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ポルノの新曲メビウスが良すぎる

2022年8月3日にポルノグラフィティが5年ぶりに新アルバム「暁」をリリースしました。
世の中の人全員が一度は聴いたことあると思いますが、もし、本当にもし聴いたことのない人がいたら聴いてみてください。聴け!!!!

そんなポルノの待望のアルバムに収録された「メビウス」という曲があまりにも良すぎて、知り合いに語ろうとしたら、そもそも誰も暁を聴いてなかったので、ここにその熱を吐き出そうと思います。 いや全人類暁を聴けよ!!!!!!!!聴け!!!!!!!!


メビウスとは

可愛らしくて、どこか懐かしいギターの音から始まるこの曲は、実は2021年のライブで初披露されました。

これを披露する際、ボーカルの昭仁は「ポルノグラフィティが今皆さんに届けたい音、言葉を表現しました」とMCで語りました。

このライブは「ポルノグラフィティの新始動」を謳った2年ぶりのライブであり、そんなライブの終盤でこんなMCをして新曲を披露するのだから、
それはもう、新始動に向けた決意や、ファンへの感謝、もしかしたら昨今の情勢を踏まえたポルノなりの想いを込めた曲が披露されるに決まっている訳です。
そんな会場の期待は膨れあがり、会場のボルテージがMAXになったなか、優しいギターが流れ始め、ボーカルの昭仁は歌い出します。

優しい貴方は私の首根を 両手で締め上げ泣いてくれたのに


優しい貴方は私の首根を 両手で締め上げ泣いてくれたのに

優しい貴方は私の首根を、両手で締め上げ泣いてくれたのに。首根を、締め上げ、泣いてくれたのに。

衝撃でした。
確かにライブ会場ではこんなにはっきりと歌詞が聞きとれた訳ではありません。
ただ、首根を締め上げたのだけは分かりました。
新始動への決意は!?ファンへの感謝は!?!!ポルノなりの現在の情勢への答えは!?!??!
教えはどうなってんだ教えは!!!!!!

衝撃でした。
確かにライブ会場ではこんなにはっきりと歌詞が聞き
ちなみに昭仁は、他のホールでこの曲を披露する際にも、必ず「今皆さんに届けたい音、言葉を表現しました」としっかりMCしていたそうです。
昭仁なりの渾身のギャグだったのかもしれません。

そんなこんなで、余りにも最初の歌詞が衝撃だったことと、ライブ会場だったこともあって続きの歌詞は殆ど頭に入らず、メビウスは終わってしまいました。

歌詞カードを読む

それから半年以上経ち、2022年8月3日に新アルバム「暁」は発売されました。
暁を手に入れてまず僕が気になったのは、そうメビウスの歌詞です。
もしかしたら歌詞の聞き間違いで、実は本当に新始動への決意が書かれていたのかもしれません。
僕は恐る恐る歌詞カードを開きます。

やさしいあなたは わたしのくびねを
りょう手でしめ上げ 泣いてくれたのに
うすれるいしきに しあわせみたして
はずかしい はずかしい ゆるしてほしいよ


ああああああああああああああああああああああ、あ、あああ、あれ、あれぇ!?にほんご!?あーーーーーーーーーーーーー、えぇ…
すみません、日本語は当たり前でした。
なんと歌詞がひらがなです。
あまりにもあまりにもです。
歌詞が平仮名というだけで、曲の雰囲気がガラリと変わってきます。
描写のアダルトさと語彙の幼稚さがなんとも狂気的で、猟奇的で、退廃的で、嗜虐的です。RADWIMPSもびっくり。
作詞を担当している新藤晴一は暁の全曲インタビューのメビウスの項で、

「オタク」「メンヘラ」「陰キャ」「闇落ち」みたいな言葉って、ひと昔前だと悪口だったものが、今は1つの個性みたいに扱われるようになってきている

https://natalie.mu/music/pp/pornograffitti08

と述べています。
このことからも、この歌詞は何かしらの比喩ということではなくて、登場人物をありのまま描いているのだと思います。
この女性のマゾヒスティックな重い人間性や、相手への猟奇的な依存を表すのに、ひらがなを使うというのはこれ以上ない表現だなと思います。
たった4行で、直接的に2人の関係が言及されていなくても、2人の関係性や気持ちのすれ違いが見えてくる、すごい。
そのままサビへと続いていきます。

サビ 〜神〜

もう めぐらせなくてもいいの
しぼんだはいのままでもね
わかってんだ わかってんだ
こわれてしまった すきだったんだけど


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
ABメロは低音重視で静かな曲調でしたが、サビになって一変歌い方が力強くなります。
ABメロは静かで楽器も目立たないけど、サビで爆発するかの如く音圧が上がる曲、好き。

前半はABメロに引き続き、女性の重い愛情が歌われています。首根を締め上げられて、そのまま空気を巡らせなくても良いと思えるほどの感情と依存。

そしてサビは後半に入っていきます。
一際強く歌われる「わかってんだ」と「好きだったんだけど」という歌詞が明らかに異質。
「わかってんだ」という今までの女性像からはかけ離れた口調と、「好きだったんだけど」という軽すぎる言葉

首を絞められてそのまま死んでしまっても良い程の重い感情を持った女性が、「好き」なんて軽い言葉を使うわけがありません。

僕はここ、後半から視点が男性に移っているのだと考えています。
この男性も一般的に見たら重いレベルの愛情を持っているのは間違いないと思いますが、その反面どこか現実的で、そんな女性との思いの強さの差が「好きだった」という諦めを含んだ言葉に繋がるのではないかと思います。

この新藤晴一という男、言葉の細かいニュアンスを本当に大切にしているのだと思います。
この「好き」が「愛してる」になると一気に浅くなるような気がします。

男女の両方の視点からすれ違いを描いている曲と言えば痛い立ち位置が思い浮かびます。この曲も、口調や細かい言葉の使い分けが非常に見事なので、いないとは思うがもし知らない人がいたら聴け!!!!!!!

メビウス 〜そして伝説へ〜

この曲の本当に本当に天才なところは、そうCメロです。

あなたがいないあさから
わたしのいないよるまで
メビウスのわのように ねじってつなげましょう
えいえんとは こういうこと?

あっ




あぅ.…..
天才です。
本当に。
今までで一番天才だと思っていた歌詞は、月飼いという曲(聴け!!!!!!!)の

月を飼うのと真夜中に 水槽を持ち出して窓辺に置いた いとも簡単に捕獲された 小振りな月が水面に浮かぶ

でした。水槽に月を反射させて、それを「飼う」と表現するのが余りにもロマンティックで、この歌詞を超えるものはないなと思ってました。

ありました。

あなたがいないあさから
わたしのいないよるまで
メビウスのわのように ねじってつなげましょう
えいえんとは こういうこと?

です。
天才です。
突然跳ね上がる語彙力。今まで散々簡単な言葉ばかり使っていたのに突然「メビウスの輪」です。

メビウスの輪とはこういうの。

小さい頃に折り紙で作るあれです。表をなぞっていくといつのまにか裏になっていて、またいつの間にか表に、また裏に…といったように永遠に続きます。
表裏がなく、いつまでも終わることがなく、始まりもない。それがメビウスの輪です。

「あなたがいないあさ」と「わたしがいないよる」は謂わば表裏の関係で、それらを「いない」という共通点で繋げて永遠を成す。まさにメビウスの輪。天才。

あなたと私の人生は表裏の関係だから、無理矢理捻って繋げないと重ならないんですね。しかもそれを繋げるものは「いない」という共通点。

痺れる。



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