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ナイロン100℃ 45th Session「百年の秘密」@本多劇場

を見た。

ナイロンの公演は割と頻繁に見に行っている。大倉孝二さんが大好きだ。

ナイロン100℃創設25周年を記念しての公演。これは再演。

私が見たナイロンの再演の記憶は「消失」「わが闇」なのだけど、どちらも強くショックを受けた作品で、初演も再演も見ている。でもこの「百年の秘密」は見ていなかった。なんでかは記憶していないけれど、初演が震災の後だったということをパンフレットから察するに、演劇から心が離れていた時期だったのかもしれない(実際あった)

語り手が進める方式と時間軸が前後する進行、庭と家の中を同じステージに組む演出、そして何より12歳から78歳までの役を一人で演じるのが犬山さんと峯村さん。すごい。語彙力ないからすごいとしか言えない。本当に子供だし、老婆だし。

作品は世代を超えた一家の流れを描いていて、決して幸せな流れではない。結末も円満にハッピーエンドではない。バッドでもないけど。切ないし、時に道を誤るし、それが全てを狂わせるし。それは本当に子供の些細な出来心で。そういうことってきっと誰にでもあると思う。私にだって墓場までもっていくつもりの出来事はある。色々なことがフラッシュバックして、泣かずにはいられなかった。

作品を通して楡の大樹が中心になるのだが、これが学生時代に見た遊◎機械全自動シアターの「食卓の木の下で」という作品を思い出した。衝撃を受けて、大した小遣いもないのにサイン入りの戯曲を買ったことを。大樹を通して家族模様が描かれているというのは共通していて、それ以外は似通った内容ではないけれども(記憶が曖昧だけどたぶん)

贔屓目もあるけど大倉さんのエースが本当によかった。よかった、って言葉でいいのかな。私の心には激しく残った。父親にひたすら溺愛されてその期待に応えるストレスからか、窃盗癖がついてしまうエース。父親は自分の真実を見ようとせず、理想ばかり押し付けてくる。妹もとても素晴らしいのに、見向きもせず。いつまで経っても自分の本当の姿を見てくれようとはしない。…ストレスを感じる要因は違えど、自分にずぶずぶ刺さる。自分を見ているようでむせび泣きそうだった。今思い出すだけでも泣けてくる。思い出したくなくて、でも現実なので受け止めなきゃいけないという辛さで。

「消失」も「わが闇」も、家族が描かれていた。「百年の秘密」もある意味家族。人間模様。私は家族というものに負い目を感じているのか、憧れているのか、良くも悪くも家族が描かれた作品が好きだ。崩壊する家族も、やり直す家族も。ナイロンの作品はそういうものが多面的にあるので、どうしても見たくなってしまう。

もう一度見たいけれど機会が作れなさそう。別用で散財してしまった…無念。

客演として出ていた萩原聖人さん、すごくダメな感じの男が似合いすぎてて、心中なのか事故なのかわからないまま死んでしまうのもなんだかしっくりきてしまった。

初舞台の泉澤祐希くんも初々しかったけど堂々としてた。綺麗な顔だった…。

伊藤梨沙子ちゃんかわいかったし、山西惇さんも知的な感じなのに流されやすそうなダメ感、違和感なくて(⁉)とても良かった。どこを見ても作品の世界がそのまま現実のようだった。地獄みも含めて。


そういえば初めてナイロンの作品を見たのは「男性が好きなスポーツ」で、セックスをテーマに描いたものだった。ナイロン100℃という劇団の作品が見たかったわけではなく、当時好きだったジョビジョバの長谷川朝晴さんが客演で出ていたというだけでとったチケットだった。来場者にコンドームが配られるというなかなかショッキングな初体験だった。劇団25周年本の中で「札幌公演では休憩後に観客が半減していた」というエピソードがあって吹いた。これが初めてのナイロンで今に至るんだから、不思議なものですね。

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