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「現代俳句」2021年6月号

 新しい部署で勤務し始めて二週間が過ぎました。すっかり馴染んだ、というかそもそも違和感を誰も抱いていない様子だったので、わたしもとりわけ居心地の悪さも感じず(むしろ前からいた? くらいの気持ちで)ふてぶてしく仕事をしております。前の部署の先輩に「次のところは一日中静かだから心配だなぁ」と言われたのですが、わたしは雑談が得意ではないので(話しかけられたら話すけど自分から話をはじめないタイプ)話しかけられない=仕事が捗るという感じで、機嫌よくやっています。作業量は前月比で3倍くらいですが問題ないです。

 わたしの近況はさておき、今月も読んでいきます。もっといろんな句に触れたほうがいいんだろうか、と思いますがいまだに探り探りです。半年たっても探り探りって、これはもう答えが出ないんじゃないかしら。どないしましょ。

列島春秋

五月雨のころに会いたくなる女  武馬久仁裕/岐阜県
 どんな女や……! 不意に「戸津川警部シリーズ」とか「終着駅シリーズ」とか浮かんできちゃった。火曜サスペンス劇場って懐かしいっすね。五月雨で思い出すだけでなく「会いたくなる」というのがいいですね。魅惑的なのか、思い出深いのか。もう会えないのかもしれない、と思えば思うほど……なかなか底知れない魅力を感じます。

風薫る阪急御影駅ベンチ  川崎奈美/兵庫県
 これはわたしの独断と偏見ですが「阪急電車は俳句」という感覚があります。語弊オブザイヤーを受賞しそうな勢いで恐縮です。阪急電車に限らず、電車って俳句的というか、抒情的というか、風情というか。伝わります? 「車窓」にはじまり、「乗客」「車掌/運転手」「ドア」「駅のホーム」「改札」という、ドラマ要素てんこ盛りの場所だと思うんですね。日常に当たり前にある存在だからこそなんですけど、バス停とはちょっと違うんですよね。これはわたしの感覚なので異論はもちろんあると思いますが、どうにも「電車」への魅力が尽きない。
 そんな中の「阪急御影駅」です。御影って特急が停まらない駅なんですよね。通勤急行は停まるけど。だから、どこか長閑というか、住宅街の駅というかね。しかもなかなかいい立地なので、治安もいいし(笑)そんなところなので「風薫る」は言い過ぎじゃないし、そういうさわやかな気持ちになれる場所だな、って共感がありました。

協会からの提言

 日進月歩。現代俳句協会もいろんなことに取り組んでいます。わたしはほぼほぼ遅れを取っていますが、それでもまあなんとか、会員としての活動、というものを考える日々です(そういえば全国大会の申込書が巻末についてましたね。締切はまだ先だけど、そろそろ作ろ……)
 黒字化委員会を解散して事業推進委員会が設けられたとのことで、

 目的は会員が「誰でもどこでも協会事業に参加」できて楽しめる体質の協会に変身する為です。

 とありました。これは、(正しい言い方かはわかりませんが)地域と東京が分断されない仕組みづくりでもあるのかな、と思います。わたしだって関西という「地方」に住んでいます。やっぱり東京とは違うし、違っていていいと思います。でも、それが全体に浸透しているかと言えば否で、お互いがなにをしているか知らなくても活動できるのも事実なので、一概には言えないのでこの辺は割愛しますが。
 ネット句会や経費の縮小がポイントとして挙げられていましたが、やっぱりネットってすごいんですよね。初期費用には多少お金が必要ですけど、維持費はそれほどかからないですもんね。交通費いらんし、雨の日でも関係ないし。直前まで寝ててもバレないし(そんなことねぇよ)そりゃあわたしも対面句会したいけど、できない中でなにをするか、って考えるのがやっぱり健全だなってこの一年で思いました。今までを踏襲する時代は、ある意味で終わったんだな、って。すべてを一新するという意味ではないですよ。
 で、「地区協会長インタビュー」がはじまったそうなので、トップバッターの埼玉県版のURLを貼っておきます。知らんかったよ~~~~という気持ちを抑えつつ(それはわたしが無精なだけ)、ひとまずチャンネル登録から。会誌に二次元バーコードがあるとうれしいかな、わたしは。わたしはね!(無精だからね)

