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大事なのは「未来」?それとも「命」? 【誘拐犯と被害者の今】【The Safe House #0.5】

元動画→

【】→動画内に記載のない説明・文章

※この記事は
 動画のスクショと解説付きの台本です。
 
 動画視聴後に読むことをオススメします。

 最初は文章だけ、次にスクショ&解説……と目を通すと、
 分かりやすいとおもいます。

あしからず。


■注意事項

この物語はフィクションです。

実在の人物、組織、出来事等とは
関係ありません。

また、この作品には、
現実での犯罪を推奨する意図は
一切ございません。


■前回のあらすじ

前回の台本→

前回の動画→


オレ・夢野陽は、
山奥にあるログハウスの持ち主だ。

ここにはオレを含め、
3人の男女が暮らしている。

ある日の深夜、
住人のひとり・氷室零……

彼女はかつて職場で受けた
パワハラのトラウマに苦しみ、
自分を精神的に追い詰めてしまっていた……。

そんな時、オレは彼女と話をし、
「ここにいるだけでいい」と
気づいてもらった。

しかし、その会話の中で、
オレは思い知らされる。

主人公・陽は良いヤツと思いきや、犯罪者であった。

オレは五歳の見知らぬ少女・メグちゃんを、
このログハウスに連れてきた、
誘拐犯であることを……。


■第一部・白雪邸

【白雪邸・外観】

五歳の少女「メグ」こと白雪恵の住む家は、
立派なお屋敷だ。

白雪明理紗(ありさ)
……私の大切な一人娘・恵が連れ去られ、
数か月が経った。

しかし……恵は、帰ってこない。

【白雪邸・廊下】

手前右⇒
「メグ」こと白雪恵の母・明理紗(ありさ)

真ん中奥⇒
明理紗が雇っている「部下A」

白雪明理紗
「……ねえ、恵は?
 まだ見つからないの?」

そう聞くと、私の部下は頭を下げた。

明理紗の部下A
「申し訳ございません、奥様……」

白雪明理紗
「ったく、無能ねえ……!
 恵を連れ去ったのは、犯罪の素人でしょ!?
 
 アンタたちはその道のプロなんだから、
 さっさと恵を見つけて、
 連れ戻しなさいよ!」

明理紗の雇う「部下」は、
犯罪のプロフェッショナルらしい。

その時、目の前のドアが開き、
……夫が入ってきた。

「メグ」こと白雪恵の父・
真(まこと)

白雪真
「た、ただいま……」

明理紗の部下A
「おかえりなさいませ、旦那様」

白雪明理紗
「……」

夫の挨拶をガン無視する明理紗

夫はちらとスマートフォンを見た後、
怯えた目を私に向けた。

白雪真
「め、恵は、見つかったか……?」

白雪明理紗
「いいえ」

白雪真
「そうか……
 犯人から身代金の要求とか、
 何かの条件とかの連絡は……?」

白雪明理紗
「ない。何もない」

白雪真
「……なあ、
 もう数か月たってるんだ、

 ……明理紗の部下じゃなくて、
 俺たち警察で探すっていうのは、ダメなのか?」

白雪明理紗
「はあ!?
 ダメに決まってるでしょ!?」

私は夫に詰め寄った。

自分たちのことを考え、
恵の誘拐を警察沙汰にはしたくない明理紗

白雪明理紗
「アンタ、警視総監でしょお!?
 考えてもみなさいよ!

 総監と警察官僚の一人娘が、
 数か月も失踪よ!? 

 そんなことがバレたら、
 警察内部やマスコミは
 大騒ぎするにきまってるわよ!

 ……私たちだけじゃない、
 警察全体の信用に関わるのよ!

 ……それにアンタ、
 自分の地位が惜しくないの!?」

白雪真
「ち、地位って……
 そんなこと、言ってる場合じゃないだろ!

 恵のことが、心配じゃないのか!?」

白雪明理紗
「心配に決まってるわよ!
 当たり前でしょ!?

