誰がために働く-映画『ラストマイル』感想 -
※以下、映画『ラストマイル』の若干のネタバレを含みます。ご注意ください。
スクリーンが暗転して、エンドロールと共にこの曲が流れ始めた時、冒頭の歌詞に強い違和感を覚えた。というより、すぐには歌詞の意味がわからなくて、頭に「?」が浮かんだ。
ふつう、「失くしても壊しても奪われたとしても」と逆接がきたら、「失われないものがあった」とか「消えないものがあった」とか、そういうポジディブな歌詞が続くだろう。実際、予告を通してなんとなく聞いていた時は、そんな風なことを歌っているんだろうと勝手に思っていた。
でもきちんと聴いてみると全然違う。「消えないものはどこにもなかった」のだ。「消えないものはどこにもない」という二重否定が意味するのは、「消えるものしかない」という当たり前の事実だ。失くして、壊して(壊されて)、奪われれば、全てが消えうるのだ。 何事にも侵さない神秘があるなんて、何人にも奪われない尊厳があるなんて、そんなのは空虚な思い違いに過ぎなかった。「がらくた」という曲はそう歌っている。
では、『ラストマイル』において、「あなた」を壊し、人としての尊厳を奪ったものはなにか。
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『星の王子さま』で世界中の老若男女に広く知られるサン=テグジュペリのもう一つの代表作に、『夜間飛行』という作品がある。
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