7月1日(土):自然資本経営の時代へ
先週の日経産業新聞には「自然資本経営」についての記事がありました。
ここでいうところの自然資本とは企業の事業活動に欠かせない動植物や土壌、水、大気といったものを指します。
2021年に発足した国際団体「TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)」が、2023年9月には自然資本について企業に求める情報開示の枠組みを公表することになっており、内容としては「自然への事業の依存度」や「自然を豊かにするための戦略と目標」といった項目が盛り込まれる見通しだといいます。
こうした動きが出ている背景として強欲資本主義一辺倒で自然資本が傷つくと、企業は長期的に事業を営むことが難しくなるため、企業にも自然資本を充実させる方向へ促すための観点です。
今回の自然資本の考え方は宇沢弘文の「社会的共通資本」とも結びついてくる話だろうと思います。
事業は企業が所有(私有)する様々な経営資源によって営まれ、モノやサービスとしてそれが提供されます。
ただ、前述した動植物や土壌、水、大気などは、企業が私有する範囲内の活動であったとしても、そこから生じるマイナス影響は私有の枠を超えて幅広いものになります。
これはかつてレイチェル・カーソンの「沈黙の春」によって事業活動による公害、周辺住民や環境へ甚大な影響を及ぼすことが問題提起され、そこから時間を経て広く認知されるようになった通りでしょう。
そうした状況が示してきたように、事業のなかで自然資本を絡めて活動を行う際には、そこへの責任が伴います。
だから、社会的共通資本のひとつである自然に対して、これまで以上に責任をもって向き合う姿勢が示されたのは良いことだと感じますね。
自然との関与の仕方、そこをどう数値化して表現するのかは難しいところがありますが、それでも企業の責任対象がステークホルダーへと広がっていったように、持続可能性を踏まえて責任範囲を広げて考えていくのは全うな道筋だろうと思います。