連れ去られた恵の命ではなく、
自分の頑張りを重視する明理紗

 あの子がいないと、
 私の頑張りは全部パーになるの!」

白雪真
「えっ……?」

教育ママ・明理紗の迫真の演説

白雪明理紗
「恵にはこれからも!
 家で、朝から晩まで勉強させて!

 家事も完璧にさせて!
 トップクラスの学校を卒業させて!

 私のような立派な警察官僚にさせて、
 良き男性と結婚させて!

 ……恵がそうならないと、私が困るの!

 じゃないと、私の努力は全て!
 ムダになるのよ!」

明理紗の説得を諦める真

白雪真
「……」

白雪明理紗
「監視カメラなんて、なくても平気よ!

 私の部下は、
 一回は恵を見つけてるんだから……」

私は、
ずっと横で突っ立っている部下を、
アゴでさした。

白雪真
「そ、そうなのか!?
 ……でも、恵は……」

白雪明理紗
「ええ、いないわ。
 ……コイツら、無能なの。
 子どもひとり連れ戻せず、犯人を逃がしたわ。

 ……でも、
 一度恵を見つけられたのは大きいわ。

 これなら警察も、
 ……雇おうと思った探偵すら、必要ない!

自分の娘・恵を
「もうひとりの白雪明理紗」にしようと
もくろむ明理紗

 私の地位は安泰のまま、
 恵を連れ戻して、
 素敵な未来を見せてあげられる……!」

白雪真
「……そんな悠長にしてて、いいのか!?
 
 恵はもしかしたら、
 最悪の事態になっているかもしれない……!」

白雪明理紗
「この前部下が見つけた時、
 恵は元気なのを確認してるわよ……。

 恵は、帰りたくない、って
 ものすごく抵抗したらしいわ……」

……口にすると、
胸のあたりがムカムカしてくる。

白雪明理紗
「……なんなの!?
 恵は犯人に洗脳でもされたの!?」

【スマートフォンのレトロな着信音】

白雪真
「あっ……!」

初めて笑顔を見せる真

夫はスマートフォンを取り出し、
画面を見て笑みを浮かべた。

白雪明理紗
「なに?
 ……恵のことで、何かあったの?」

夫はビクッと肩を震わせ、
目をさまよわせた。

白雪真
「あ、い、いや、なんでもない……!
 い、急ぎの仕事が入ったんだ、
 いってくる……」

夫は玄関のドアから、外に出ていった。

……恵が誘拐されたころから……
夫は、おかしい。

スマートフォンを見る回数が増え……
何かを隠しているような気がする。

女のカン

白雪明理紗
(まさか、女?
 ……いや、まさかね……)

「……それにしても、
 夫は口だけで何もしないわねえ……

 ……この屋敷には、
 無能しかいないのかしら……」

私はつぶやきながら、
リビングへ向かった……。


■幕間・舞台は白雪邸からログハウスへ

【ゲーム画面を模した場面の切り替え
 白雪邸→ログハウス】

舞台は明理紗たちの白雪邸から……
主人公・陽たちのログハウスへ

※ゲーム画面を模しているのは、
 この作品を「もともとノベルゲームにしよう」
 と思っていた時の名残りです


■第二部・ログハウス

【白雪恵が連れ去られた
 ログハウス・リビング】

左から右へ
陽・メグ(恵)・零

氷室零
「お前は……陽は……
 メグの命を助けたいから、
 ここに連れてきたんだよな?

 ……メグに変なことをしようだなんて、
 思ってないよな?」

夢野陽
「……そんなこと、思ってないよ。

主人公・陽は、
教育ママ・明理紗とは真逆の思想の持ち主だ。

 オレは、メグちゃんにはここで……
 自由に、過ごしてほしいだけ。

 今、メグちゃんは
 毎日を楽しそうに過ごしてて……
 ここにいることを望んでる……。

 彼女の親御さんは、
 傷ついているのかもしれない……。

 ……けど、
 死にたがっていたメグちゃんが
 ”家に帰りたい”と思うまでは……
 ここで過ごしてもらった方が、いいと思う。

 ……まあ……
 誘拐犯のくせにこんなことを言うのも、
 変だけどね」

(オレは……

 家にずっと閉じ込められて、
 追い詰められていたメグちゃんを、
 助けたかっただけ……。

「助けたい」陽の純粋な気持ち VS 非情な現実

 メグちゃんの地域の児童相談所……
 警察すら……
 彼女を救えなかった……。

もみ消しの明理紗

 メグちゃんのお母様が、
 彼らに金を渡して……
 虐待を「なかったこと」にしてきた……)

