見出し画像

1月2日(火):書籍「疲労とはなにか」からの整理⑤

この数日は12月に発売したばかりの書籍「疲労とはなにか(近藤一博著)」を取り上げながら、本書からの学びを自社の事業領域(フィットネスクラブ運営)に沿って整理を進めているところです。

前段としては「疲労感」と「疲労」の違いに触れ、疲労の程度は「HHV-6(ヒトヘルペスウイルス6)」によって測定できること、そのうえで疲労は「生理的疲労」と「病的疲労」の2種類に区分されることを記しました。

次いで生理的疲労が体内の抹消の組織(臓器や筋肉)で炎症が生じた時に細胞から分泌される「炎症性サイトカイン」が、血液脳関門の隙間を通り抜けたり、神経を通ったりして脳内に入ることで疲労を感じ、この炎症性サイトカインは統合的ストレス応答(ISR)によって産生され、それを引き起こすのがeIF2αのリン酸化である点に触れました。

それを受けて一昨日は生理的疲労を回復させるための観点で、リン酸化したeIF2αからリン酸を取って脱リン酸化していくことが疲労回復につながり、脱リン酸化を担うリン酸化eIF2α脱リン酸化酵素の産生を誘導するのが疲労であることから、軽い運動が疲労回復力を高める旨の説明をしたと思います。

そして大事になってくるのが疲労と疲労回復のバランスで、疲労回復力は「疲労回復指数=脱リン酸化の量(GADD34またはCReP)÷リン酸化の量(ATF3)」の式で表され、軽い運動は疲労感を減少させるのではなく、疲労回復力を高めることで生理的疲労そのものを減少させることに寄与している点が示唆されていました。

本日は運動以外のアプローチで前述した疲労回復力を高められる栄養成分についてのまとめを進めていきます。

まず書籍内で最初に挙げられていたのはビタミンB1で、これはエネルギー産生にも深く関係していて従来から疲労回復とのつながりが示されていたものですが、改めて研究を通じて疲労回復力を高める点が裏付けされていました。

この年末年始はいつも以上に飲酒をする機会が増えると思いますが、飲酒によってビタミンB1は体内で大量に消費されるほか、水溶性ビタミンであることをふまえれば、継続的な摂取が望ましいですね。

また本書では「本当に疲労を回復させる」栄養成分として、4つが紹介されています。

ここでいうところの本当に疲労を回復させる栄養成分の前提はリン酸化eIF2α脱リン酸化酵素を増加させる作用や、定義されている疲労回復指数を増加させる作用、それによる生理的疲労を回復させる作用があるものです。

加えて昨日に触れたエナジードリンクのように抗酸化物質が肝臓でのeIF2αリン酸化と炎症性サイトカイン産生を抑制して疲労感のみを減少させるのとは異なり、心臓での炎症性サイトカイン産生を抑制するなど組織の炎症による障害を防ぐ点が兼ねあわされている栄養成分のみに限定されています。

●ガンマ・オリザノール
米糠に含まれる成分で、高脂血症や心身症に対する治療薬としても用いられている。

●ケルセチン
タマネギやリンゴなどに多く含まれる成分で、抗酸化作用や抗炎症作用がある。

●アンセリン
イミダゾールジペプチドの一種で鶏の胸肉やカツオの筋肉に多く含まれる。

●ベータ・アラニン
アンセリンや哺乳類の筋肉に含まれるカルノシンの分解によって生じる成分。

なお、これら4種類の成分は肝臓における炎症性サイトカイン産生抑制作用は抗酸化物質ほど強くはないため、これら4種類を摂取しても「疲れがとれた」という実感は得にくいものの、いずれも疲労回復指数の増加や心臓における炎症性サイトカイン産生の抑制など、本来的な身体の各組織における疲労回復に寄与するとのことでした。

先日に記載をした運動習慣の形成とあわせ、こうした栄養成分を積極的に摂取をして疲労回復力を高めることで、生理的疲労を軽減して疲れにくい身体を維持していくことができそうです。

宜しければサポートお願い致します!