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ウミホタルを探して

ウミホタルは、名前の通り海洋性の発光生物です。プランクトンの夜光虫と勘違いしている方も多いですが、ここでお話しするのは甲殻類のウミホタルです。砂地の海岸に生息し、簡単なトラップで採集できるため、比較的身近な生物になっています。海沿いの地域の観光協会や旅館が観光資源として利用しています。また、発光の仕組みが他の発光生物と異なることでも有名です。

きっかけ

ウミホタルは甲殻類ですので、私が専門としている扁形動物とは何も関係がありません。ですが、4年ほど前までは定期的に採集に行っており、確実に採集できるくらいコツをつかみました。採集をはじめたきっかけは寄生虫とは関係なく、勤務校の生徒が時折自主的に採集に行っていると聞いたからです。興味があったから同行したというよりは、中高生が夜中まで保護者なしで採集していることを知ったためでした。

事前準備は大事

私の良いところは、思い立ったらすぐに実行すること。私の悪いとことは、思い立ったらすぐに実行してしまうことだと思っています。最初の採集調査は散々でした。車を止める場所がない、トラップが壊れた、トラップに入れるエサがないなどなど。その後、ウミホタルの資料を集めて、生態の勉強やトラップの改良などを行いました。また、採集場所についても生徒の保護者が駐車場所を提供してくれたりしてくれたこともあり、安定して採集調査を行うことができるようになりました。

ウミホタルの採集方法

基本的に身近なものでできますので、近所に砂浜の海岸があるのでしたら、小学生の自由研究にはピッタリかと思います。用意するものは、“たこ糸(少し太め)”“インスタントコーヒーの空き瓶”だけです。インスタントコーヒーの空き瓶のフタに1cm程度の穴を4,5個開けます。その後、たこ糸を瓶の口に巻きつけ結び、その上から穴をあけたフタをつけるだけです。
仕掛けの設置は、日の入りと同時に海岸(突堤があれば、海岸線から5〜10mくらいのところ)から、コーヒー瓶のトラップの中に餌のちくわを入れて投げ入れるだけです。注意点は、あらかじめ海水をいれてしっかりフタをすること、たこ糸の端をしっかり持っておくことです。その後、1時間程度待ってから引き上げます。
(コーヒーの瓶でなく、ペットボトルでも大丈夫です。瓶の方が沈みやすいです。)

トラップの原理

このトラップの原理は、ウミホタルの習性によるものです。ウミホタルは昼間海岸近くの砂の中に潜んでいます。日の入りと共に砂から出てきて、餌を探します。また、ウミホタルはスカベンジャー死肉食性)と呼ばれる性質の動物なので、広い意味で魚類の死体であるちくわを利用します。ちくわがベストというわけではなく、一番安いのでよく使っていました。自由研究の題材として利用するのであれば、しかけを複数用意して、ちくわ, エビ, ハムなど餌を変えて比較しても面白いかもしれません。あと、ウミホタルが一番餌を食べるのは日の入り1,2時間くらいです。過去に、採集を夜中に行ったところ採れる量が減りました。一晩中採集調査をして変動数を調べたことはないので、よかったら試してみてください。

乾燥標本

採集したウミホタルは乾燥標本にします。まず、瓶の中のウミホタルを茶漉しのようなもので取り出し、キッチンペーパーで挟んで水分をとります。その後、水気をとったウミホタルを乾燥したキッチンペーパーで包んだのち、シリカゲルを入れたタッパーに入れます。タッパーに入れたら、その後は放置で良いのですが、生乾きになっていると腐ります。そのため、シリカゲルの量を十分用意するか、採集後なるべく早くドライヤーなどで乾かすのでもよいです。
乾燥標本は乳鉢で十分すりつぶしたのち、水を加えて光らせます。これは、乾燥したウミホタルをすりつぶすことでウミホタル体内の発光物質と発光に関わる酵素が体から出てきます。これに水が加わると発光します。それだけなのですが、世に多くいる発光生物は、発光物質、発光に関わる酵素、エネルギー、水が必要ですが、ウミホタルは水だけで発光します。

いろんな生物を見てみよう

海岸にはウミホタル以外に多様な生物がいます。私は広くは海産無脊椎動物が専門ですので、海岸の岩を見て回るのはとても面白いです。また、個人的に感じている海での調査の魅力として、景色が楽しめるというものがあります。特に夕日は素晴らしいです。中高生も景色の美しさに感動しておりましたが、毎月行っていると調査後にいつも食べに行っていたラーメンの方が魅力的だったようです。花より団子ですよね。

【参考文献】

海蛍の光―地球生物学にむけて 阿部 勝巳 ちくまプリマーブックス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%83%9F%E3%83%9B%E3%82%BF%E3%83%AB

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