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古民家再生宿「NIPPONIA」の泊まれる醤油蔵 18代目当主の復活秘話に感動

奈良で最古の1689年創業マルト醤油があります。なんとその醸造所の中に建てられた宿がこの「NIPPONIA 田原本 マルト醤油」なのです。

第2次世界大戦のために醸造が途絶え、その後70年間のブランクを経て現在の18代目当主であり宿主でもある⽊村浩幸さんがマルト醤油の復活を果たしたのです。

復活までの大変だった道のりを語る木村さんの話は本当に感動的でした。この宿に泊まれば醤油しぼり体験と共に木村さんの話も聞くことができます。
さて、醸造所の中にあるというユニークなニッポニアの宿はどんなところだったのでしょうか?

18代目当主、⽊村浩幸さんのおじいさんはそれまで260年間続いてきたマルト醤油を、第2次世界大戦のために今から70年前に途絶えさせることとなりました。

天然醸造で素材にこだわるマルト醤油は当時、皇室御用達の質を誇るものだったそうです。それを途絶えさせた無念はどれほどだったでしょうか。その後70年の歳月が流れそのまま放置されていた蔵。

それを復活させるべく木村さんは動き出したのです。醸造法が書かれているはずの書類を探しておじいさんの引き出しを開けていきます。ところが書類はなく、出てきたのはおじいさんが大切に使っていた㋣マークの前掛けのみ

当時子供だった近所の80代のお年寄りに、この蔵を見学した時の話を聞いて回りヒントを得たり、と手探りの日々が続きます。蔵の中に大豆と水を置いて発酵が起こらないか毎日毎日見続けたそうです。

3か月後ついに発酵が起こったのです!放置されていた蔵の中で醤油を作る酵母は奇跡的に生きていたのです。そうして見事に復活を果たすまでになんと10年もの月日がかかったのだそうです。

その年月ずっと頑張って来られたまだ若い木村さんの苦労話を聞くと、胸に込み上げるものがありました。こうした話は実際に、醤油搾りツアーの時に直接木村さんが話してくれたことばかりなのです。昔からずっと存在してきた醤油の蔵の前で聞かされたことで、ますます臨場感が増したのです。

2021年春に開業したばかりのこの宿は、NIPPONIAが手掛けただけあって、その設備はしっかりしていて居心地がいいものです。

全7室。どれもが築130年あまりの蔵を改装しています。私たちの「木藤」の部屋は、66㎡のスイートルームです。入り口を入るとすぐ木の階段で2階へ上がります。2階が広い1室となっていて、畳の上にベッドも置かれた和洋室です。ソファの置かれたリビングもあって快適です。

洗い場付きの檜のお風呂は温かみがあるもの。冷蔵庫のソフトドリンクは無料で、エスプレッソマシンはないけれど湯沸かしポットとドリップコーヒーが置かれています。ニッポニアのコンセプトなのか、古民家屋宿にはテレビは置かれていません。

古い部分はそのまま残し、快適にリノベーションされています。バスルームが床暖房になっているのも評価が高いポイントです。

そういえば入口が違いますが、同じ建物の1階部分がちょうどお食事処の個室となっていました。

木村さん本人が案内してくれた「醤油しぼり体験ツアー」。そこで木の枡の中に棒を差し込んでもろみをギューッと押して絞り出し、とろみのある醤油が採れました。それを炭火で炙った豆乳豆腐にかけて試食すると驚きの美味しさです。

その後ディナータイムの始まりです。メニューが置いてありました。

もろみの搾りかすを炒った「もろみパウダー」がディナーの最初に登場しました。カリフラワーのクリームスープにウニや赤唐辛子菜と一緒に、パウダーも振りかけます。深い味わいがプラスされました。

2番目のメニュー「生醤油」はお造りです。メジマグロや中トロ、ヒラダイにスポイドに入れた生醤油をたらしていただきます。付け合わせの大和野菜も魅力的です。紫大根、ハヤトウリ、紅芯大根、紫大根、ビーツなど。

次の「治部煮」は聖護院大根と大和鶏、わさびが添えられます。醤油の奥行きが確実に味を良くしています。

「もろみバター」は鮑、ブロッコリー、レンコン、里芋にもろみバターとアワビの肝のソースがかかっています。もろみパウダーの効果も絶大です。

「大和橘醤油」は絶滅危惧種と言われる柑橘の原点である大和橘と醤油を合わせてポン酢を作り白子や豆腐、大根に合わせます。

すき焼きともろみ飯と続き、デザートでもみたらしのたれを焼き菓子にかけたものがでて、すべてが醤油をテーマにうまく構成されていました。

翌朝、宿の朝食はヘルシーな自家製甘酒からスタートしました。三輪産のにゅうめんや田原本産ひのひかりのご飯に卵かけご飯です。もちろんいろんなおかずもあるけれど、吉野産MICA卵を使った卵かけご飯にたらしたマルト醤油、この取り合わせだけで最強なのでした。

この宿に泊まったお蔭で、日頃忘れがちだった醤油の大切さに目覚めました。こうした発酵文化や食文化を考えさせてくれる宿の存在、素晴らしいものだと思います。


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