SalesforceとTableau統合への道 AI編
SalesforceとTableauが提供するAnalytics Platformは今後どのように私たちの業務を変革していくのでしょうか?
こんにちは、Salesforceの深田(@fkohe1)です。昨年の4月にソリューションエンジニアとして入社して以降、大学院の頃にデータ分析と機械学習をかじっていたこともあり、SalesforceとTableauの統合について追ってきました。
そこで今回、両製品統合のビジョン及びロードマップと両製品統合の価値をユーザーに伝えるために作成したアウトプットについてまとめます。
■このnoteでわかること
・SalesforceとTableauが提供するAnalytics Platformを活用したDXのVision
・TableauとTableau CRM統合の方向性とAI/ML層の位置付け
・Tableau Prep BuilderのTabpyによるTableauとTableau CRMのAPI連携方法
Tableauとは? Tableau CRMとは?
Salesforceは、顧客情報を中心に据えて、営業、サービス、マーケティング、コマース、ITといった各部門を連携させることで、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するCRMプラットフォーム「Salesforce Customer 360」を提供しています。これには、アナリティクスの機能も統合されており、それを強化する目的で2019年6月にTableauを買収しました。
その結果、Salesforceの既存アナリティクス製品「Einstein Analytics」が「Tableau CRM」と変わり、Tableauブランドの新たな製品ポートフォリオとしてラインアップされました。
両製品の切り分けは難しく、明確な定義はありませんが、個人的に整理した両製品の位置付けは以下の通りです。(あくまでBIとしての比較になります。裏側のデータプラットフォームやインフラの比較ではありません。)
■ しっくりきている現時点での両製品の位置付け (※個人的解釈)
・Tableau:組織全体に分析プラットフォームを構築し、データカルチャーの醸成を支援する
・Tableau CRM:Salesforceプラットフォームに分析アプリケーションを構築し、データドリブンな意思決定を支援する
これだけでは少しわかりにくいかもしれませんが、実際にユーザーの声ベースで整理すると分かりやすいです。
なぜAI領域の統合に着目したのか?
先日のTableau 2021.1で Einstein Discovery in Tableau がリリースされ、Salesforceの人工知能(AI)と機械学習(ML)の機能がTableauに初めて統合されたことは記憶に新しいと思います。今後もSalesforceは、世界No.1のアナリティクスプラットフォームであるTableauとのシナジーを提供するためにアーキテクチャの統合が進んでいきます。
両製品統合の方向性としては、これまでそれぞれ独立していたすべてのレイヤーが統合され、一つのアーキテクチャに変わっていきます。
このアーキテクチャを実現するにあたっての皮切りであったのが今回ご紹介するAI/ML層の統合になります。今後はData Prep / Data Management層やデータストア層の連携が進んでいくとされています。
Tableau CRMの新機能情報は以下のブログで発信されているので興味のある方はご覧ください。
ここ一年間、上記のような両製品の統合に対するロードマップや技術情報は海の向こうの本社から提示されていて、日本のSalesforce、Tableau両社で話題になっていました。しかし、実際どのような機能が出るのか?その機能の何がすごいのか?さらに、どのようにユーザーの体験を変えることができるのか?ということが日本ではあまり分かっていない状況でした。
そこで、私の当時のマネージャーと共に両製品に対する知識がないユーザーに対しても両製品統合の価値を訴求でき、競合優位性も含んだビジョンデモ動画を作成して社内外に展開することになりました。
どんなものを作ったのか?
さて、皆さんならどのように顧客にプロダクトの価値を訴求しますか?
