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(小説)岩本と住職、大木で妖魔に会う

「またあの木?」


俺は今日機嫌が悪い。
岩保のところでロボットとケンカしながら最新型のMacを触りまくる予定だった。
しかし、バイト先の寺には変な客が来て対応に追われ、
帰りは季節外れの寒波。道は真っ白で超滑る。
やっと自分の部屋でゲームやれると思ったら、また住職からLINEで呼び出された。しかも、

『公園の木にまた何かがとりついた』

だぞ。気温も文章も寒いったらない。

「あの木って何なの?妖怪が好きな匂いでも発してんの?」
俺は歩きながら文句を言った。『あの木』は俺たちの間では『やばい奴が出る』定番スポットになっている。
つまり、何度も出た。
ユーレイとか怪物とか、その他いろいろ。
しかも何回も。
「木が原因じゃない。よってくる奴らの性根の問題だ。前にも説明しただろう」
住職が、坊主らしからぬ派手な黄色のダウンジャケットを着て俺を睨んでる。
そうそう、前にも何回も同じ会話してるよな。悪かったな。たしか、

『北海道に歴史がないと思っている奴が未だにいるが、それは『日本史』に記載されていないというだけの話だ。先住民の長い歴史がある。それに、人間の歴史なんてたかだかごく最近の出来事だろう。原生林の歴史は遥かに長い。俺たちなんぞには想像もできない何かがある』

みたいな、まさにお寺の説教みたいなやつ。
まあ、住職は実際に寺のあとを継いだんだから、実際に説教はしてるし、ありがたく聞きにくる信者もたくさんいる。
ちなみに住職の本名は四道という。大学の同級生で、実家が寺。

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