ミキティの先駆け
昨日のに引き続き1年後の元妹の話。
あらすじとしては、都会の大学へと進学した元妹は案の定遊び呆けたのだが、持ち前の調子の良さとおっさんウケがいいという長所を活かし、なんとか関連企業へと就職が決まる。
元々希望していた職種と近いこともあって、「妹たちがいるのだから」と進路を狭められた私としては『妹は家業を継いだのだ』と自分を納得させようとしたのであった。
そして1年後、元妹帰省。
せっかくなのでと家族で外食に行き、みんなでお酒を飲んだり美味しいもの食べたりとワイワイしながら楽しんだものでした。
元妹はこれから忙しくなるということだったので、「じゃあ連休を楽しもうか」みたいな考えで美味しいもの食べようとか、観光地に行ってみようだとか様々な所に行きました。
そうして元妹が帰る前日、私は2人でランチに行き、「仕事大変だろうけれど頑張ってね」なんて世間話のつもりで言ったところ、「実はね…」と暗い顔の元妹。
「…仕事、辞めたんだ」
…………。
は?
何言ってんだコイツ。
当時の感情としてはこれが一番でした。お父さんの跡を継ぎたいって言ったじゃないか、なのに遊び呆けたからゼミの先生ブチ切れて「就職は世話しない!好きにしろ!」とか言われる程だったじゃないか、私はお前らのために我慢したのにお前は簡単に辞めるんだな…云々。
色々と考えて最初に出てきた言葉は「お金は大丈夫かい?」でした。
「うん。大丈夫」
「お父さんとお母さんにはきちんと話した方がいいよ」
「うん」
いいお姉ちゃんをすることが一種のステータスだったあの頃。私はそんな風に元妹を諭しました。
そして元妹が帰る日。
いつもならあるはずの『帰ったよ』という報告がないことが気になりなからも仕事を終え帰宅したところ、
無言で扉の間から顔だけを出す母の姿が。
戸惑う私に
「大事な話が、ありま~す」
と変な間で低音ボイスで告げる母。
明らかに様子がおかしい。
「え…どしたの」
「いや、ちょっと話があるだけだよ」
いや、全然そんな訳ないじゃん。明らかにおかしいじゃん。
そう思いながらリビングに行くと、とうに帰宅したはずの元妹が俯いてソファに座っていました。
(あぁ、ちゃんと仕事を辞めたこと話したんだ)ぐらいに考えていた私は甘かったことを思い知ります。
「あれ、…帰ったんじゃなかったの?」
「うん。…実はね……仕事、辞めたんだ」
「えっ?!(母の手前知ってはいたけれど驚く私)」
「理由なんだけど……
赤ちゃん、産んだんだ」
…………。
まず理解が追い付かない。
だってそもそも赤ちゃん自体がいない。1週間程帰省していた間にもそんな素振りは一切見せなかった。
あっ、旦那さんが見ていてくれているのかな?と思ったところ、
「お父さんはいません」
え?
余計に訳がわからないので問い詰めたところ、
里子に出そうとして今は乳児院にいる
とのことでした。
これ、流石に怒ってもいいよね…?
あまりにも内容が内容だったので、くらーっと眩暈みたいなものが来て立っていられなくなるし、(ドラマでよく見かけるけれど、本当になるんだなぁ…)なんて思ったりと思考回路が明らかにおかしい状態で、
更に問い詰めていくと、当時彼氏がいたこと、彼氏が地元に戻ることになり「ついてきてほしい」と言われるも将来性等を考え拒否したこと、仕事が多忙で妊娠に気が付いた時には産むしかなくなっており、彼氏に電話をしても既に繋がらなかったこと、里子に出そうとしたら保健師さんに止められたことを話しました。
「…わかったけれど、要するにあんたは赤ちゃんがいるのに帰省して仕事が大変だって嘘ついて私たちとお酒飲んで美味しいもの食べて遊んでいたってことなのか」と告げると
「…ごめん」と泣き出す妹。
「お前は泣く資格ねえよ!ひとりぼっちにされた赤ちゃんをなんだと思ってんだ!」
なんか知らんけど怒りながら私まで泣いていた気もする。
この後の話の流れとしては、この話の時点で両親には既に報告済で、見たこともない赤ちゃんを含めて元妹と一緒に実家に戻ること、家族みんなで育てることが決まってました。
…………。
あれ?なんか負担こっちに来るんじゃね?
冷静になって考えると怖くなって(そもそも子ども嫌いだし)、丁度当時の職場で正社員への昇格が決まっていたこともあり、「わ…私、一人暮らししようかな」なんて言うと、母が真っ直ぐ私を見つめ、
「子育て要員としていてほしい」
「…はい」
不安しかない。
とりあえず晩酌として大量にストロング飲んでみたけれど、全然美味しくなかった。
次は赤ちゃんを迎えに行く話になると思います。
余談ですが、ミキティこと安藤美姫さんが1年後に突然シングルマザーであることを発表したので、「うちの妹はミキティの先駆けw」と言っていたところ、会社の先輩から
「流石にミキティだって産まれる前に家族には話してる」
と言われたのを思い出しました。
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