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ヒルではないよ!コウガイビル

ここでは、私がこれまでに見つけた動物を気まぐれで紹介していきます。今回は職場の駐車場でみつけた生物です。少し前は珍しい生き物として紹介されていましたが、少し田舎に行けば湿ったところにはそれなりにいます。

和名:オオミスジコウガイビル(たぶん)
学名:Bipalium nobile Kawakatsu & Makino, 1982
分類:扁形動物門 渦虫綱
生息:本州各地, 四国, 九州,北海道でも見つかっている

溝の片隅に丸くなっていました。背中の筋が綺麗に見えます。気持ち悪かったらすいません。

解説:コウガイビルは“ヒル”という名前がついていますが、ヒルではありません。血を吸うので有名なヒルはミミズなどと同じ環形動物ですが、コウガイビルは扁形動物です。また、扁形動物の多くは寄生性ですが、このコウガイビルは自由生活性です(ちなみに、自由生活性の扁形動物には切っても増えるプラナリアがいます)。しかし、偶発的な誤飲等なんらかの理由で別種の動物の体内に移動した後も一定期間生存する偽寄生虫としてふるまう事例が知られています。また、広東住血線虫の中間宿主であるナメクジやカタツムリを餌としているため、広東住血線虫の待機宿主となりえる可能性も指摘されています。見た目が気持ち悪いですが、口に含まない限り問題ないです。
(*ナメクジやカタツムリには、鳥や獣の寄生虫の幼虫がいます。これが誤ってコウガイビルに食べられた場合、鳥や獣の体内に移動できず、寄り道したことになります。この寄り道となる動物を待機宿主といいます。)

コウガイビルは熱帯から温帯に広く分布します。夜行性で森林や草むらなどの苔の下や朽ちた樹木や落ち葉の下など,暗く湿潤な場所に生息します。肉食性でミミズ,昆虫,カタツムリやナメクジなどを好んで捕食します。郊外型市街地や農薬を多用しない果実栽培や有機物の豊富な里山地域などを好んで生息するようです。ミミズは土壌をつくるため、ミミズを食べるコウガイビルは農家の方にとっては害虫にもなるようです。温かく、餌となる生物が豊富な地域の湿った暗い場所に好んで生息するようなので、冒頭で述べたように田んぼや畑の多い地域でよく見かけます。

出勤時、駐車スペースの近くで見つけました。最初は何かよくわかりませんでした。今年に入って2回ほど発見しました。

この背中に筋のあるミスジコウガイビルは外来種です。原産地は中国南部とされており、体長は50cm〜1mに達します。背面は淡黄褐色で3本の縦線の模様が入っているのが特徴です。腹面には2本の縦線模様があります。戦前の記録はなく、1960年代末から東京周辺でみられるようになったようです。

【参考文献】

川勝, 正治; 西野, 麻知子; 大高, 明史 (2007). “特集:外来淡水産底生無脊椎動物の現状と課題 プラナリア類の外来種”. 陸水学雑誌 (日本陸水学会) 68 (3): 461-469.
早崎, 峯夫 (2012). “面白い寄生虫の臨床(1) : 日本獣医臨床寄生虫学研究会編 : 偽寄生虫コウガイビル”. 日本獣医師会雑誌 65 (10): 731-740.

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