プロダクトの価値を伝えるには、プロダクトの機能を説明するだけでは不十分です。ソリューションエンジニアとして業務フローに沿った形でデモをするときは、「機能」「活用」「効果」を盛り込むことが重要とされています。しかし、PMやPMMとしてプロダクトを語る際はこれらだけでは不十分で、製品軸に「プロダクトの世界観」や「多くのユーザーが抱える共通のペイン」などもう一段階上の階層も話す必要があると思います。
■ 作成にあたって重要視した点
・プロダクト戦略とメッセージングからユーザーに伝えたいことを抽出し、プロダクトの世界観を伝える構成とスクリプトを作成すること
・機能や効果の訴求ではなく、プロダクトによるユーザーの体験や感情の変化を想起させること
・プロダクトを手に取ったことがないユーザーでも理解できる言葉を使用すること
これらを意識して実際に二つの動画を作成しました。
一つ目はTableauが分析の民主化を促進するプラットフォームであることを伝えた動画になります👇
■ この動画で伝えたかったこと
分析の民主化:ドラッグ&ドロップ操作で専門知識を持たずに誰でも分析を実施
スピード分析:思考を止めずに対話形式で気づきを取得
統合プラットフォーム:データへの接続・加工・分析・共有・自動化までTableauで完結
二つ目の動画では、SalesforceとSalesforceのAIがTableauと連携することで、ビジネス変革を実現するプラットフォームへと進化していくというVisionを伝えた動画👇
8分弱ありますが、現時点(2020年10月)でのSalesforceとTableauのシナジーを表現できたのでぜひご覧ください。伝えたいメッセージは次の通りです。
■ この動画で伝えたかったこと
・分析の民主化:あらゆるデータに素早く接続し、思考の流れに沿った深堀分析により新しい気づきを取得
・AIによる予測と自動化:AIと自動化の構築に専門知識は不要、誰もが業務に組み込み効率化を実現
・統合プラットフォーム:顧客管理・分析・AIが一体化しているため、一人ひとりに合わせたスマートな体験を実現
今回は、デモソリューションに落とし込む必要があったので製品画面とスライドベースですが、もっとユーザーの体験や感情の変化にフォーカスしたユーザー視点の引き込まれるような動画も作ってみたいと思いました。
個人的に好きな動画Amazon Connectの動画↓
このテーマに関しては、勉強してまた別のnoteにまとめたいなと思っています。
実際のデモ動画に使用したTableauのVizはTableau Publicに上げています。
どう実現しているのか?
さて、ここからは実際に連携の実装方法を紹介します。
デモ作成を始めた当時、Einstein Discovery in Tableauのようなノーコードで両製品を連携できる機能がローンチしていなかったため、Tabpyを活用してEinstein DiscoveryとTableauを連携しました。
Einstein PlatformとTableauの連携は、Tableau Prep BuilderからTabpy Serverを立ち上げて、Einstein Prediction ServiceにAPI接続します。Tabpyによって得られたEinstein Discoveryモデルの予測結果をTableau Prep Builderにライトバックします。(※ 新機能 Einstein Discovery in Tableauではありません。)
Tabpyサーバーを立ち上げたのち、JSON config fileで認証しているSalesforce環境とEinstein Discoveryモデルに対してデータのやり取りを行うPythonスクリプトをTableau Prep Builderのフローに加えます。
認証方法などの細かい設定方法は以下のGithubを参考にしてください。
Tabpyを活用すれば、このようなEinstein Platformとのデータ連携だけでなく、Tableau CRMでできない分析アプローチを実現することができます。PythonやRで作成した教師なし学習のモデルやWeb上のスクレイピング出力結果を分析の一つの指標として加えるなど、分析の幅を広げることができるので、ぜひ試してみてください。
あとがき
いかがでしたか。両製品の統合はまだまだ始まったばかりで、今後もどのように進んでいくのか楽しみですね。
私自身、Salesforceのソリューションエンジニアとして両製品の価値と技術を追求してきましたが、5月からプロダクトマネジメントチームに異動し、Salesforce PlatformとTableau CRMのプロダクトマネージャーになります。
今後はプロダクトマネージャーとして、顧客の声の代わりになり、顧客の声の代弁者として、Salesforceの製品開発に貢献し、Tableauだけでなく、MuleSoftやSlackをSalesforce Platformに集約させることで実現するエンタープライズソフトウェアの世界観を少しずつ語れるようにしていきたいです。
ぜひ、今回のnoteや両製品に対してコメントをいただけると嬉しいです!
今後もTwitterでプロダクトに対する情報やPMとしての活動を発信していくので、ぜひフォローよろしくお願いします!
最後まで読んでいただきありがとうございました!