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フリースタイルダンジョンのおかげでお笑いがもっと楽しくなった。

テレビ朝日で毎週火曜深夜に放送されていたフリースタイルダンジョンが先週静かに終わってしまった。

五年前ぼくが社会人の頃から毎週欠かさず視聴し続けていた番組。


NSC時代同期に「先週のフリースタイルダンジョン観た!?」と話すのが楽しみだった。
プロになって芸人の楽屋でみんなと前日見た番組の話と名バトルの話をよくしていた。

静岡の地元に帰る度に夜通し仲良い友人とドライブしながら魅力を語ったりした。

そんな番組が大きな節目とかでなくひっそり終わってしまった…!

本当にショック…!

低迷してる雰囲気も無かったので様々な事情が重なり止むを得ず終了になったのだろうと勝手に推測してる。

この番組のお陰でぼくは人と盛り上がれる話題がが確実に一つ増えて嬉しかった。
結構いろんな芸人仲間や地元の友達とフリースタイルダンジョンの話で盛り上がれるのは本当に楽しい。

あのMCは強い。

あのMCが最近きている。

あのスタイルが最高。

あの音源がいい。

まだまだにわかだけどそんな風にヒップホップやMCバトルの面白さにハマっていった。

無趣味な自分が久々に1つのカルチャーにのめり込んでいく楽しさを味わえた。そんなぼくが初めてヒップホップってかっこいいのかも!と感じたきっかけは何か思い出してみた。


放送開始当時、Twitter等で何人かの友達が「フリースタイルダンジョン」というラップバトルの番組が面白いと呟いていたのをよく目にしていた。しかしヒップホップと言われてもRIP SLYMEやケツメイシぐらいしか聴いたことがなかったぼくからしたらラップバトルなんて超マイナーなカルチャーだと思っていたのであんまり興味は湧かなかった。

ただあまりにも周囲で話題になってたので一応当時YouTubeで公式アーカイブ動画は上がってたので記憶は薄いけど何かの試合を試しに観てみた。

「うーん、人に言っちゃいけない悪口をただ言うだけで何をもって盛り上がってるのかイマイチわからないなぁ………。」

日々げんなりしてたサラリーマン生活を送る中、家で好きな深夜アニメを風呂上がりにアイスを食いながら視聴する時間が死ぬほど愛おしく、平日の会社終わりにぼくの大切な平穏な時間を削って新たなジャンルの番組を開拓するのはエネルギーが要り、他人に影響されて娯楽の選択を強いられてる気もしてこの番組を観るのをすぐ辞めてしまった。


そんな中ある日家に帰ってテレビをつけたらフリースタイルダンジョンがまたたまたま放送されていた。

「ああやってるなぁ。」とボーッと見てたら試合がまだ始まる前。

ただ、前に動画で見た時より演者の風貌が異様だなと思った。

画面にはおよそラッパーぽい服装でなく、おしゃれスーツを着た黒縁メガネの大人しそうな髭の生えたおじさんと、めちゃくちゃガラの悪そうなガタイの大きな外国人のハーフの人が睨み合ってる2人のMCの姿が映し出されていた。

え!何この人たち。

これはフリースタイルダンジョンでもめっちゃ有名な試合。
DOTAMA(ドタマ)VS ACE(エース)戦。

大人しそうなアウトローっぽく無い風貌の人がDOTAMAというラッパーの方。

いかにもヒップホップなワルそうな見た目のブラジル人ハーフの大柄の人がACEというラッパーの方。

見ためだけで言ったらDOTAMAって人どうやって勝つの!?と思ってたら

司会のUZI「さぁいよいよサードバトル!」

このDOTAMAって人もう試合2回勝ってるの!?

ソワソワしてたらバトルが始まりそこからもう衝撃オブ衝撃だった。

「うわACEって人めちゃくちゃ日本語ペラペラなんかい!すっごいきれいに韻踏むな!なんだ!かっこいい!!と思ったらDOTAMAって人声高!!うわこっちの人のが怖いんかい!音消されてるけどこれテレビ的に絶対言っちゃダメなこと言ってる!!あ!今セックスって言った!」

即興で矢継ぎ早に披露されるディスの応酬に脳が追いつかなかった。

それでも素人目に見ても明らかにこの試合が名勝負だと理解し、「どっちが勝つんだ!?」と勝敗の行方が気になりすぎて血眼で観てた。

結果3ラウンドやってギリギリDOTAMAの勝利。

大人しそうな見た目の人が試合開始と同時に豹変して強烈なディスを吐く姿に勝手に「プロ」を感じて興奮が止まらなかった。

ぼくはお笑い芸人でも普段大人しいのに舞台やネタになるとスイッチが入るみたいなプロ意識が垣間見える瞬間みたいなのが昔からたまらない好きポイントなので余計に興奮した。

