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【#17】本当に瞬発力を高めたいんだったら瞬発力トレーニングをやるよりも先にやるべきことがあるケースもある

この仕事をしていると、知人から『瞬発力高めたいんですよね〜何かいい種目ないっすか?』という相談を受けたり、競技コーチから『あいつは瞬発力がないから、瞬発力を高める種目を入れてくれ』という依頼を受けることがしばしばあります。

もちろん、瞬発力を高めることはアスリートにとって重要なことです。
ただ足りないのは、本当に瞬発力でしょうか。

今回はそんなお話です。


そもそも瞬発力とは

よく言われる瞬発力ですが、どんな意味を持つのでしょうか。
アスリートやコーチの方は、感覚的には自分の体を素早く移動させるという意味で使われていることが多いという印象です。

goo辞書で瞬発力を調べてみたところ
瞬発力とは、『瞬間に出せる、人間の肉体的能力。』と定義されていました。

(引用)https://dictionary.goo.ne.jp/word/瞬発力/

すなわち、瞬発力とは、『短い時間で出せる筋力のこと』と言えるでしょう。
いかに素早く、高い筋力を発揮するかという観点なので、より専門的な単位でいうとパワー(力×速度)という表現ができるかと思います。

まずは正しく動作で高い筋力を発揮することを目指す

上述の通り、瞬発力は短い時間で出せる筋力であるということがわかったと思います。

ただ、瞬発力を高めていくためには、瞬発力強化のためのトレーニングのような、短い時間で筋力を発揮する練習だけでは不十分です。

なぜなら、短時間での出力以前に、最大でどのくらいの筋力を発揮できるかということから目を背けることはできないからです。

確かに短い時間で素早く、筋力を発揮する練習は必要です。
それを身につけるために、クリーンやスナッチなどのオリンピックリフティングやジャンプ、メディシンボールを使ったスローイングなどが瞬発力強化のために代表的に実施されるトレーニングかと思います。

ただ、いくら素早く筋力を発揮できるようになったとしても、そもそも発揮できる筋力自体が少なければ、瞬発力(≒パワー【力×スピード】)は頭打ちになります。
また、発揮できる筋力が少ないことで、より速いスピードで出力をしようとした際に正しい動きができず、怪我につながってしまうということさえもあり得ます。

以上の観点から瞬発力(≒パワー【力×スピード】)を高める以前に、ベースとなる筋力を身につけていることと、それが正しい動作で行われているかが重要であるというわけです。

もっといえば、筋力や動作など、今の自分の状況を正しく評価できないといけないわけでして。

スクワットは何キロあがりますか?

ベースとなる筋力とそれが正しい動作の中で行われているかを評価/確認するために、下半身ではバックスクワットの重量が参考にすることが多いです。

自体重の1.5倍の重量で太ももが地面と並行になる(=パラレルでの)バックスクワットができることが、『瞬発力向上トレーニングを始められる上で十分な筋力を保持している』と評価できる一つの指標になります。

まだ自体重程度の重さでしかSQができない場合や、重量は持てるが深くしゃがめない場合はまず、筋力強化から始めることをおすすめします。

自分の体を移動させる、また移動させた後に支える(動きを止める)、それも素早くとなると体にかかる負荷は想像以上に高いものです。

瞬発力を高めることに取り組む前に、まずは自分が必要な筋力を備えているかを確認しましょう。

その他にも考えるべきことはたくさん

もっと言えば、もし瞬発力の強化以前に筋力が出ていない場合は、正しく筋力が出ない原因も考えねばなりません。
単純な筋量不足であれば、まずは筋肥大をする必要がありますし、関節の可動域が出ていないのであればそれを改善するためのエクササイズに取り組まなければなりません。

ただ漠然と『瞬発力が足りない』と決めつけて闇雲にトレーニングしても、実際に改善していくのは難しいでしょう。そもそも足りないのは瞬発力という評価自体が間違っている可能性があるわけでして。

自分が達成したい目標に対して、自分の現状を正しく判断し、正しい道筋を積み重ねていくこと。一見シンプルそうですが、さまざまなトレーニングの原理原則を理解しないと、なかなか難しいことです。
そんな時こそ、パフォーマンスアップの専門家であるS&Cコーチを頼ってほしいと心から願うばかりです。

まとめ

今回は、瞬発力という、割と漠然とした意味で使われがちだけどアスリートが向上させたいであろう内容を中心に、考えをまとめてみました。

いまだSNSでは『これさえやれば瞬発力アップ!』系の動画で溢れている世の中です。その人の状況も見ずによくそんなことを大々的に言えるなと感じる毎日であります。。

私はS&Cコーチとしてはまだまだ若輩者かもしれませんが、このような発信を続けることでどこかのアスリートの競技人生を最高のものにする手助けができれば、それでいいです。

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