中で、運営の人が少ないっておっしゃっていて。それで、"自分もできるかな?" と思ったのがきっかけです(笑)。どうせ会場に行くんだったら、少しお手伝いできればいいかなって思ってね。スポンサーの方ほどのお金は出せないけど、お手伝いなら少しはできるんじゃないかって。

ー ボランティアをやってみていかがでしたか?
最初の頃はやっぱり失敗も多かったので、これでいいのかなっていう思いがありました。

ー どんな失敗をされた?
スマホ決済とか、カード決済とかがあるんですけど、その立ち上げが遅かったりとか。あと、グッズ売り場はそんなに混まないけど、去年の敦賀での試合はチケット売り場に、かなり行列ができてしまって。それはかなりバタバタしました。

ー 毎回、キックオフ30分前になると急に混雑してきますよね
そうですね。皆さん同じ時間帯にみえられるんです。でも、それはありがたかったんですけど、やっぱり最初の頃は慌ててしまったので。今だったら「少々お待ちください」と言って、待ってもらえると思います。

ー これまで売り場等の経験はありました?
売り場は、学生の頃にスーパーのバイトとかはしたことはあります。でも、試合会場でのグッズ売り場は品数も限られているし、綺麗に包装しないといけないとか、そういうこともなく商品をお渡しすればいいだけなので。それよりも、混雑したときのドキドキ感があります。それ以外は大丈夫です。
知り合いのサポーターの方もたくさん来ていただいて、お話できるので楽しいです。

ー ボランティアの醍醐味みたいなのは?
そうですね、一番嬉しかったのは昨年の「ファン交流会」のときに、選手全員の方とボランティアで記念撮影をしてもらったことです。そういう形じゃなくても、売り場でちょっと見かけたら「ありがとうございます」とか、 終わってからの片付けで重いものを運んでたら「大丈夫ですか」とか色々と選手が声かけしてくださるのは嬉しいですね。
あと、もう1つはサポーターの方とたくさん知り合いになれたことです。同じスタジアムにいても、サポーターさんは、それぞれ自分の好みの場所で試合を観ているので、なかなか会えないこともあります。でもグッズ売り場は皆さん必ず通られるので、お顔を見れると嬉しいです。

「ファン交流会2023」でのボランティアスタッフと選手全員での集合写真

ー ボランティアについての要望や改善点はありますか?
試合が終わってからの撤収は、男性の方でも結構大変みたいなので、終わってからだけでも手伝っていただける方がいると助かります。特に、撤収で会場の周りのノボリ旗を回収してくるのが大変です。春先はまだいいんですけど、真夏はやっぱり暑さで疲れますね。だからスタッフの方も大変だろうなと。積み込むだけでも疲れる感じですよね。

運営ボランティアスタッフとしてホームゲームの活動をサポートいただいている皆さん

ー その他、クラブ側に対する要望は?
実はスタッフが、すっごい少人数でいろんなことされてるのがいつもすごいなって思っていますので、そのうえ要望するような偉そうなことは…。ほんとに、あの人数でどうやって回ってるんやろうって、思ってるんです(笑)

ー 具体的にこんなクラブにという思いがあれば聞かせてください
上のカテゴリーに行っても、今のこの和やかな雰囲気を残しておいてほしいです。去年の秋かな。カターレ富山とのトレーニングマッチがあったときに、富山さんの観戦の注意事項とかを見ていたら、選手と会うのはこのゾーンだけとか、すごいビシッと決められていて。そういうのになるとすごい緊張しちゃって。行っていいのか悪いのか戸惑いました。徐々にカテゴリーが上がっていけば、ひとつずつそうなっていくんでしょうけどね。スタジアムに来る人は増えて欲しいけど、 でもたくさん人が来られることによって規制が厳しくなるのも寂しいことだし、難しいと思いました。

ー いちサポーターとして、 福井ユナイテッドに臨むことはありますか?
もちろん、上のカテゴリーには行ってほしいですけど。それ以前にクラブがなくならないでほしい。せっかく福井にあるのに。前身のサウルコスから名前が変わったっていうことは、ニュースとかでは知っていたんですけど、そのときは深く考えていなかったので。野球のBCリーグではエレファンツも完全に消滅してしまいましたから、それはかなりショックでしたね。
クラブがなくならないでほしい。それが一番の願いです。

(インタビュー/細道 徹)

試合前、チケット売り場に行列ができた敦賀でのリーグ戦開催。昨季最多1,583人の観客を動員