そして自分が社会人だったからか、無意識に「この社会人のDOTAMAさんも会社とは別の土俵だけどヒップホップが大好きだから頑張ってるんだなぁ」と意味わからん感情移入をしてしまった。

その後敗者のACEが次のダンジョンのボス(ラッパー)にバトンを託す際、「R、殺せよ?」という先輩からR-指定へのアウトロー感満載の激励がかっこよすぎてここで完全にMCバトルに虜になった。なんかこれはすごいかっこいいものなのかもしれない…!と。

もうそれから毎週視聴してた。

ぼくは一度ハマったらとことんハマるタイプなのでそこから同期とかにもおすすめのバトルを教えてもらったり、先輩のネイチャーバーガーの笹本さんなんかはヒップホップにかなり詳しいので今でもかっこいい楽曲とかかっこいいバトルとかを教えてもらっている。

PUNPEEってこんなかっこいいのか…!

これがsummitか…!

icebarnのグッズも買っちゃったよ!

みたいな。


遂にはフリースタイルダンジョンの番組収録の観覧にも応募して行ったり、どの大会なら初心者のぼくでも足を運びやすい大会なのかを調べてMCバトルの大会も自ら観に行ったりした。

馴染めるか不安だったけど数々の凄まじいバトルを目にする度に自然と声と手が上がり自分なりにすごく楽しめた。

なんでこんなMCバトルにハマったんだろうか。

それはどこか本業の「お笑い」に重なる部分があるなと感じたからかもしれない。

MCバトルという自分の想いや、これまでの人生、人間性が1番伝わる言葉を選んで互いにぶつけ合い、そのやり取りを見せることでお客を沸かせるという点では漫才に近しいものを感じる。

というか昔やってたボキャブラ天国に至ってはもう綺麗に韻を踏んで笑いを取ってる。

シーンとしても、売れないアンダーグラウンドな環境から抜けだすために大会にエントリーし、マイク一本で対戦相手をなぎ倒し勝つことでプロップスを上げ、自分の音楽性を広め、より多くの人に受け入れられ1アーティストとしてスターを目指すという点でも、芸人が賞レースで結果を出して徐々にメディア進出して売れていくという大成への道のりが中々に似てる。(全員が必ずしもそういうビジョンではないかもしれないけど。)

ぼくの好きなあるバトルでMCが言ってた「ヒップホップは持たざるものが力を持つ音楽」って表現がすごく好きで、お笑いという分野も強いコンプレックスや逆境こそが大きな笑いを起こす力になるという意味ではすごく芸人のぼくからしたら食らったバースだった。

お世話になってるEXITの兼近さんなんか特にめちゃくちゃそれを体現してるヒップホップな人だということに書いていて気づいた。

お笑いとラップは親和性が高いのかもしれない。

そんなことを感じたらもっともっとこのカルチャーが好きになっちゃうし、ついには若手ラッパーの奮闘ぶりを見ると若手芸人の今の自分を勝手に重ねてしまうようになる。

たまたま生で観戦したどの大会でもぼくより年下の「Authority」というラッパーの方がすごく活躍していて本当に強くてかっこ良かった。

違ってたらすみませんなのだが、おそらく数年前まで無名だったAuthorityというラッパーはUMB2018というお笑いでいうところのM-1ぐらいデカイ年末のMCバトルの大会で決勝にまで上り詰め、一躍名を広めた。この決勝戦を見ると「おれより年下なのに田舎の地元青森で死ぬほど頑張ってきたんだなぁ。」と勝手にバックボーンを想像して勇気をもらい、ぼくは大事なバトルライブの前にこのYouTubeの公式バトル動画を観て勝手に闘志を燃やしながら会場に向かっている。去年末の入替戦ファーセカライブの時も観てた。

ぜひAuthorityでYouTube検索したらすぐ出ると思うので見てほしい。

そんなぼくの生活に良い刺激を与えてくれる楽しいカルチャーの入り口を大衆向けに用意してくれた「フリースタイルダンジョン」は素晴らしい番組でした。

中学の時昨日のめちゃイケ見た!?と同級生と笑った場面を逐一共有し合ったあの時のように、昨日の誰々のあのライミングとフロウやばくなかった!?と興奮し楽しかったやりとりが一個確実に失うのはとても残念。

ぼくにはまだわからないプロレスも、熱狂している上の世代の人たちからしたら当時こんな感じだったのかもしれない。

今ではぼくはトーク番組やコーナーライブ、漫才やコントとかで誰かのボケやツッコミフレーズが決まって爆笑が起こった時勝手に心の中で「パンチラインだ!」と興奮してる。ヒップホップが好きになったらお笑いを見るのもやるのもより楽しくなった。



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