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「パーティは明日にして」木田智美

 俳句を知って、句会に参加して、おそらくはじめに受けた衝撃が木田さんの句だったと思います。自分が憧れて、憧れて、それでも手に入れられないものが目の前に現れた、そんな感覚でした。
 句会で何度かお会いしたりお話しすることがあって、なにかのときに「同い年くらいかと思ってました」と言われて、なんかめっちゃうれしかったなぁって今思い出しました。いやあ、相変わらずどうでもいい話が長いっすね。さっさと行きましょう。今日は気に入った句を並べつつ、合間にちょこっとだけ言葉を挟んでいくスタイルで。

ジンジャーの花や発行日は未来
葡萄おもたしたとえば生理一日目
スーパーカブに乗れば敵なし雲の峰
騙しあってきたでしょう月と海ぶどう
重力に負けて海月となってゆく

 ふわふわしているようで、チクっと小さな棘が刺さるような句を並べてみました。大きな衝撃ではないけれど、気づかなかった、あるいは見て見ぬふりしていたことを言い当てられたような気分になります。

おじぎ草こっちはおじぎしない草
ハンカチをひろげてサント・アンヌ号
奇跡的りんご感覚的りんご
五月野やフリーハンドの世界地図
漫才師去る足揃う三十三才

 こっちはかわいい・かっこいい句を集めました。かわいいです。音がかわいい(おじぎ草、りんごの句)もあるし、雰囲気がかわいい(サント・アンヌ号、世界地図の句)もある。漫才師の句は、シンプルに「かっこいいなぁ」と思ったので。

 この句集は、新しいのに懐かしい。ありもしない記憶を呼び起こされるような不思議な感覚に陥る一冊だな、と感じました。ファンタジーの世界のようで、ずっとリアルを歩いている。リアリティはあるのに生々しくないのは、装丁のパステルカラーのようなやわらかな言葉選びだからだと思います。
 以前、木田さんにTwitterを介して直接伝えた言葉があります。木田さんの句は、金平糖やアンティークを見たときのようなドキドキとわくわくがあります、と。木田さんがどう受け取ってくださったかはわかりませんが(お返事では喜んでくださっていて一応に安心した思い出があります。言葉って難しいから……)、出会ったときに感じた「憧れていても、手に入れられないもの」という感覚がそういうキラキラしたイメージと結びついたのかもしれません。

 句集評がたくさんある中で、自分の感想を述べることの恥ずかしさはやっぱりどうしたって消えませんが、今回は、親しい友人に向けて「これ、好きそうやから伝えとくわ!」という気持ちで残します(???)
 これからまたどんな句に出会えるのか、ドキドキわくわく、です。お気に入りの句集が並ぶと、本棚が華やいでうれしいですね。

 それでは今日はこの辺で。

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