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「アバター近藤が解説する業界史~逆タイムマシン経営論544」

皆さん こんにちは アバター近藤です。
「逆タイムマシン経営論」として、業界唯一の経営情報誌であるフィットネスビジネス誌のバックナンバーを引用しながら、それぞれの年のトピックスや記事について、示唆することは何かをアバター近藤なりに解説していきます。
「歴史に学ぶ」とは良く使われる言葉ではありますが、フィットネス業界史について、詳細に検証した文献は恐らくないと思いますので、これから良い歴史を作るために何かしらのお役立てになれば大変うれしく思います。

~Fitness Business通巻第15号(2004.11.25発行)「スイミングクラブの成長戦略」17~※名称等は当時、一部文章省略

Ⅲ成長クラブの事例研究

事例研究5「新業態・大人専用のスイミングクラブを開発、ウェルネスマーケットを開拓する」(株式会社マイティスポーツ「マイティアクアクラブ」)

今年8月、株式会社マイティスポーツ(以下、マイティスポーツ)は、山形県米沢市に「ウェルネスヴィレッジ」をオープンした。
子ども専用スイミングクラブと、成人専用スイミングクラブ、プールを付帯しないフィットネスクラブの3棟で構成されたものである。
「ウェルネスをキーワードに子どもから大人までの健康づくりに貢献していきたい」という同社代表取締役T氏のビジョンは着々と具現化されてきている。

同社は昭和60年(1985)3月山形県米沢市にT氏の叔父が「マイティスイミングスクール米沢」を創設したことに始まる。
同年9月には福島県須賀川市に2号店「マイティスイミングスクール須賀川」をオープン。
一時は2,000名を超えるスクール生を集めていた。
T氏が同社の経営を見るようになったのは平成8年(1996)。
当時の人口はそれぞれ米沢市9万人、須賀川市6万5千人で、その頃には少子化と不景気の中、多分に漏れず両クラブともに年々在籍数を落としていた。手をこまねいている間に会員数は1,700人を割り込むようになり、将来への危機感と人々のニーズの変化を感じていたT氏は当時ピープル(現コナミスポーツ)が開発中だった「アクアクラブ」のアイデアを知り、すぐに導入を決めた。
ピープル以外の企業の施設としては初めての導入となった。

「アクアクラブ」とは特に大人の会員の利用システムを変更するもの。
決まった時間・曜日に利用するスクールシステムを、いつでも何回でも利用できるクラブ(会員制)システムにするものである。
クラスは目的別に細分化して本数を増やし、名称も「脂肪バイバイ」「とんでけ肩こり」など楽しく親しみやすいものにするという内容であった。
社内ではこのシステム変更に対して「自分達でもできる」という声もあったが、T氏は敢えてピープルからノウハウを買うことにした。
徹底して方向修正を図らなければならないという危機感があったからだ。
T氏はピープルから「1年間で500人は増えます」との話を聞いたことから、それに見合う投資として、ハード面はそれまでオープンロッカーだけだったところに、コインロッカーを導入するにとどめた。
それでも、このシステム変更にかかる投資として、ピープルへのロイヤリティと従業員への新しいプログラムやサービスの研修、宣伝広告費など合計約1,000万円をかけた。

これが大当たりした。
最初に導入した須賀川店では2週間で600人、2ヶ月間で1,500名の集客を達成、続いて導入した米沢店でも一気に800名の集客を達成した。
「これだけ集客できれば大人専用施設でも充分行ける。ハード的にもきちんとしたものを提供しないと成人会員は早晩辞めてしまうかもしれない」
そう感じたT氏は、すぐに大人専用の別館を作ることを計画した。
大人専用にすることで快適な空間を提供するとともに、健康づくりを指向して長く通って頂けるようにしようとジムやスタジオなどのフィットネスアイテムも付帯することを考えた。
自身が以前、建設業に携わっていたこともあり、自分で設計・デザインしながらアイデアやビジョンを盛り込んでいく。
外観から内装まで木をふんだんに使って親しみやすい雰囲気にし、エントランスから自然にプールが目に入る構成にした。
開発費は中小企業金融公庫の制度融資「事業展開支援資金」と銀行から合計4億円を調達して米沢店から徒歩3分程度にある土地500坪を購入、アクアクラブを須賀川店に導入してから3年後の平成11年(1999)4月に、延床面積400坪の「マイティスイミングスクール米沢アネックス」をオープンした。月会費は大人専用の施設としたことから、それまでの5,000円から6,500円に引き上げたが会員数は順調に伸び、1年後にはこのアネックスだけで約1,800名の会員を擁するに至る。

~ここまで~

ピープル(現コナミスポーツ)の「アクアクラブ」は、当時大ヒットしたスイミングエリアでのスタジオシステム化と言えます。
プールエリアの無料プログラムは、当時少なく、これをスタジオエリアのように目的別に増設することで、お得感を出すというものです。
現在は、プールも無料プログラム中心になっていますので、今であれば当たり前となったサービスが当時は希少性があり評価されたと思われます。

パンデミック以降、「いつでも来られるフリーシステム」のマイナス面がより際立っていて、フィットネスエリアのスクール化が注目されておりますが、これとは全く逆の動きで成功したことは、歴史的な変遷と捉えることができます。

お読みいただきありがとうございました。

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