シャツ、ズボン、パジャマ、その他日用品をトランクの中に入れ、切符とパスポートを持って家を出る。二〇年ぶりの長期休暇に足取りが軽くなっているのがわかった。電車で大都市に行き、係員にパスポートを見せる。 「おお、長期休暇ですか、いいですねぇ。私の部署は最近忙しくてね、もう五〇年は休んでないですよ」 「あー、大変ですね。ではもう行ってもいいですか?」 捕まってしまったが最後、休暇が終わる……。普段お世話になっている分申し訳ないが、私の休みは犠牲にできない。 「はい、大丈夫
春、高校入学式と来れば、心機一転高校デビューをしたり、新しい出会いに胸をときめいたりするだろう。 しかし幼なじみの綾は僕にしがみついて離れず、やろうにも高校デビューができないことを悟った。ボーイッシュ女子から清楚系の美人になりたかったのに。 それにいくら同性の幼なじみだとしても腕に引っ付き、全力で人見知りを発揮するのはいかがなものかなと思う。 「あや、そんなんじゃ友達をつくることはおろか誰とも話せないぞ。今日中にクラスの人と話すのが目標なんだろ」 「確かに話しかけられ
「きらいな人」の続編です。 『速報です。本日午後未明、〇〇市の小学校で生徒二人が血を流して倒れていると通報がありました。警察が駆け付けたところ、その場で死亡が確認されました。××署は自殺と見て捜査しており–––』 職場から帰りテレビをつけると普段見ているニュースが流れる。いつもなら可哀想と他人事のように思えるものだったが彼女にとって聞き逃せないワードがあった。 「〇〇市の小学校……?」 彼女は第二小学校の教師であり、その小学校は〇〇市内にあった。無関係であって
あいつさえいなければいいのに。あいつはイヤな奴だ。僕のことをキモいって言ったり、死ねって笑いながらいうんだ。あいつなんて嫌いだ。僕の物を破いたり隠したりするんだ。クラスの人たちは関わりたくないのか助けてくれないし、見て見ぬフリをする。 ……でも、それも当然かなって思う。僕を助ける価値なんてないから。冴えない顔、頭が悪くて運動もできない。話もヘタクソで、すぐに誰かの足を引っ張る。 親も、小さい頃はお前なんて産まなきゃ良かったと言ってたくさん構ってくれたけど、ここ最近はずっ