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【上場企業IR担当に知ってもらいたいこと➁】機械翻訳と人間翻訳の使い分け

東証による和文と英文の同時開示の義務化に関係なく、すでに決算短信の冒頭ページと財務諸表の英文化に機械翻訳を活用し、迅速な英文情報開示を行っている、いくつもの企業があります。東証が発表した『プライム市場における英文開示の拡充に向けた整備の概要』では、英訳に関する留意事項として「全書類・全文について同時開示することが望まれるが、日本語における開示の内容の一部又は概要を英語により開示することでも可」と書かれており、決算短信の英文情報としては、数字部分だけでもかまわないと解釈できます。さらに、英文開示は日本語開示の参考訳と位置付けられていることから(内容の正確性は規則違反に対する措置の対象外)、情報開示の即時性を優先して、決算短信の文章部分の機械翻訳も許容されるかもしれません。数年前から機械翻訳を開発している会社によると、海外投資家が同社のシステムを導入し、日本企業の英文情報の概要に関し、迅速な理解に活用しているとのことでした。

数値情報中心のページは機械翻訳でもいいとして、MD&Aなどの文章部分は、はたして参考訳といえども簡単に機械翻訳任せでいいのでしょうか? 例えば、無料版の翻訳サービスを利用した和文英訳の場合、意味は同じでも文章構造や主語・動詞・形容詞などの単語の種類や位置の違いによって、異なった英文が出てきた、というご経験があるかもしれません。機械翻訳にかける前に和文も十分、吟味(※1)しなければなりません。それと同時に、機械翻訳が提示する英文が正しいかどうかの判断は、IR担当者ご自身の責任となります。

また、読む側の許容範囲と情報を発信する側の許容範囲は異なります。MD&Aなどの文章部分は会社としての正式な意見ですから、参考訳として極端に高い英文クオリティを求める必要はありませんが、英語で読む読者が理解できる、そして正確であることは必須です。

株式会社ファイブ・シーズ(当社)は、設立以来、日本企業の海外読者への情報発信ニーズを、英文IRツールを中心にプレスリリースや会社案内まで幅広く取り扱うことでお応えしています。翻訳者・校閲者は全員が英語ネイティブのバイリンガルで、IRやマーケティングの分野で長年、業務を行っています。さらに、お客さまの窓口を務める営業担当者は、英文だけではなく和文のIRツールの企画制作にも携わり、IRに関する知見を充分に備えています。短信のMD&Aだけではなく、統合報告書やサステナビリティレポートなど、ボリュームのある企業メッセージの翻訳作業もこなしており、迅速かつ正確な英文開示のお手伝いができます。

株式会社ファイブ・シーズ
取締役社長 越智 義和


※1:東証発行『英文開示実践ハンドブック』における国立研究開発法人情報通信研究機構 隅田英一郎氏の機械翻訳を利用する場合についての記述の要約

機械翻訳が人間翻訳に勝る点として、英語で日本語と同時に発信することを目指すならば、機械翻訳の活用が大変有用な方法。

機械翻訳では誤訳の危険性があり、その要因として日本語の曖昧性が指摘されている。機械翻訳は原文をそのまま翻訳するので、誤訳の確率が高くなる。特に日本語では主語を省略することが多いので、主語を明確にした日本語を英訳のために書く。ないしは、機械翻訳を前提とした資料は、誤訳の少なくなる日本語で作成することも必要となる。

参考:東証発行「英文開示実践ハンドブック」