「アバター近藤が解説する業界史~逆タイムマシン経営論727」

皆さん こんにちは アバター近藤です。
「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。
「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。

~Fitness Business通巻第28号(2007.1.25発行)「2010年までにフィットネスクラブ会員1億2千万名突破を実現するために」3~※名称等は当時、一部文章省略

2.いかに会員を獲得し維持するか

前稿では、会員数1億2千万名突破という我々の目標達成への礎として、財務会計の基礎を取り上げたが、本稿では会員の入会促進と維持という、クラブビジネスの核心ともいうべきテーマを取り上げる。

成長への道筋
フィットネスクラブの会員数は、2005年1月1日から2006年1月1日にかけて、4130万名のまま横ばいであった。
会員数が伸びなかったのはここ10年で初めてのことである。
この期間の業界平均の年間会員定着率は約60%で、退会率は40%近くあった。
つまり、1600万名もの会員が、この1年の間に退会したことになる。
もちろん、この数字の中には、転居や失業、発病などのやむを得ない理由による退会も含まれる。
クラブの立地や会員層による違いはあるものの、一般に退会理由の50%はクラブ側のコントロール外の要因であるとされる。
しかし、裏返せば残りの50%の退会は、クラブのコントロール可能範囲であると言えるのである。
クラブビジネスは固定費部分が非常に大きいため、売上が少し変動するだけでも、ボトムライン(最終損益)に大きく影響する。
会員定着率の向上が、クラブの財務状況に大きなインパクトを与えるゆえんである。

人々が退会する理由
ここでは、退会率40%(業界平均、米国)という数字の中身を考えてみよう。
まずはクラブのコントロール外要因の代表である、転居について考えてみよう。
現在クラブの会員の約40%が18歳から34歳の年齢層に属しているが、この層は統計的に見ると、毎年3分の1が転居すると言われている。
つまり退会率40%のうちの約4分の1はこの層の転居によるものだと分析できるのである。

次にクラブがコントロールできる要因について考えてみよう。
IHRSAでは過去10年間にフィットネスクラブの退会理由について数多くの調査を行ってきたが、不愉快な経験や特定の不満が原因で退会した人というのはそれほど多くないことが分かっている。
大部分の人々は、自分がクラブから得る価値が、クラブに支払うコストに見合わなくなった時にクラブを退会するのである。
ここでいう「価値」とはクラブの利用状況とほぼイコールである。
会費の多寡に関わらず、頻繁に利用していれば価値が高く、それほど頻繁に利用していなければ価値は低くなる。
全く利用していなければ価値はゼロである。
この業界における「価値」とは、多くの場合、利用状況のことであり、価格のことではない。

米国におけるクラブの入会は、人々が新年の目標を立てる1月に集中するが、このタイミングでの入会は言ってみれば「衝動買い」のようなものである。
この時期に入会する会員の多くは、どのようにしてクラブ通いを習慣化し、運動をライフスタイルに取り入れれば良いのか分かっていないことが多い。
初めてクラブに入会する人が、クラブに馴染み、気持ちよく利用できるようになるまでには、いくつもの恐怖や不安を乗り越えなくてはならない。
調査によれば、こうした恐怖や不安には以下のようなものがある。

1.クラブのシステムやマシンの使い方が分からないために、引け目を感じたり、自分が場違いな存在だと感じてしまう
2.既存会員に比べて自分はクラブに不慣れな上、運動能力でも劣っている気がして、劣等感を感じる
3.既存会員が和気あいあいとしているのを見ると、孤立感や所在なさを感じる
4.健康的な既存会員の姿を見ると、自分の崩れたボディラインに劣等感を感じる

以上のような新規会員の恐怖や不安感をケアせずに放っておくと、こうしたマイナスの感情が募っていき、入会した時に持っていた向上心やクラブへの期待を蝕んでいってしまう。

~ここまで~

米国当時の数値で、1年間に1600万人もの方が退会している計算になっていたと知り、このスケールで見ると、改めて定着(退会防止)の重要性、緊急性を強烈に再認識することができます。

当社小型クラブは、多かれ少なかれ日本も似たような状況であったことから、代表の伊藤さんがその事実に強い問題意識を持ち、創造したクラブです。
そして、定着に関わるオリジナルな指標がいくつかあり、その中の一つに個人別の利用率があります。
これは、週1回または2回というスクール制を採用しているから、モニタリング可能な指標ですが、ある一定の率を連続して下回ると、退会可能性がぐんと上がることが統計的に分かっております。

その点において、記事にある利用状況が「価値」認識に大きく影響していることは、当社でも証明されており、その部分のケアが核心であると言えるでしょう。

お読みいただきありがとうございました。

宜しければサポートお願い致します!