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社外取締役の意見〈統合報告書解説③〉

統合報告書の注目コンテンツについて、シリーズで解説していきます。
第3回目は「社外取締役の意見」についてご紹介します。
※このシリーズは不定期発行でお届けします。

注目される社外取締役の存在

2023年版を対象として当社が実施した「統合報告書調査(※1)」において、社外取締役に関する何らかのコンテンツを掲載した企業は、全体の93.8%に達します。
社外取締役にとって最も大切な役割は、経営の執行に関するアドバイスや助言・提言ではなく、本来は客観的な視点で経営を監視・監督することです。よって、会社からの独立性が確保された人材であることが求められ、会社法上、社外取締役が満たすべき要件が詳細に規定(会社の取締役の配偶者または2親等内の親族でない、など)されています。
社外取締役は企業内における様々な慣習、いわゆる「社内の論理」や人間関係に縛られないため、企業側は忌憚のない意見や、社内では見落としがちな問題点の指摘などが受けられます。社外取締役を登用することで、経営の透明性向上や不祥事の防止を実現できるのです。このように経営上、重要な役割を担う社外取締役の動向は、機関投資家をはじめとする統合報告書の読者が注目するところとなり、各企業はさまざまな切り口で社外取締役の声を掲載するようになりました。


※1:2024年1月発表のもの

スタイルは各社各様

当社データベース(※2)にて「社外取締役の声」を、どのようにアウトプットしているかを調査しました。複数企画を実施している企業もあるため正確な数値ではないものの、一番多かったのがやはり「メッセージ」形式で、全体の39.4%(318社)でした。以下、「座談会」(同18.2%、147社)、「対談」(同13.2%、107社)、「鼎談」(同6.9%、56社)、「インタビュー」(同6.2%、50社)、「その他(コメント、対話、意見交換会、会談、ダイアログ、ディスカッション、Q&Aなど)」(同2.5%、20社)と続きます。
メッセージについては1名に絞った事例も多くありますが、1名に絞り切れなかった企業は社外取締役全員のメッセージを掲載している例もあります。場合によっては各取締役のメッセージが非常に似通った内容になってしまう弊害が出ており、今後の課題となるでしょう。また、指名・報酬委員会などの委員長としての社外取締役メッセージを掲載している企業もあります。


※2:2023年版発行統合報告書(808社)を対象に、2024年5月に調査・
集計したもの(未発表)

2023年版統合報告書での、目を引く開示事例

■社外取締役と機関投資家との対話

  • セイコーエプソン株式会社「統合レポート2023」

  • 株式会社商船三井「MOLレポート2023」ガバナンス・ミーティング

■女性取締役による鼎談・座談会

  • 株式会社メディア・ドゥ「統合報告書2023」(取締役鼎談)
    社内取締役1名、社外取締役2名(いずれも女性)による鼎談

  • ミネベアミツミ株式会社「統合報告書2023」
    (新社長×女性社外取締役座談会)

■意見交換会

  • 株式会社ほくほくフィナンシャルグループ「統合報告書2023」
    (「社外取締役」と「職員」の意見交換会)

■活動の紹介

  • IDEC株式会社「IDEC REPORT 2023」(社外取締役の活動)

これら社外取締役に関するコンテンツについて、同じ企画を継続する企業、毎年違った切り口で開示する企業など、それぞれの考えが如実に表れ、
大変興味深く感じます。次年度以降も斬新な企画を見せてくれるでしょう。
 
 当社では調査・分析結果を踏まえた統合報告書を提案します。
ぜひ、お気軽にお問い合わせください。

株式会社ファイブ・シーズ PFP研究所
主任研究員 西坂 洋一