ギタリスト脱初級!実践講座 第3回:正解のピッキングとは
こんばんは。
前回まではスケールの説明・指板での覚え方など「左手の押さえ方」の話がメインでした。今回は右手中心に「音を出す」技術について述べます。これまで紹介した練習曲で苦労された方も、これを読み終わった後に弾き方を再検討すればクリアできるかもしれません。ピッキング中心のテーマになりますが、指弾きアコースティックの方の参考になる内容含みます。
まずは弦の弾き方の種類をまとめてみます。
1ダウンピッキング
2アップピッキング
3スライド
4ハンマリングオン
5プリングオフ
基本この5つですかね。他にもありますがやや特殊ですので今回は取り上げません(チョーキングも別カテゴリーにします)。1と2はいいとして、3・4・5を(ご存じとは思いますが)念のため説明します。
・スライド
これは何となく分かりますよね。例えば1弦3フレットを人差し指で押さえてピッキングします。音が鳴っているうちにその人差し指を(弦を押さえたまま)5フレットに動すことによって(この場合2フレット上に)音程を変えるやり方です。この移動幅(フレット数)が多いほど「スライド感」が出て印象的になります。雑談で申し訳ありませんが、私がスライドでいつも連想してしまうのが若い時に聴いたHuey Lewis & The News の If This Is Itという曲、イントロど頭で4度上にスライドするギターです。よかったらYOUTUBEで探して聴いてみて下さい。
・ハンマリングオン
例えば1弦の7フレットを人差し指で押さえてピッキングします。その音が鳴っている間に8フレットに左手中指を落として押さえると続けて音が出せますよね。最初の音が「シ」だったら「シド〜」となります。さらに小指で10フレットも押さえると「シドレ〜」となります。この左手の動きをハンマリングオンと言います。コツは少し指板に叩きつけるようにして左手の指で押さえると音がしっかり出ます。叩きつけるので「ハンマー」と言う訳ですが、ブリブリに歪ませたギターでしたら普通に押さえても音が出ます。当然ながら上昇フレーズにしか使えません。「ハンマリング」「ハンマー」とも呼ばれます。
・プリングオフ
あらかじめ1弦の7フレットを人差し指、8フレットを中指、10フレットを小指で押さえておいてからピッキングで音を出します。音が鳴っている間に小指を離すと今度は8フレットの音になります。さらに中指を離すと7フレットの音になります。初めてやると上手く音が出ないと思いますが、指を離す時に左手指で弦を引っ掛けるように下に引く(プル)と音が出ます。こういう弾き方をプリングオフといって下降フレーズに使います。「プリング」とも呼びます。
・左手だけでも音を出せる
今説明しましたように、プリング・ハンマリングでは右手で弦をはじかずに音を出しますので、ギターを弾くという事は単純に「左手でフレットを押さえ、右手で弦をはじいて音を出す」とは限らない訳です(すみません、そんな事分かってますよね)。従いまして上昇のハンマリング、下降のプリングを合わせて使えば、ピッキングの回数を最小限にして弾くことが可能です。これを聴いてもらえますか。
実は最初に1回ピッキングしただけで、あとは全部左手だけで弾いています。こんな感じで弾いています。hはハンマリングpはプリングの表記です。
左手のコツさえ掴めば実はズルいぐらい(笑)簡単です。前回のサンプル曲3の前半もこの要領で弾いてます。先に言って欲しかった方、申し訳ありません。
・ピッキングならではの効果もある
このように全ての音をピッキングしなくてもフレーズを弾くことができる訳ですが、一方でフルピッキングならではの音色もあります。さっきのフレーズもフルピッキングで弾けばこうです。
若干粗いピッキングですみません。これはこれで迫力がありますよね。結局どう弾くかは各々のギタリストの感性とかスタイルによるという事です。ハンマリング&プリング中心で弾けばレガート(なめらか)になりますし、ピッキング中心で弾けば音の粒がはっきりします。勿論それらを弾きやすいように混ぜるのも有りですし、実際両方組み合わせている場合がほとんどです。
・ふたつのピッキングスタイル
ピッキングには大きく分けて2種類の方法があります。ひとつはオルタネイト・ピッキングといって、ダウン、アップ、ダウン、アップと必ず上下交互に弦を弾くシンプルな方法で説明不要です。もうひとつはエコノミー・ピッキングといい、ちょっと説明が必要です。このスコアをご覧下さい。
これは前回紹介したハーモニックマイナー系の運指です。
「Π」のようなマークがダウンピッキング、「V」がアップピッキングです。3つ目と4つ目の音に注目して欲しいのですがダウンピッキングが続いています。3つ目が4弦、4つ目が3弦ですので、両方ダウンで弾いちゃった方が楽というか早い
のは分かりますか?この「弦が変わる時の効率性」を重視したのがエコノミーピッキングです。まあ音楽で効率性を言うのも変なのですが、速いフレーズや弦移動が激しいフレーズを弾く時には役に立ちます。「でもダウンとアップが不規則だとこんがらかるのでは?」と思う方、慣れれば結構できてしまいます。私もごまかさずに(^^;生音で弾いてみました。こんな感じで音が出れば大丈夫です。
