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「現代俳句」2023年8月号

 原因不明の体調不良(下肢の痺れや痛み)に見舞われること早二か月半。なんだかんだで大きな病院を紹介され、予約を取るも二週間後。今すぐどうこうなるわけじゃないならそれで構わないので、気長に付き合っていこうと思います。生粋のチャリダー(ママチャリ)なので、自転車が乗れないことが不便でしょうがない今日この頃です。しれっとバスの運賃値上げしてたし。
 そんな9月になりましたが、8月号の感想を残したいと思います。


列島春秋

散歩道横切って行く秋の蜂  藤田亜未/奈良

 蜂が目の前に現れると、すこし怯んでしまう。散歩中ならなおさら、穏やかな時間に緊張感が走るもの。でも、この蜂は散歩の邪魔をすることなく、ゆらゆらと力なく横切って行く。こちらが怖がっていることに気づきもせず。蜂は雌しか越冬できないと聞きます。この蜂はどちらなんでしょう。そんなふうに思うと、ほんの少しだけ怖くなくなるような気がします。
 生き物との共存はなかなか難しい。


俳句と私

俳句パラレルワールド  佐藤久

 おそらく人気コーナーなのではないかと思っているのですが、いかがでしょうか。少なくともわたしはこのコーナーが好きで、気づけば毎月読むようになりました。今回は佐藤久さん。タイトルにもある「パラレルワールド」に興味を持ったので読みました。
 わたしは常々、自分の句はフィクションであることを公言しています。仮に、実際あったことを句にしていても、俳句にした時点ではもうフィクションなので、実際にあったかどうかは読んでもらった人が想像してくださればよい、と思っています。もちろん、訊かれれば答えますけどね。
 佐藤さんは定年が見え始めた頃、単身赴任先で俳句との関わりが濃くなったようです。俳句をはじめる際に、現代俳句協会(特に各地域の協会)は入口としての役割が必要では、と提言されています。なにごとも「こうあらねば」ということはありません。超結社ならではの在り方のひとつに、俳句をはじめた人にやさしい環境、取り組み、というものがあってもいいと思いました。
 お手元にある方は35頁の上段をご覧ください。俳句に限らず芸術は、独りよがりではいけない、と佐藤さんは書かれています。俳句の場合「読者の存在」が大きく、読み手の解釈によって俳句の幅はさらに広がります。知らない絵画や聴いたことがない曲にはあれこれ言う人も、俳句を前にするとだんまり、なんてことも少なくありません。そういう些細なところから、気軽さや幅広さを少しでも知ってもらえたらいいなぁ、と読みながら思いました。
 しぐるるや駅に西口東口  安住敦
 前書に「田園調布」とあったところで、関西生まれ関西育ちのわたしにはピンときませんが、だからと言ってわたしの読みが間違っているなんてことはきっとないのです。全国津々浦々、時雨の似合う駅の中に西口と東口がある駅はあるでしょう。その駅の風景を「ええなぁ」と思えばそれでよし。田園調布を知る人がよりしっくりくれば、なおよし。佐藤さんのように横浜駅の景色があるもよし。
 わたしは阪急電鉄ユーザーなので「西口/東口」という表記はそもそも見慣れません。風景の解釈が人それぞれになるのは、ある意味必然とも言えます。限られた文字数の中に広がるパラレルワールドは、誰にも止められないのです。もちろん、田園調布駅のノスタルジックでアンティーク調の駅舎が魅力的なのは言うまでもないことなのですが。


翌檜篇(52)青年部編

青蜥蜴  金子泉美

自分との和解目指した十年間
 目指した結果、和解できなかったのでしょうか。案外、自分と和解するのが一番難しい気がします。言い切って終わっているところが、新しいステップに繋がっているのではと思います。和解できたにせよ、できなかったにせよ、十年を振り返る余裕ができたという前向きな姿勢だと解釈しました。

目隠し  高木水志

泣きそうな日々を片付け春の風
 水に流す、という言葉がありますが、片付けることも大事です。「泣きそうな」ということは泣いていないんですよね。必死に堪えたのか、泣いてはいけなかったのか。いずれにせよ、捨てるなり仕舞うなりして片付ける。整理整頓すれば春の風の通り道だってできます。

かそく  蹴衣

幸せを願う責任春埃
 祝いと呪いは同じだ、という話が好きです。だからわたしは誰かのしあわせを願うとき、そこに少しでも自分が関われたらいいと思います。手の届かないところでしあわせになっていてもいいんですけどね。「春埃」という、舞い立つように浮かび上がる存在が「責任」へのとどめを刺しているようで引き締まります。

六月十七日  川嶋ぱんだ

遠泳の未だに誰も 浮いて 来ず
 ホラーです。ホラーでなければ事故です。遠泳はもっぱら海や川、湖など自然の中で行われるもの。ゆえに「浮いて 来ず」の恐ろしさが際立ちます。遠ざかっているような、呼吸が途切れ途切れのような、演出の効いた空白。遠泳と言いつつみんなふざけて潜って遊んでいるのかもしれませんが……いや、それはそれで怒られて欲しい。

 と、いうことで8月号でした。ここ一か月ほど、指先もほんのり痺れている関係で、とにかくキーボードが打ちにくくて困っています。スマホで文字を打ち込むのが苦手なので、頼りはキーボードなのですが、感覚が掴めず……治るか慣れるかすればそのうち抵抗感もなくなると思うので、しばし集中力アップ! と思ってやることとします。
 わたしの気のせいであって欲しいんですが、ページ数が固定になった関係で、ページによってものすごく読みづらい行間になっていることがあり(文字数が多いんだと思います)、目の奥が火を噴いております。おすすめの読み方やコツなどがあれば、こっそり教えてください……(切実)
 それでは最後までお付き合いいただきありがとうございました。また次回。


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