百合作品をまとめています。不定期更新です。
換気扇の下は、うるさいから好き。 かつてここにあったきみの笑い声も、この部屋で鳴っていたギターの音も、きみが燻らせていたタバコの煙も、ぜんぶかき混ぜて外に出してくれる。 「ずっと、想ってるよ……」 生まれたばかりのメロディを口ずさむ。 ふにゃふにゃした輪郭は、せわしなく回る大きな羽の中に吸い込まれていった。 ——きみの笑顔、大好き! きみの歌声も、きみが作るメロディもぜんぶ大好き! どこかから聞こえる声だけは、頭を循環している。 振り払うように、新しく降りてきたフレーズを口
「鬼は外、福は内」 声が聞こえるから、Uターンしたわ。 かつて私の住処だったこの家から。 窓に灯るあかりの中で彼女はどんな顔をしてるのかしら。 笑顔ならいい。ほかのだれかと。私のことは、考えないでほしいの。 こんな私なんて、見てほしくない。 通り過ぎた家の玄関に、イワシの頭が刺さっていた。 隣の家には、イワシに柊までついてきた。 昔はなんともなかった魚と木が、今はとんでもなく気持ち悪い。 匂いを嗅ぐと呼吸器官が変になりそうで、胃のあたりがむかむかしてくる。 吐き気をこらえな
「だれよりもあなたを愛してる」 彼女が歌っている、流行りの曲。 デフォルト設定からいじってないので、マイクを通した彼女の声は死ぬほどうるさい。 っていうか、うるさく聞こえる。 『踊』のときは盛り上がるのにちょうどいいなって思ったぐらいだったのに。 早く終われ。この曲。 ああでもまだCメロあって、大サビでまた来るのか。「だれよりもあなたを愛してる」。 ぐぐ、と手を握り込む力が強くなる。 さっきからずっと両手を握りっぱなしなのだ。 爪が手のひらに食い込んで、指は白くなっている
今日が終わる。朝起きて仕事行ってパソコンつついて帰って風呂入って布団に入るだけの今日が。 いつもと変わらない一日。どうでもいいような一日。 彼女が家を出てから、私の日々は100枚ぐらい白黒コピーしたうちの1枚みたいになっている。 おそろいで買ったマグカップも、誕プレでもらったピアスも、身体を重ねたベッドも。 みんな色をなくして、ただ繰り返される日々の背景になっているだけだ。 死ぬまでずっと、彼女と一緒がよかった。 複製されていくだけ、浪費されていくだけの毎日なら。 せめてカラ
百合じゃない創作物!!
きみとわたし、別の身体を生きてる。 違う色をしてるからいつか、混ざれなくなる日が来る。 たとえわたしが、色を意識してなくても。 きみが誘ってくれた食事の帰り。 きみが改札を抜ける直前、わたしは言った。 「また遊んでよ」 頷いたのは、だれもいないアパートに帰るからだよね。 ホームへの階段を駆けていく背中に、心の中で呼びかけた。 きみがアパートにひとりきりじゃなくなっても、また誘ってくれる? わたしが遊びに行こうって言ったら、また時計台の下に来てくれる? 答えはNOだよね。
「あ、いやこの人好かれたいだけだよ。じゃないとあのときこういうこと言わないでしょ」 彼女お得意のプレゼンが始まった。 ふだんは気配り上手な彼女の話を、みんなが全身耳にして聴いてる。 すごい。よくそこまで人のこと見てるな。なるほどって思っちゃう。しかも熱く嫌なところを語るんじゃなくてしれっと、「今日は空気が湿ってるから雨が降るよ」みたいな感覚でプレゼンしてる。 悪口を言ってる、んじゃなくて、ただ事実として対象となる人物のよろしくないところをしれっと挟む感じ。 で、たしかにこうい
たとえば、三日間部屋干しにされている服とか。 たとえば、居場所がなくて床に佇み続けているケーブルとか鞄とか。 たとえば、あるべきところに帰らずテーブルでたむろしている空き瓶とか調味料とか。 私の毎日って、そんな感じ。 パーマを当てた髪の毛にムースもつけず、毛玉だらけのセーターに身を包んで、ソファに寝転んでいる。 掌に収まるサイズで繰り広げられている、他人の成功と悪意を延々と眺める。 ブルーライトを浴びている喜びや私に向けられたものじゃない興味って、なんでこんなに身体に悪いんだ