翌檜篇(30)
東海地区 現代俳句協会青年部 選

 今月も引き続き東海地区のみなさんです。ということで早速好きな句の感想を書いていきます。


この道  岸快晴

パトカーから身を乗り出して春の雨
 ただの車じゃないんですね。パトカーなんですね。警察官が運転してて、「あれ? 雨?」ってこう、窓から身を乗り出す。そこをパシャリ。いや、写真撮ったわけじゃないけど、こう、切り取るわけですね。もしかしたら警察官じゃないかもしれないですけど、じゃなかったらいろいろややこしいので警察官にしておきます。暇なんかな。警察官は暇なほうがいいって言うから、のほほんと春の雨を感じていて欲しいですね。

三振のバットの重き春夕焼
 あかんかったか~~~~! 振ってもうたか~~~! 三振のあと、ベンチに向かうバッターのバットの重さたるや。夕焼けが哀愁を誘っています。いや~~~あかんかったか~~~~~!


鉄塔の旅  竹中健人

フェラーリのエンジンに風光りけり
 車の知識がさっぱりないので、はじめは「エンジンって見えんくない?」と思ったんですが、フェラーリほどの高級スポーツカーだと「エンジン」は、なんていうかこう、メインなんですね。だからエンジンに意識が向くのは、不思議なことじゃないわけで。じゃあ「風光る」かもしれん、と納得しました。風光るってすごく、わくわくドキドキしますよね。そういう季語ですけど。だから、この句は新車かヴィンテージかはわかりませんが、フェラーリ愛の句なのかな、と思いました。それにしてもフェラーリかっこいいな!?(検索した感想しょぼすぎん?)

窓に煤天道虫に空がある
 すっきりと清々しい光景が好きです。フェラーリ愛にも垣間見たロマンを「空がある」にも感じました。窓に煤があるという光景も、どこか日本っぽくないというか、いや、完全にフェラーリに引っ張られてるけど、異国情緒というか、そういうのもあっていいな、と思いました。


ラッキーカラー  菊山千月

寒明けやレシピ通りのパンチェッタ
 パンチェッタってジローラモ氏かと思ったけど、そんなわけない。レシピ通りのジローラモ氏ってなんだ。料理名やろどう見ても。ということで、知らなかったので調べました。「豚バラブロック肉を塩漬けにし、乾燥・熟成させて作る」らしい。豚バラのブロック肉を塩漬け……イタリアか!(そうだよ)
 寒さも和らいできたし、手の込んだ料理でも作ろうかと思い立つ。そうね。「レシピ通りの」がどうにも皮肉めいてるのは気のせいなんだろうか。「やっぱりレシピ通りがおいしいよね」なのか「レシピ通りのつまらない料理だな」なのかでかなり意味が違いますけど、もしかしたらただの説明かもしれん。「レシピ通りにつくったパンチェッタがここにあります」というだけの。まだ肌寒いな、うん。

寄居虫がぎこちなく貝脱ぐ朝は
 やどかりって飽きっぽいところがあって、次の貝が見つかってなくても脱ぐことがあるみたいですね。いや、無防備すぎるやろ。でも、引っ越しするときのやどかりって、きっと「飽ーきた!」ポーイ! って感じだと思うんですけど、このやどかりは「ぎこちなく」脱ぐわけです。本当は引っ越す気がなくなってしまったのか? それとも脱ぎにくくなっちゃったのか? そんなやどかりの不穏なような、不器用なような雰囲気が「朝」に刺激をくれている気がしていいなぁ、と思います。


底力  八木茂都子

強がつてばかりや椿真つ赤なり
 椿はいろんな感情を呼び起こします。不思議な花だな、と思います。散る潔さ、情熱的な色合い、冬の静けさなどなど、その景色はどこをとっても美しい。「強がつてばかり」なのは椿ではなく句の中の人物(と思しき存在)なのでしょうけれども、もしかすると椿の赤も同じなのかもしれませんね。意志の強さは美しさでもある。タイトルの「底力」にも呼応する句ですね。

つくしんぼ誰にでもある底力
 ダイレクトに「底力」が出てきました。思わず「そうっすね!」と頷きました。そうだといいな、と思います。そうであって欲しい、とも思います。つくしを見ることが減りました。きっとどこかで元気に立っていることだと思います。わたしの見ている景色にいなくても、確かにいる。それもまた「底力」なんだとわたしは思います。

 はい。というわけで、今月はこんな感じでお送りしました。感想を書き始めて半年になりますが、あまり代わり映えがないことにじわじわと焦りを感じています。同時に、自分の興味や関心がわかりやすくて、これもこれでいいかな、と思います。まったく読んでなかった頃(コラ)を思えば、かなりの成長かな、と自分を甘やかしつつ、最後までお付き合いいただきありがとうございました。また次回!

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