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「アバター近藤が解説する業界史~逆タイムマシン経営論732」

皆さん こんにちは アバター近藤です。
「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。
「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。

~Fitness Business通巻第29号(2007.3.25発行)「高価値スパ付帯型フィットネスクラブ」2~※名称等は当時、一部文章省略

温浴施設充実のメリット

フィットネス未経験者にとっては、フィットネスクラブは「運動するところ」という印象が強く、それだけで入会に気後れしてしまうということもある。
温泉や充実した温浴施設を付帯することでそのような印象が和らげられ、これまで敷居が高いと感じていた層、またはフィットネスクラブに興味を持たなかった層にもアピールできることになる。
特に天然温泉や準天然温泉では効能を謳うことができ、口コミや紹介が広がりやすいということも集客に有効に作用する理由の一つだろう。

会員の定着面でのメリットもある。
例えば、従来フィットネスクラブの利用率は冬場に落ちる傾向にあるが、クラブから足が遠のくことは退会につながりやすい。
温浴施設が充実しているということで、一般的なクラブ利用率が落ちてしまう冬の利用率を一定に保つことができ、退会を抑えることができる。
また、温浴施設を充実させることにより会員は落ち着いた時間をクラブで過ごすことができ、会員同士の新しいコミュニケーションの場の創造にも繋がるだろう。
運動シーン以外の新しい関わりが生まれることで、クラブ内に多くのコミュニティができ、より居心地の良い空間として認知されることにつながる。
もちろんこのためには、そう感じてもらえるだけの居心地の良さや施設の使いやすさ、クレンリネスの維持などが欠かせない。

他のクラブに対して差別化し、競合優位性を保つことも温浴施設を充実することで実現できる。
温浴施設の集客・定着効果は高く、いまやジム・スタジオ・プールに次ぐフィットネスクラブの第4のアイテムとして重要度は増している。
特に天然温泉の導入は競合クラブが追随しにくいため、長期的に優位性を保つことができる。
日本人が風呂好きであるということや、「癒し」を求める人々が増えているという時代の背景もあって、温浴施設を充実することで安定的に集客力を発揮することができる。

一方で、コストやメンテナンスに多少のデメリットがあるということも押さえておかなければならない。
例えば、天然温泉を導入する場合だが、日本ではほとんどの土地で温泉が出る可能性があると言われるが、場合によっては地盤が固かったり、十分な泉質や温度を得るために当初の予算より深く掘らなければならなかったりすることがある。
年々、掘削コストは安くなっているが、依然として高く、1000メートルの掘削で8000万円前後が現在の標準的な費用である。
温泉特有の「スケール」と呼ばれる付着物が配管などに付くため、定期的に洗浄する設備を備えることや、メンテナンスについて熟知することも欠かせない。
天然温泉に限らず、導入したアイテムに適したメンテナンスを長期に渡って十分に行うことができなければ、逆に施設の価値を落とすことになる。
そのアイテムを価値高く提供するためにはどのくらいの労力とコストが必要なのかを十分に試算した上で、導入することが肝要である。

温浴施設価値付加の方法

フィットネスクラブの温浴施設に高価値を付加するには、いくつかの方法が考えられる。

・天然温泉の掘削
・天然温泉の引湯(運搬)
・準天然温泉の導入
・軟水風呂の導入
・炭酸泉の導入
・スーパー銭湯型温浴施設の付帯・併設

これらの方法の初期投資コストや、ランニングコスト・メンテナンスコスト、そして導入によってどれほど集客効果が上がるのかを検討することが重要である。
また、クオリティの高いデザインを採用することも施設の価値を高めることに欠かせない。

~ここまで~

アバター近藤の以前の職場は、天然温泉を導入しているクラブ運営企業でしたが、当時は相応の諸コストを上回る記載のメリットを感じておりました。
初期に圧倒的な集客を達成し、損益分岐点を大きく上回ることが出来ていたからです。

そしてこれらのメリットは、パンデミックを境に、現在は逆回転が掛かっている状況に陥っていると見られます。
既存の該当施設においては、大規模クラブほど会員数の戻り幅に限界があり、反作用が生じていること、さらにコスト面でもエネルギーコスト等関連するもの全てが値上がりしているため、運営すればするほど厳しくなる状況です。

今後、当然に老朽化が進むことも考えますと、この形態も徐々に役割を終えることになると予想されます。

お読みいただきありがとうございました。

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