見出し画像

本当のマットブラック探求記

はじめに

コンシューマー用3Dプリンタが発売され始めて流行っていたころの造形品というのは、PLAという聞いたことのない樹脂で、なんだか妙にツヤツヤしていて、積層跡がハッキリと見て取れるものだったと記憶している。
そんな時代から気づけばもう10年くらい経ったのだろうか、最近の3Dプリンタ事情を調べると当時のイメージからは随分変わったと思う。PLAだけでなく、ABSやPETG等々様々な樹脂を使えるようになったし、樹脂とプリンタの性能次第では積層跡もかなり見えにくくなった。
そろそろ買ってもいいかなと3Dプリンタを導入して、安定して色んなモノを作れるようになった後のある日、少し気になることが。

ブラックが黒くない

カメラのアダプターやらなんやらを製作する上で、反射防止のために部材が黒いことは必須。ツヤも無い方が良い。そういうわけでマットブラックのフィラメントを買って使っていました。
ただ、レンズの鏡筒はたいていアルマイトや黒色の塗装などの表面処理がされていて、それと3Dプリンタ造形品を比べてみると、造形品の方がグレーに見える。あれ、これ意外と黒くないな…?
調べてみてもはっきり比較している便利なWebサイトとかはなさそう。こうなったら自分で買って比較してみるしかない。

比較してみる

購入したのはKexcelled、eSUN、OVERTURE、Creality、SUNLUの5種類。この比較写真を撮っている段階でKexcelledのフィラメントはロールがなくなってしまった。

左から順にeSUN、OVERTURE、Creality、SUNLU

フィラメントのロール自体を見てわかるのは、一番右のSUNLUにツヤが強いこと。eSUN、Overture、Crealityの3本には白い粉のようなものが練り込まれていて、粒粒が見えるがSUNLUにはない。この粉はeSUNで少し多く、OvertureとCrealityはほぼ同じくらい。マット感を出すための成分なのかなと勝手に思っていたけど、実際どうなのかは不明。

プリント環境はBambu LabのA1mini。Maker WorldにあったFilament sampleのデータを拝借してプリントしました。プリント速度等の条件はすべて同一で、A1miniの自動流量補正がかかっています。

Kexcelled

Kexcelled

最初に買ってマット感と積層跡の目立ちにくさに感動したフィラメント。それと同時に、ブラックが黒くない問題の元凶でもある。写真で見ると黒くみえるんだけど、肉眼で見ると濃いグレーのような印象に感じる。ボディキャップとかを作っても、ボディと合わせると黒が浅いことがすぐに分かる。
とはいえこれがダメかというとそうでもなく、他のカラーを見るとわかるように、結構落ち着いたカラーラインアップをしている。マット感を全面に押し出したいときに使える大人なフィラメントという印象。
なにせ印刷後のマット感の均一さはダントツの良さ。

SUNLU

SUNLU

ロール単品で見てもツヤありだったので案の定、成形品も少しツヤ感がある。マットPLAというか、通常のPLAのツヤを抑えた製品ですと言われた方がしっくりくる。Kexcelledより黒い。
少し軟化温度が低いのか、オーバーハング部分の成形が少し不安定で、ベースプレートへの接着強度が高い。印刷速度によってマット感が変わるのか、場所によってマット感のばらつきがあるのが気になる。糸引きもある。
悪い事ばかりというわけではなく、積層後の側面に傷がつきにくい点は長所。

OVERTURE

OVERTURE

SUNLUより普通に黒く感じるけど、カメラボディと横並びにするとまだまだ黒さが足りない印象。マット感はまずまずで、KexcelledとSUNLUの間くらい。印刷品質も良い。印刷速度によるマット感のばらつきが少しある。すこし糸引きがあり、自分の環境では僅かだけどCrealityの方が扱いやすい。

Creality

Creality

黒さ、マット感、どちらも仕上がりはOVERTUREとほぼ同じ。若干Crealityの方が青みがかった黒のように感じるけど、正直ロット差かもしれないし、個人の見え方の問題もあるので、どっちが黒いか甲乙つけがたい。マット感のばらつきは少し少ないかも。何度比べてもどっちがどっちか分からなくなるくらい似ているので、黒さに関しては同率ということで。プリント品質は安定していて使いやすい。

eSUN

eSUN

届いてから気づいたのだけれど、eSUNだけマット ”ディープ” ブラックとなっている。ディープの名に恥じず、たしかに他と比べても一段階黒い。あの謎の白い粉を増量しているのが効いているのか、OVERTUREやCrealityと比較してマット感も強い。ただ印刷速度によるツヤ感のばらつきも見られる。積層跡に傷はつきにくく、ベッドからも剥がしやすい。

比較

サンプル5枚の比較

少し撮影確度が変わってしまっているのが良くないけど、上の比較のとおり、eSUNが一番黒いという結果になりました。Kexcelledは一番明るい黒ですが、印刷速度によらず同じマット感が出るので、これはこれでいいなと。

まとめ

今後はレンズ鏡筒とか反射が気になる場所にeSUN、普通の造形物にはKexcelledを使っていこうかなと思いました。
この大量のマットブラックフィラメントたち、どうやって消化しようかな…


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?