……オレは、目を閉じた。

「”誰もメグちゃんを救えない”
 と分かっても……
 
 オレは、
 彼女を見殺しにするなんて、
 できなかった……。

突然の陽の提案に、おどろく恵

 ……だから、
 家から落ちたがってたメグちゃんに聞いたんだ、
 ”一緒に逃げないか”って……。

 ――でもすぐに、後悔したよ。
 ”オレ、なにしてんだ”ってね……。

互いのことをあまり知らぬまま、
共犯になったふたり。

陽はメグの命のため、
結果として「犯罪者」になった。

 だけど……メグちゃんは……
 泣きながらオレに――
 名前も知らぬ男に、すがりついてきた……。

現実からの悲しき逃避行

 だからふたりで、
 ここまで逃げてきたんだよ……」

オレは目を開けた。
ソファーに寄りかかり、天井をあおぐ。

「……まあ、
 こういっても、信じてもらえないかあ。

 ……もしかしたら、氷室さんは、
 こう考えているのかもしれないねえ。

 この家の周囲は林ばかりで何もないし、
 人も来ないんだから……

人気のない山奥のログハウスは、
犯罪にうってつけのロケーションだ。

 もしオレが
 キミたちを手にかけたとしても……
 土に埋めてしまえば、バレない……って。

 ……一番最初に会った時、そう言ってたね。

 ……まあ、
 そう思われても、仕方ないとは思うよ。

「感情に任せてとんでもないことをした」と
分かっている陽

 たしかにオレは、一般社会からしたら、
 ひどく異常なヤツだよ。

 ほんとうに。わかってるよ……」

オレは手で頭をおさえ、うつむいた。

氷室零
「いや!
 ……すまん、疑うようなことを聞いた……」

氷室さんは慌てたような声を出した。

氷室零
「お前は、出会ってからずっと……
 自分が安全だと、証明してきたのにな。

今後語られる「陽の命がけの証明」

 この前、
 メグの家のスーツの連中が来た時も、
 
 お前は大ケガをしてまで、
 メグを守った……」

夢野陽
「……いや、オレは疑われて当然だよ。

 ……ふつう、
 人の命を救おうとして、
 ここまでやる人はいない……。

 警察や児相がダメでも、ほかの道を探すはずだ。

 それに比べたら、オレはお人好し――
 いや、ただの異常者だ」

氷室零
「……じゃあ、私も同類だな」

夢野陽
「え?」

零も自分の信念を貫いたがゆえ、
一般社会のレールから外れた存在だ。

彼女の過去も、今後語られてゆく。

氷室零
「私だって学生時代に、
 人のために暴力沙汰を起こして、
 少年院に入ったんだ、

 広い意味で”犯罪者”というのは、
 お前と同じだよ。

 ……今だってお前のことを、通報していない。
 私も、立派な共犯だ」

夢野陽
「……そう、だね」

氷室零
「……ああ。
 私は、お前の純粋な気持ちを、
 疑う資格すらない……。

 ……私、疲れてるのかもしれないな。
 悪い、変なこと言って……」

オレは首を横に振った。


【ログハウス・
 陽の自室である屋根裏部屋】

……しばらくして、
氷室さんは寝室に、
オレは自分の屋根裏部屋へと戻った。

ベッドに寝転がり、天井を見上げる。

(犯罪者、か……)

……数か月前は、
自分が誘拐犯になるなんて……
思いもしなかった。

犯罪者・陽と
共犯・メグの出会いは、
クリスマスの夜だった。

――始まりは、去年のクリスマス――

雪が降る夜、
メグちゃんに……
月を見上げる、真っ黒な瞳に出会った――

【悲しげなクリスマスソング】

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