老化を『劣化』と呼んではいけないただひとつの理由
それは、
今現在老化しながら生きている自分自身を、
否定することにつながるからです。
若い人は、
『私は成長しているのであって、老化はまだしていない』
と思うかもしれません。
しかし、人間の死亡率は100%です。
老化率も100%です。
毎日、誰もが、少しずつ、
死ぬ日に近づいている。
これは誰にも止められません。
ここ10年くらいで、歳をとって見た目が変化することを『劣化』と表現する人が現れ始めました。ちょうどインターネットでビジュアルが以前より重視され、「人は見た目が100%」みたいなフレーズをよく見かけるようになった頃です。
昔はそういう言い方はしていなかったと思います。少なくとも、私は見聞きしていませんでした。
ある日、高校時代に好きだったビジュアル系バンドを思い出し、
「あの人どうしてるかなあ」
と何気なくググったら、
『あのバンドの◯◯、
見た目が劣化しすぎ!』
という記事が……実際は劣化どころか、年齢とともに男の魅力が増して、舞台やドラマに出演して大活躍してるんですよ。
「まあ!!誰が私の◯◯様にこんな暴言を!
処刑よ!処刑なさい!」
と、
脳内お嬢様が叫んでしまいますよ。
(お嬢様が出てくる小説を書いていたせいです。詳しくは『小説家になろう』で探して下さい)
あとは、昔派遣で行ってた職場で、
定年後に再雇用された年配の職員を、
『リサイクル』呼ばわりしていたおっさん。
たぶん40代だと思われますが、自分が歳をとったとき(たった20年後)のことを少しは想像できないのかと、呆れるとともに不可解に思ったものです。
あとは、みなさんご存じの、
女性がよくやるアンチエイジング。
なぜみんな、
そんなにお年寄り(この言葉もあまり使いたくないのですが)を嫌悪するのか、
なぜそんなに見た目の老化を恐れるのか。
現実逃避なんでしょうね。
「自分もいずれ歳を取って死ぬ」
そのことをみんな考えたくないのでしょうね。
世の中にはまだまだ、
『若さこそが素晴らしい』
という価値観がはびこっているし、
ネットにも新聞の広告にも、
遠回しにアンチエイジングをうたう商品が、
やたらに出たりする(非常にうざい)
ファッション雑誌には、
不自然なほどつるつるな白肌の40代や50代。
いつか、有名な美容家の方が使っているクリームを紹介していましたが、
値段が三万円。
ほかにも美容液やらなんやらたくさん使っていまして、総額たぶん10万では全然足りないくらい。
私はその記事を見て、
『なるほど、これが雑誌の美女の秘密か』
と、元々なかったコスメへの興味がますます失せてしまいました。
見た目だけ若くしても、
若返るわけではありません。
年齢をいくら隠しても話している内容や使用する語彙でなんとなくバレます。
身分証明書を見れば一発です。
「見た目が老化するとモテなくなる(または『愛されなくなる』)のが怖い」
という話を聞くたびに不思議なのですが、
あなた、若い頃はそんなにモテてました?
若い頃は愛されてました?
意地悪なようだけど、冷静に思い出してみてください。確かに「若い子」扱いで親切にしてもらった経験はみんなあると思いますが、『モテる』『愛される』は、全く次元が違う『人間関係の問題』ですよね?
いくら若くて美人(イケメン)でも、異性と接したり話したりする努力をしなければまずモテませんよね。ネットのフォロワー数は自撮りで伸ばせるかもしれませんが。
若さにあまり夢を見ないほうがよい。
と、私は思いますがどうですか。
前に、
「年齢がわかるから、女性に好きなアーティストの名前を聞いてはいけない」
と言われ、さすがに、
「そりゃねえよ。女は好きな音楽の話もできんのか?」
と思ってしまった。
ちなみに、私が若い頃聴いていたバンドは、
グレープバインと言いますが、
年齢わかります?……うふ、うふふ(笑)
年齢を偽るのが良くないと思う理由がまさにそこにあります。
今まで生きた数十年の、体験、出会った人々や音楽、芸術、学んだこと。
それは、歳を重ねたからこそ得られたもの。
自分の年齢を否定することは、
自分の人生を否定するのと同じ。
世の中が女性(男性もある意味で)に、
不自然なほどの若い見た目を求めるなら、
それは世の中のほうが間違っています。
最近は高齢者向けの雑誌が増えたり、
年齢が高くても元気な方々が特集されたりして、意識は変わりつつあるように見えます。
とりあえず、『劣化』って言葉、
人に向かって使うの、やめませんか?
自分が将来そう言われないためにも。
なんだか上手くまとまらなかったので、
年齢についてはいつかまた再考したいです。
今はとりあえず、画家の堀文子さんの言葉を引用して終わります。
『この先、どんなことに驚き熱中するのか。私のなかの未知の何かが芽を吹くかもしれないと、これからの初体験に期待がわく。私にはもう、老年に甘えている時間はないのだ』(『堀文子の言葉 ひとりで生きる』より)
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