【#8】上半身の種目だからって、ハムストリング肉離をれしたばかりの選手にベントオーバローやらせちゃダメでしょ。
怪我をしている競技選手に対して、患部外トレーニングを行うのもS&Cコーチの役割の一つです。
例えば下半身を怪我している場合には下半身以外の部位(上半身や怪我している逆の足など)を使うトレーニングプログラムを作成します。
患部外トレーニングを行うことで、怪我をしていない部位のコンデションを維持/向上することができ、患部が治った後の復帰がスムーズにいくというわけです。
今回は、怪我がある選手へのトレーニングプログラム作成の考え方についてまとめてみたいと思います。
トレーニングの特性を考慮しよう
それでは本題。
ハムストリング(下半身)の怪我がある状態で、ベントオーバーロウイング(上半身種目)を行って良いか。
もちろん患部の修復状況次第ではありますが、基本的に答えはNOだと思います。
ベントオーバーローイングは、股関節を曲げて上半身を倒した(ヒップヒンジ)の状態でバーベルを保持します。
つまり、ハムストリングが伸ばされた状態で、
さらに地面に足が接地して重りを支えることになります。(←後述します。)
この状態では、ハムストリングにも負担がかかることになります。
ベントオーバーローイング自体は主に背中の筋肉を鍛える種目ですが、その種目を行うためにはハムストリングにもある程度の負担をかけなければいけないのです。
だから、ハムストリングの怪我がある選手に対して、(患部外の)上半身トレーニングをやらせたいからベントオーバーローイングを処方するという考え方はあまりに安易であり危険なのです。
OKCとCKC
そのほかにも、考慮すべき点として、OKCとCKCがあります
OKC:Open Kinetic Chain 開放運動連鎖
→連動する関節運動の中で、1番遠い関節を自由に動かせる運動のこと。
例)レッグエクステンション、アームカール
CKC:Closed Kinetic Chain 閉鎖運動連鎖
→連動する関節運動の中で、1番遠い関節が固定された運動のこと。
例)スクワット、プッシュアップ
OKCでは、基本的に使われる筋肉以外の部位は固定されるため、そのトレーニングで鍛えたい部位をピンポイントで鍛えることができます。
それに対して、CKCは、末端の関節が地面などで固定された状態になることで、自分の体を支える必要があり、その運動で使われる筋肉以外にも負担がかかりやすくなります。
前項で挙げたベントオーバーローイングも、既出のとおり、足を接地して重りを支えるため、下半身はCKCになっていますね。
怪我の初期段階ではOKCをうまく活用することで、患部に負担をかけずに患部外のコンディション維持を行うことができます。
ただ、当然ですがCKCのトレーニングも、競技復帰のためには必要です。患部の状況を見ながら、OKC→CKCの形でエクササイズを進めていき、徐々に強度を高めていけると良いかもしれませんね。
まとめ
今回は、怪我がある選手のトレーニングプログラム作成の考え方について書きました。
S&Cコーチとしては怪我のない選手を強化するだけでなく、怪我のある選手のコンデションをいかに落とさず、最短で復帰まで持っていくかも力量が試される部分です。
怪我の知識も当然必要になりますが、S&Cのスペシャリストとして、ATやドクターと連携しながらリコンディショニングでも力を発揮していきたいものです。
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