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【食品安全委員会】食品の安全性の確保のための研究・調査の推進の方向性

【食品安全委員会】食品の安全性の確保のための研究・調査の推進の方向性(本文3,045文字)
 
食品安全委員会は、令和6年6月25日に第944回食品安全委員会を開催し、「食品の安全性確保のための研究・調査の推進の方向性(ロードマップ)」の改正(案)について議題提出しました。
改正内容は、科学技術や国際化の進展、国民の食生活の変化に対応した研究・調査の推進です。このロードマップ(案)は、食品安全委員会の研究・調査事業等への応募を検討している方、また、食品安全に関心のある方々に役立つ情報となっています。
 
<概要>

概略イメージ:「食品の安全性の確保のための研究・調査の推進の方向性」(ロードマップ)の概要 令和6年6月25日改正
https://www.fsc.go.jp/chousa/roadmap.data/2_kitei_r6_roadmap_13.png

■食品安全委員会が行う研究事業・調査事業の位置づけと展望
新興ハザードへの対応と効率化のため、研究・調査事業を推進する。リスク評価の精緻化、新たな評価指標の導入、データ不足状況での合理的な評価などを目指す。委員会は、独立性と独自研究機関の不在を踏まえ、新たな評価手法の活用や関係機関への働きかけを通して、レギュラトリーサイエンスの発展とリスク評価の進化に貢献する。今後5年間は、個別のリスク評価と俯瞰的・包括的な研究・調査を前半に実施し、後半は重点分野に絞って研究・調査を進める。
 
■食品健康影響評価を取りまく現状と課題
食品健康影響評価はコーデックス作業原則に基づき、危害要因特定、危害要因判定、ばく露評価、リスク判定の4段階で実施される。リスク評価に加え、リスク管理とリスクコミュニケーションの要素も重要である。我が国では、食品安全委員会と関係省庁が連携し、食品安全性の確保に取り組んでいる。現状と課題は以下の5つに整理される。
(1)危害要因特定(Hazard identification)に関する現状と課題
(2)危害要因判定(Hazard characterization)に関する現状と課題
(3)ばく露評価(Exposure assessment)に関する現状と課題
(4)リスク判定(Risk characterization)及び周辺領域の現状と課題
(5)リスクコミュニケーションに関する現状と課題
 
■研究・調査の方向性
本研究は、食品安全確保のためのリスク評価の高度化を目指し、3つの柱に基づいて研究・調査を実施する。
(1)新興及び既存のハザードのリスクの評価に向けた特性評価・ばく露に関する科学的知見の集積

①RNA農薬等の新たな農薬、食用に供する動物用の革新的ワクチン、食品添加物等の製造時に活用されるゲノム編集技術、ナノテクノロジー、細胞培養技術を用いて製造された食品(いわゆる「培養肉」)や遺伝子組換え微生物を利用した代替たんぱく質製造等の、最先端の科学技術の応用に対応したリスク評価及びばく露評価に必要な情報の収集・分析を行うための研究・調査
②食品の開発・生産・加工工程及び食品用器具・容器包装の原材料のリスク評価並びにばく露評価に必要な情報の収集・分析を行うための研究・調査
③昆虫食等の、従来から食経験があった上で今後流通量が増えることが見込まれる食品原材料について、リスク評価及びばく露評価に必要な情報の収集・分析を行うための研究・調査

https://www.fsc.go.jp/chousa/roadmap.data/kitei_r6_roadmap.pdf

(2)健康影響発現メカニズムを踏まえた新たな評価系の構築

①微生物及び化学物質のリスク評価に当たり、知見が不足している健康影響発現メカニズム等についての研究・調査
②我が国に特有な食生活に由来するハザードによる健康影響発現メカニズムの解明につながる研究・調査
③通常無害とされる食品の摂取により健康影響が発現する集団について、その発症メカニズム等に関する研究・調査
④ヒトの健康影響に実験動物の毒性所見を外挿する際の妥当性の検証に資する研究・調査
⑤既存のデータ等の活用による新たなリスク評価方法の確立及びリスク評価への実装に資する研究・調査
⑥従来の一般的な毒性学では評価されていない健康指標への影響(免疫応答や腸内細菌叢への影響等)についての情報・知見の収集及びリスク評価手法の検討につながる研究・調査
⑦多様なリスク評価手法の総括整理と各手法の特徴の明確化やNAMs(in silico、リードアクロス法等を含む)の活用・開発・普及につながる研究・調査

