見出し画像

漁港めぐり【その4】

私の研究の第一歩は魚を採集することで、釣り以上に購入という方法に頼っています。この度、高知県土佐清水市の漁港で魚を購入し、検査を行うことができたので、そのときの漁港のお話です。先に断っておきますが、今回紹介する漁港では、業者や地元の方など権利のある方しか魚を購入できません。しかし、土佐清水市内の道の駅やスーパーなどで購入できます。是非、ご旅行の際にはお立ち寄りください。

漁船から揚げられた魚を仕分けている様子

以布利漁港

Googleマップでは、「以布利漁港」と表記されていますが、地元の方から「大敷」と呼ばれていました。私の研究テーマの1つに「カマス属魚類の単生類の分類」があるのですが、主に南方の海に生息するカマス属魚類は私の地元の兵庫県では手に入りません。そのため、なるべく南方の漁港に行きたかったというのがあります。この漁港では、沖合にある定置網にかかった魚を早朝に取りに行き、写真にあるような形で仕分けをしていきます。時期的に、アジやサバ、カマスが多かったですが、クロマグロやカツオなどもありました。しかし、私の目的はカマス数が少なく商業的に相手にされない魚たちです。

数が少ない魚はこのように別に分けられていました。決して価値がないわけではありません。アカヤガラやウマズラハギなどがいました。個人的な話ですが、ハギの肝美味しいですよね。

アカカマス&ヤマトカマス

去年に引き続き大量(合計30匹)ほど入手しました。昨年はカマス食べ比べというものをしたのですが、アカカマスは素材を活かせてヤマトカマスには何かプラスが必要と言ったところでしょうか?どちらも美味しいですよ。

アカカマス。カマスの写真を撮り忘れていました。

タイワンカマス

今回の目的の一つでした。残念ながら目的の寄生虫はいませんでしたが、高知県では釣りで取れるとのこと。地元のアングラーも漁業関係者も、タイワンカマスといえば釣る魚だそうです。

30cmをこえる大きなやつです。

イサキ

これにも寄生虫界隈では有名な寄生虫がいます。今回も手に入れることはできませんでした。ただ、今(夏)が一番美味しく食べることのできる魚です。

小さい個体しかいませんでした。あと、容器が魚の血まみれになっています。すいません。

バショウカジキ

今回の調査で初めて本物をみました。少し調べてみたのですが、なかなかクセのある魚のようで流通しないようです。ちなみに、寄生虫が結構いました。

カジキといえばこの角?比較的小さいカジキでした。

オキザヨリ

1.3mくらいまで大きくなります。私たちがもらったのは、88cmありました。本州付近ではあまり馴染みのない魚ですが、とても美味しいらしいです(知り合いにあげてしまった)。しかし、知名度の低さから値段は低いとのこと。今のうちに調査しなければならない魚の一つです。

ダツの仲間です。ご存じのない方は調べてみてください。某漫画では、武器にされていました。

ムレハタタテダイ

チョウチョウウオと呼ばれる魚の仲間です。観賞魚です。

背中の長いひれが”はた”だそうです。あと、名前の通り群れます。

カゴヤキダイ

発生段階が独特で独立した科(カゴヤキダイ科)というのがあります。見た目の色からして観賞魚でもあるのですが、けっこう美味しいようです。私は食べなかったのですが、検査後この魚を譲った知人が唐揚げにしたら美味しかったとのことです。

美味しいそうですが、食べるには派手すぎるような気がします。

タカサゴ

沖縄では「ぐんるん」と呼ばれており、安くて美味しい魚とされています。和歌山県でも見かけましたが、本州付近ではあまり重宝されていません。

個人的に淡水魚っぽい見た目だと思います。寄生虫はほとんどいませんでした。

アヤトビウオ&ツクシトビウオ&オオメオキトビウオ

今回の調査で一番勉強になった魚です。胸鰭の特徴(胸鰭の長さ、模様、軟条の分岐)などで分類するのですが、とにかくわかりにくかったです。私は、魚の種同定をするときに「日本産魚類検索図鑑」という図鑑を使用します。10年前の図鑑ですが、日本産魚類が全種乗っています(約4600種)。ただ、この図鑑には写真はなく、スケッチと特徴リストしかありません。非常に学術的で正確なのですが、「不明瞭な筋が2本ある」「背鰭に三角形様の模様がある」と記述があったとき困ります。背鰭の模様が、特徴なのか、細菌が感染してできたシミなのかわかりません。そういう時には、写真付きの図鑑があると、文章で表現されている特徴を写真で確認できるので便利です。

アヤトビウオ:胸鰭に斑点状の模様があります。
ツクシトビウオ:胸鰭に特に模様がないのが特徴です。魚の向きが逆になってます。すいません。
オオメオキトビウオ:胸鰭に微妙に黒い模様があります。あと、血が写ってます。すいません。

なぜ以布利?

「主に南方の海に生息するカマス属魚類は私の地元の兵庫県では手に入りません。」と先述しましたが、正確には、兵庫県でもアカカマスやヤマトカマスは釣りや購入で採集することはできます。しかし、日本に生息している他9種のカマス属魚類は沖縄県、鹿児島県、高知県、和歌山県などが生息地になっています。それならば、兵庫県から近い和歌山県でも十分なのですが、わざわざ以布利にしたのは2つ理由があります。
1つは、この以布利漁港には海遊館の以布利海洋生物センターとよばれる、海遊館の研究施設があります。カマス属魚類を採集するために、魚類の専門家の方々と話をしているなかで、海遊館に行きつきました。そこで、海遊館に「以布利でカマス属魚類が取れるらしいのだけど、情報が欲しい。」と問い合わせたところ、魚類の情報や施設の利用など、非常に丁寧に対応してくれたためです。
もう1つは、この以布利はイブリカマスが発見された場所だからです。イブリカマスは、2005年にタイワンカマスと区別されて新種と報告されたカマスです。「新種の見つかった場所に行ってみたい!」という私の思いもありました。

近くにある以布利海洋生物センターの一般公開されている第二水槽に展示されているポスターです。

参考文献

Doiuchi, R., Nakabo, T. The Sphyraena obtusata group (Perciformes: Sphyraenidae) with a description of a new species from southern Japan. Ichthyol Res 52, 132–151 (2005).

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?