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ゆうめいな悪夢/大西 菜生(詩客2023年1月6日号)

 ご縁があってこのたび「詩客」に10句掲載いただきました。ありがとうございます。同じ2023年1月6日号に掲載されている大西さんの句がとてもすてきだったのでいつもの感じで何句か感想をしたためたいと思います。

ひもかがみ苦い呪文をはらわたに

 氷面鏡。池などが凍って鏡のようになっている状態、ということで。正直、はじめて知った季語なので、まずそこに驚いたんですが。氷面鏡がすべてひらがなで表されていることにひゅうっと息を飲む感覚がありました。
 そんな冷たい気配が現れたあと、「苦い呪文」と続くところが不気味な魅力があっていいなぁ、と思いました。その呪文は表に出ることはなく「はらわた」にある。「を」という助詞が、呪文をとどめているのは自分自身であると強く主張しています。
 さて、氷面鏡の下にはなにがあるんでしょう。

なきぞめの部屋でくらくらまもられて

 泣初。これもまたひらがなで書かれていて、やわらかい印象があります。一年のはじめに泣くなんて一年中泣くつもりか、と怒られそうな気がしますが、そんなもん知ったこっちゃありません。泣きたいときに泣けばいいんですよ。でも、やっぱり怒られたのかな。そんなさみしさも薄っすらと感じます。
「くらくら」という言葉が、泣いてくらくらしているようにも、「まもられて」に掛かっているようにも思えて、どこかふわふわとしていて好きです。
「まもられて」いる感覚があることの、さいわい。

ひろうこんぱい こたつふさいでいいからね

 炬燵を塞ぐのを「ふさいでいいからね」と誰かに託す。なんでって、「ひろうこんぱい」だから。まるで寝言のようなまどろみを感じる句。
 春が近づいているからこそ、ごろんと横になっても風邪をひくことはないんでしょうけれど。やわらかな口調はまさにひらがななのです。

 大西さんの作品はこちらからどうぞ。大西さんの句が、ほんのりとした薄暗さ、まどろみとうつつな曖昧な境界線のような作風だったので、とてもすてきな刺激をいただきました。

詩客 2023年1月6日号 ゆうめいな悪夢/大西菜生

http://shiika.sakura.ne.jp/%e6%9c%aa%e5%88%86%e9%a1%9e/2023-01-06-23520.html

 せっかくなので、わたしのページも貼っておきます。今まで自分の句で「気に入った」と思う句って、まあ、なかったんですけど(思い入れがある句はあります)、今回はじめて10句も気に入った句を選ぶことができて、自分でもとてもびっくりしています。気に入っているというか、正確に言うと「わたしっぽい」と感じる句ですかね。句会で作った句が半分ほどあるので、句会での学びをひしひしと実感する今日この頃です。
 タイトル通り「いたずら」な景ばかり集めました。わたしは「悪戯」も「徒」もどっちも好きなので、のんきな光景をお楽しみいただければと思います。

詩客 2023年1月6日号 いたずらに/相田えぬ

 こうして発表の場をいただけたご縁に感謝しながら、今後もわたしの「好き」をていねいに形にできるように、日々精進していきたいと思います。
 それでは最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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