https://www.fsc.go.jp/chousa/roadmap.data/kitei_r6_roadmap.pdf

(3)食品健康影響評価の発展を支える連携及び基盤の整備
各柱は、リスク評価の縦糸、横糸、周辺領域を体系的に支える。

①先行しているホライゾンスキャニングの取組に関連して、評価対象とすべきハザードを探知するための基盤の整備につながる研究・調査
②DX、AIを用いた既存のデータ等の活用による新たなリスク評価方法の確立及び食品健康影響評価の高度化・効率化に資するための研究・調査
③リスク管理機関・研究機関との連携(データの共有を含む。)を深化させるためのリソースマッピング等の研究・調査
④食品安全を支える人材の育成・強化につながる研究・調査(他省庁との連携を含む。)
⑤食品安全の国際的な連携や調和、貢献を深めることにつながる研究・調査
⑥リスク評価の方法及び結果に関する国民の理解の深化と信頼醸成に資するためのリスクコミュニケーションに関する研究・調査
⑦(個別のみならず複数の領域にまたがる)ハザードのばく露量推定の精緻化や、バイオマーカーを用いたばく露量推定手法等による新たなばく露評価手法の開発のための研究・調査
⑧食品における(個別のみならず複数の領域にまたがる)ハザード含有量及び調理加工による食品中のハザード含有量の変化に関するデータベースの作成・充実に関する研究・調査
⑨微生物の食品中での定量的汚染状況の把握、食中毒の疫学データの活用による発症菌数の推計に資する研究・調査

https://www.fsc.go.jp/chousa/roadmap.data/kitei_r6_roadmap.pdf

■研究事業・調査事業の実施
食品健康影響評価技術研究と食品安全確保総合調査を実施し、リスク評価に必要な科学的知見の集積、健康影響発現メカニズムの解明、新たなリスク評価方法の確立を目指す。研究課題・調査課題は、短期的・中長期的な活用を視野に入れ、効果的・効率的に選定する。また、国内外の研究機関との情報交換や連携を密に行い、研究体制の充実を図る。
(1)研究・調査の課題について
食品安全委員会は、科学的知見に基づくリスク評価の実現に向け、研究・調査課題を毎年選定し、公募等を実施。国内外の研究機関と連携しつつ、効率的な研究・調査を推進していく。
(2)研究・調査の体制について
食品健康影響評価の研究体制では、専門家育成を考慮した体制で実施し、若手研究者の研究課題も採択する。調査は、民間調査会社に加え、大学等も主体として検討する。
 
■研究事業・調査事業の評価
(1)研究課題・調査課題の評価
研究課題・調査課題について、以下の指針に基づき事前、中間、事後評価を実施する。
・ 研究課題:食品安全委員会食品健康影響評価技術研究の評価に関する指針
・ 調査課題:食品安全委員会食品安全確保総合調査の評価に関する指針
評価結果は、研究・調査企画会議の各部会で審議される。さらに、実施した研究・調査の成果がリスク評価に活用されているか、追跡評価を実施する。
(2)研究事業・調査事業のプログラム評価
研究・調査事業全体の目標達成度や副次的成果などを評価し、事業改善とロードマップ改正に役立てる。
 
■研究・調査の成果の活用
研究・調査の成果は、リスク評価の各段階で活用し、関係府省と共有する。また、ホームページ公開、成果発表会、ガイドライン作成等を通じて、広く国民・専門家に周知・活用を推進。広く購読されている査読付き学術誌等での公表も奨励する。
 
 
 
<一次情報>
ロードマップ:食品の安全性の確保のための研究・調査の推進の方向性
https://www.fsc.go.jp/chousa/roadmap.html
 
<関連資料>
食品の安全性の確保のための研究・調査の推進の方向性(ロードマップ)(令和 6 年 6 月 25 日 改正)
https://www.fsc.go.jp/chousa/roadmap.data/kitei_r6_roadmap.pdf
新旧形式
https://www.fsc.go.jp/chousa/roadmap.data/kitei_r6_roadmap_shinkyu.pdf
第944回 食品安全委員会
https://www.fsc.go.jp/fsciis/meetingMaterial/show/kai20240625fsc
 

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