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鏑木清方展〜繊細さ、そして江戸風情〜

7月の初め、終了間際の「鏑木清方展」を岡崎公園にある京都国立近代美術館へ見に行った。
以前テレビ番組で、東京展(東京国立近代美術館)の特集を見て関心を持ち、ずっと気になっていたのだ。京都では45年ぶりらしい、鏑木清方の巡回展。美人画で有名な鏑木清方は、正直名前を知っていた程度だったが、明治から大正、昭和にかけての風俗がとても優しく描かれた絵に惹きつけられてしまった。
会場は平日のせいか、あまり混んでいなかったため、落ち着いて作品を鑑賞できた。                              目玉はやはり「築地明石町」(1927年)「新富町」(1930年)「浜町河岸」(1930年)の三部作。事前に「日曜美術館」などで知っていたが、三作が並ぶと圧倒的な存在感。三人の女性(姉妹という話も?)の表情や立ち姿、指の動きなどにみられる繊細さは、清方の繊細なまなざしの結晶といえる。いずれの作品にも共通するのは、景色や女性の服装などの風俗から感じられる江戸の風情。清方は1878(明治11)年、神田の生まれなので、時代的に江戸の風情が色濃く残る生活を過ごしてきたことが、女性へのまなざしに感じられる気がした。

かつて東京に住んでいたことがあるので、築地も浜町(はまちょう)といった地名にも少しばかり馴染みや思い入れがある。その意味で個人的に気に入ったのは、「浜町河岸」。おそらく一番若い女性の絵である。             

明石町や新富町がともに、東京湾に近い築地にあるのに対して、浜町は日本橋。隅田川を少し上がったところにある。江戸時代は大名屋敷が並んでいたエリアらしい。1923年の関東大震災を受けて、浜町公園という都市公園が整備され、今も残っている。描かれた時期を考えると近代的な雰囲気だったのかもしれない。それでも清方は江戸風情あふれる女性を描いているのだ。                       地名や場所の歴史を知っていると、画家の思いや新たな作品の魅力がみえてくるものだとあらためて感じる。また浜町公園を訪れたいと思った。

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