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シャワーもなければカランもない。これぞ秘湯中の秘湯 「湯滝の宿 西屋(白布温泉/山形県)」


「カランが無ければ縁(ふち)もない、狭い洗い場ですが・・・・」そんな風に書かれたパンフレットが届きました。えー?カラン(蛇口)とかないんだ。どういう温泉だろう?

不思議な思いでここ山形県の白布温泉、「滝の宿 西屋」にやって来ました。「日本秘湯を守る会」にも入っている宿で、茅葺屋根の古くからある日本でも有数の源泉かけ流しの秘湯なのです。

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江戸時代中期に巨大な御影石を積み上げて建立された白布温泉最古の浴場。男女別の大浴場となっており、有名な歴史ある湯滝を楽しめるのです。
でも、大浴場にカランがないそうなので、まずはシャンプーと身体を洗うために貸切風呂を目指しました。

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なにしろ部屋にお風呂もシャワーも付いていないのです。トイレも共同らしく、私の泊まった「虹」ともうひとつある離れの部屋のみトイレ付でしたが、まさに秘湯の宿です。洗面所はあるもの、水の出は悪く、水はけも悪く、シンクは大きなヒビが入ったまま。この宿にモダンな快適さを求めてはいけないのです。

運よく誰もいなくて貸切風呂は一番風呂で気持ちよさそう。喜び勇んで中に入ると、なんと湯船の湯は60℃位の源泉がそのまま溜まっているのです。間違えて入ったら大火傷しそう。

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そういえば「自分でホースの水でうめてください」と表に書いてありましたっけ。思い切り水を出し水圧で飛び跳ねるホースを持ち続ける役の私。その間に娘が洗おうとひとつだけある小さな蛇口をひねると出るのは水のみ。

結局湯船の熱い湯を洗面器に汲んで水でうめながら洗顔シャワーなど何とか済ませます。これを2人が交代でやっている間に、20分以上が経過してやっと適温の湯船に浸かれました。水はけも悪いお風呂で使い勝手も最悪ですが、これこそ秘湯ならではの面白さです。

この後いよいよ大浴場の湯滝へ向かいます。狭い内湯の中の奥の一角にドドド、ドドドド・・・と勢いよく3本の滝湯が流れ落ちています。お風呂の底はつるつるして滑りやすいので注意しながら奥へ向かいます。

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打たせ湯のように肩や腰に当てると気持ちいい。しばし「滝行」を楽しみます。かなりの水圧。江戸時代、侍もこの湯滝で疲れを癒したのでしょうか。失われつつある希少な温泉文化を守るため、あえて改修せず当時のままに残され、苔むした樋(とい)から流れ落ちる湯滝は風情満点。少々の不便などなんのその。

白布温泉は米沢市にあります。米沢といえば米沢牛ですね。今回の宿泊プランは「米沢牛しゃぶしゃぶ鍋コースまたは米沢牛すき焼き鍋コース」から我が家はしゃぶしゃぶコースを選択。このコースでトイレ付き離れに3名で滞在の場合1人21050円(税込み、入湯税込み)の設定でした。

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テーブルには大皿の前菜がすでに置かれていて、このほかバイキング形式でパンプキンクリームスープやご飯、サラダなどが自由に取れて、飲み物はソフトドリンクや置いてある指定のワインは込みです。ビールや日本酒は有料です。

お肉はさすがに柔らかくて美味しいもので、満足のしゃぶしゃぶディナーでした。

翌朝、湯滝に入りに行くと、狭いお風呂の中に先客あり。湯船のすぐそばで椅子に座って、隅に溜めてある源泉60℃の湯を洗面器に汲みつつ水でうめながら器用にシャンプーしているではありませんか!貸切風呂でならともかく、このお風呂でそれをするとは予想外。しかしお湯も飛び散らず余裕のご様子。きっと何度も来ている常連さんなのでしょう。恐れ入りました。

チェックアウトの前に、フロントの近くで猫発見。聞いていた看板猫です。座布団の上でのんびり寝ていたけれど、声を掛けると目を覚まして可愛い姿で私たちをお見送りしてくれました。

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