激しめの創作です。胸が悪くなるかも。閲覧注意。
本作品を読む前に必ず一読ください!!!!※この作品は、フィクションです。 ※類似しているハッシュタグがありますが、本作品と該当ハッシュタグは一切関係ありません。 ※この作品には、特定の個人や思想、団体、およびハッシュタグを誹謗中傷する意図はございません。 ※モデルも特にいません。 ※かなりきつい言葉が出てきますので、少しでも不快な感情になられた方はすぐに読むのをおやめください。 ※誹謗中傷・荒らしは禁止です。 本文 『#私を推してくれる人にRPされるタグ』 彼女の投稿に、こ
彼女の作り出す世界は、いつだって美しい。 泥沼に住む、私なんかでは踏み入れることのできない世界。 その世界地図は、いつだって、私の胸に火をつける。 それは、地獄の業火。 それは、憎しみの焔。 私はひとり、嫉妬に狂う。 熱く、苦しい嫉妬の炎に。 痛みに叫び、苦しみに喘ぐ私の声は、きっと彼女には届かないのでしょう。 ならば。どうか。 灰となった私が、どうか。 どうか彼女の身体を包みますように。 煙となった私が、どうか。 どうか彼女の呼
私は、朗読者ではない。 私は、創作者だ。 私は、表現者だ。 心臓を抉り、その血をインクとして物語を綴る。 朗読は、叫びだ。 彼女のような天使の声は我が喉からは出ぬが。 彼女のような表現力も、私にはないが。 私はただ、叫ぶだけだ。 痛みを。傷を。苦しみを。劣等感を。悲しみを。嘆きを。 地獄に住まう鬼のような醜い声に乗せて、現すのみ。 それとも知らずに。 我が血でできた文を読まずに。 我が叫びを聞かずに。 朗読者とはなにごとか? 私は、朗読者ではない。 私は、創作者だ。 私
雑魚のお気持ちとか雑魚の日常とかとにかく雑魚
私が感想をもらったときに気を付けていることは、「あなたの感想が一番○○です」とは絶対に言わないようにしている、ということだ。 たとえば、「あなたの感想が一番うれしい」とかでも。 もらった当人も複雑かもしれへんし、もしそれを、「あなた」以外が見たらどう思うかな? ってなるし。 以前、自身の創作に対して感想をくれた人に、「あなたの感想が群を抜いて分析力がありますね」とコメントしている人がいた。 そのコメントを見た瞬間、私の胸の内はざらついた。そして気が付けばその人のアカ
※幻滅されるかもしれません。 よっしゃーやってたったどー! 昨日とは一転、私の心は超☆ウルトラハイパー爽快MAXだった。 前回のあらすじ 長い戦いの末、9連休を勝ち取った文字書き・つきのさかな。 しかしXちゃんのハニートラップにより、時間を次々と犠牲にしてしまう。 家事をすべて婚約者に押し付け、モラハラパートナー一歩手前に成り下がったつきの。 このままではまずい! 父親みたいな脱糞げろ吐き食器棚クラッシャーになってはいけない(※だいぶ語弊があります。詳
見上げた空は紫色で、白い小さな星がちかちか瞬いている。オレンジがよく映えそうな、ハロウィンらしさ満載の夜空だ。 振り返るとなぜか紫色はない。とっぷりとした夜の闇に、ビルや家の灯りや街灯がきらきら輝いていた。 いかんせん夜に囲まれた場所で、あたりは暗かった。 街灯が照らす丸い階段を降りた先にある広場で、私は信じられないものを見た。 夢じゃないと絶対に見ることのできない……できなくなってしまった光景を。 K.Mが。K兄さんがいる。 私が生まれる前に亡くな
ちょっと早いですが、メリークリスマス! 私はサンタさんからすっごいやばいプレゼントをもらいました! つるっと頭の営業さんは、困った顔して言いました。 「会社さんが求めるパフォーマンスに未達ということで……1月までの契約となります……」 はあ……。 この言葉と一緒に贈られた来年度のカレンダーを手に、席についた私。 頭の中で、聖歌隊が歌う。それはそれは天使みたいな声で。 ウィーウィッシュユー、ア、メリークリスマス。 アンド、ア、ハッピーニューイヤー……。