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句具ネプリ 2021冬至 vol.4

 締切のギリギリに滑り込みで投句しました。今回は最多投句数ということもあり、とにかく読みごたえがあって楽しかったです。
 叶うことなら端から、と言いたいところですがさすがに指が攣るので、直感で、最初にピンときたものを書かせていただこうかと思います。僭越ながらというやつです。よろしくどうぞ。

冬の月森の呼び声らしきもの  玲児

 「森の呼び声らしきもの」という存在に惹かれました。動物の鳴き声か、風の音かはわかりません。わからないからこそ「森の呼び声」であり、「らしきもの」でもある。曖昧な存在に名前を付けたくなる、そんな静かな月の夜を想像しました。

太陽系全部浮かべて柚子湯かな  想吉

 柚子を並べて数えていく。「すいきんちかもく……ちってなんだっけ。あ、地球か」なんて言いながら柚子は太陽系になっていく。ぷかぷかと太陽系の浮かぶお風呂で、来年のことを、いや、今日のことを考えてみる。太陽系というおおきな存在から柚子湯というちいさな存在へのフォーカス、と捉えるのがセオリーかと思いますが、「全部浮かべて」という柚子湯の存在感のおおきさ、大切さが身に沁みました。

風花やみんなは上を向けもつと  鷹之朋輩

 はーい。と思わず返事をしたくなる句。寒いとつい下を向いてしまう。そうでなくても上を向くことは容易ではない。「みんなは」と背を押す人はどこの誰なんでしょうか。「もつと」と強く押す力は、無理強いではないピュアなやさしさを感じました。

初恋に傷オリオンはなぞれない  こっぺぱん

 初恋は実らない、なんて言いますが、失恋だけが傷だとは限りませんよね。夜空のオリオンを「なぞれない」と言うほどのことがあったのでしょうか。それとも誰かに初恋の思い出を傷つけられてしまったのでしょうか。感傷的な世界観になぞれずともオリオンが輝いていることが救いです。

ビーボーイおでんダパーリィツーデイズ  押井獅子

 この句を声に出して読んで、「学校へ行こう」を思い出しました。ラップで思いのたけを語るコーナーがあって、おもしろい人がたくさん出ていた記憶があります。ビーボーイがその思い出を引っ張りだしてくれたのか「おでんダパーリィ」の絶妙なダサさがそうさせたのかわかりませんが、こういうのはちょっとダサくてちょうどいいんですよ。おでんすらパーティ。しかもツーデイズ。おでんだからツーデイズですよね。次の日染みてておいしいよね。いや、うまいこと言わんでええねん(関西人)

毒殺のあらましポインセチア咲く  真冬峰

 何事ですか。今はなき火曜サスペンス劇場ですか。と言っても、現実にありますよね、毒殺事件。かなしい話ですが。12月のクリスマスシーズンにそんな殺伐とした話なんて、と思いますが、むしろそういう時期だからこそ切実になってしまう。きっと毒殺が実際にあったかどうかは問題ではなく、その事件の「あらまし」が大事なんですね。ポインセチアの赤が残酷なほど美しい。

 今回はたくさん書けなかったのが心残りですが、年を越す前にぶわーっとお話できてよかったかな。いつも素敵な企画ありがとうございます、という気持ちを込めて締めくくっておきます。

 最後に、投句した句を。日々精進、ですね。がんばろっと。

 この星で生きてく決意冬至の日  相田えぬ

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