これはオルタネイト・ピッキングだと速く弾きずらいと思います。
・どちらのピッキングスタイルが良いか
ではどちらが良いのかという話ですが、当然一長一短があります。ビートに乗せたフレーズならオルタネイトの方が疾走感、リズム感が出ますし、エコノミーだと広い音域での難しいフレーズが弾きやすくなったりします。大昔は「オルタネイト至上主義」のようなものがあり、私もそう考えていましたが今では頭が固かったと思います。
で、ここからは私個人の無責任な結論ですが「右手・左手どちらを得意と思っているか」で決めたら良いと思います。私はギタリストには右手型・左手型・万能型がいると思っていて、右手型の人はオルタネイトピッキング中心、左手型の人はエコノミー、ハンマリング&プリング多用がハマると思っています。まあごちゃごちゃ書きましたが気持ちの良い方でやって下さい(笑)。
・自分の弾きやすい型を発見する
「実践講座」ですので例題を出してみます。あなたは下記のフレーズでしたら右手をどのようにして弾きますでしょうか。同じ事を2度繰り返すフレーズです。
もちろん正解というのはありません。私でしたら下の「案1」「案2」のどちらかで弾きます。
「案1」は右手がラクで滑らかに弾けますが、これだとちょっと迫力が無いのでピッキングを増やそうとすると「案2」になります。フルピッキングでもいいのですが難しくなるので(笑)、弦が移動する前の音をハンマリングまたはピッキングにしてみました。
これは一例ですが、この右手を意識することが非常に重要と考えます。何も考えなくても感性で弾けている方は素晴らしいのですが、それでも一度どう弾いているかを自己分析してみると自分の癖とか得意な形を発見できるので今後のために有効です。
以上を踏まえて練習イメージをいくつか紹介します。当然ながらメトロノームなどで弾けるスピードから練習して下さい。
1弦だけ使って全てピッキングして弾きます。こういうフレーズは右手と左手をしっかりシンクロさせて弾く練習になると思います。
これも1弦だけを使ってのフルピッキングです。オルタネイトは当然弦が変わらない方が弾きやすいので、左手のポジション移動が速くできればこのようなフレーズが可能です。
ペンタトニックスケール(第1回に解説)を全てオルタネイトでピッキングして弾いています。
1弦と2弦を使ったエコノミーピッキングのフレーズです。第1回の練習曲の発展系のような感じです。
2弦で「ドレミ」をダウン・アップ・ダウンで弾いたあと、1弦で「ファソラソファミファソファミ」をダウンから弾くと最後の音がアップになりますので、2弦でアップから「レドシ」を弾いて1小節完成です。弦が変わるときは常にアップ→アップもしくはダウン→ダウンになる訳です。
No.4と同じく1・2弦を使ったエコノミーピッキングです。速弾きに使いやすいです。
1〜5弦にかけてのエコノミーです。第1回に説明しました1本の弦で3音ずつ弾くスケールです。下降フレーズですのでアップピッキングから始めてエコノミーで弾きます。
ハンマリング・プリング多用型のフレーズです。弦が移動した時だけピッキングをします。レガートが得意なプレイヤーがこういうのをよく使いますね。
ハンマリング・プリング多用型で1弦から6弦までワイドに使った上昇フレーズです。これも第1回で覚えて頂いた1弦あたり3音で弾くスケールです。
今度はハンマリング・プリング多用型で下降フレーズです。ハーモニックマイナー(第2回に解説)を使っています。
大きなスライドです。目的のフレットに上手く左手を滑らせるのが第一。あとは右手を合わせるのがちょっと苦戦するかもしれません。
全部の弦を使ったスライドの入るフレーズです。スケールは第1回で出てきたペンタトニックスケールです。
1・2弦でスライドを使って上がっていくフレーズです。こういうのは使い道が多いと思います。
何かヒントになりましたでしょうか。これらの練習曲のスコア(TAB譜)は一番下の有料部分に貼り付けておきます(そこそこ労力を使ったのですみません•••)。
皆様が今まで弾けなかったものでも、ハンマリング・プリングを入れてみたり、右手のピッキングを整理すればクリアできる場合もありますので工夫しながら是非再トライしてみて下さい。また、これは一番重要なのですが「ここはアップ、ここはダウン、ここはハンマリング」というように1音1音ちゃんと決めて弾くことが上達に繋がると思います。これまで「何となく弾けちゃっているフレーズ」も再度右手を確認してみると実は弾けていなかったり、前述のように自分の得意な弾き方を発見できたりします。もうひとつ、「速く弾けるけどゆっくり弾けない」フレーズは右手を誤魔化している可能性が高いです(笑)。まあギター講座なのでこんな事を言っていますが、どこまで正確性を追求するかもご自身のスタイル次第だと思います。チャーさん(Char)ってめちゃくちゃカッコいいギターを弾きますが、大昔どこかのインタビューで得意技を聞かれて「ごまかし」と答えていたのを覚えています。いいじゃんカッコ良きゃ、って事ですよね。
それではまた。
以下、練習フレーズTAB譜
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