見出し画像

仮想通貨担保ローンを使って合成先物を作るとBTCのHODLより儲かりそうな件

Fintertech CMOの川浪です。
「デジタルアセット担保ローン」の営業を開始してから、仮想通貨(暗号資産)トレーディングを行っている方ともお話をする機会が増えましたが、暗号資産の投資方法にバリエーションがもう少しあったほうが良いと元エクイティトレーダーとして感じています。
今回は暗号資産保有者の皆様の投資戦略のご参考として、弊社の「デジタルアセット担保ローン」を使った暗号資産の投資戦略について書かせていただきます。個人で行う投資でも、投資ストラテジーを複数選択できるということはパフォーマンスの安定につながり、引いては長く投資経験を積むことにつながりますので非常に重要かと思います。

弊社サービスの詳細についてはこちらをご参照ください。

※本記事は投資勧誘を目的としておりません。また、暗号資産オプションも特定の取引所の利用を推奨するものではありません。純粋な投資手法紹介としてお楽しみください。

ビットコイン合成先物を使った投資戦略

これから説明する投資戦略は「インプライドボラティリティのSkew(歪み)が大きいことを活かし、プットの売りと暗号資産担保ローンの併用によって現物BTC保有と同じデルタでプレミアム売却益の獲得を狙う方法」です。詳しくは以下に説明していきます。

合成先物を作る

海外の暗号資産取引所では以下画像のようにオプション取引が可能です。

画像1

ご存じの方はご存知だと思いますが、プットオプションの売りとコールオプションの買いを同じストライクプライスで行うことにより合成先物(Synthetic Future)を作ることができます。ビットコインの値動きで先物と同じように損益が発生します。先物と異なる点はオプションプレミアムの支払い・受け取りによるトレーディングコストです。
オプションの取引では、買い手がプレミアムを払い、売り手がプレミアムを受け取ります。具体的には、合成先物をロングすると、コールオプションの買いでプレミアムを払い、プットオプションの売りでプレミアムを貰うこととなります。このプレミアムを活用すると先物を購入するよりもトレーディングコストが下がることがあります。ただし、トレードするものが二つに分かれるので、短期で売買するには不向きです。

暗号資産担保ローンは「ノックアウト型コールオプションの買い」 これをコールオプションとして代用する

暗号資産担保ローンは返済期日に借入金額+利息を返済することでビットコインを受け取ることができるサービスとなっており、これは実質的には「ノックアウト型コールオプションの買い」と同様の効果が期待できます。
ノックアウト(ストライク)価格は現値の約半額とかなり深い位置ですので、これを合成先物のコールオプションとして代用します。
ローン契約は1年契約(全額の早期弁済はいつでも可能)ですので、限月は1年後とします。ローン契約なのでプレミアムを支払う必要はありません。ただし、4.0~8.0%の金利(年)を支払う必要があります。
ローン会社による担保売却基準は各社とも非開示ですが、売却によってローン債務を弁済する必要があることから、担保率50%よりは上に設定されます。ここでは仮で60%の価格をストライクプライスとしましょう。(注1)

コール側に合わせて、プット側を見ていきましょう。
ここで必要になるのは限月が1年にできるだけ近い、ストライクが6000ドルのプットオプションです。調べた取引所では2021年3月限が最長でしたので、一旦はこちらを使いましょう。
コールオプション側が1年契約なので、限月を合わせるために、3月になったら再度、7月までのプットを売り直すことが必要になります。

画像2

プットの価格(mid)は(2020/7/20)で0.068BTC、USDで643.93ドルになります。
つまり、2021年3月に1BTCを6000ドルで売る権利を643.93ドルで売却することになります。
これがプレミアムとして貰えるわけです。さらに、3月に再度プットの売りを行いますので、そこでもプレミアムが貰えます。(3月の時点でのプレミアムはいくらになるかは価格の変動次第ですが、現状では5か月先のもので380ドル程度もらえるので、少なく見積もっても250ドルはもらえそうです。どんぶり勘定ですが、250ドル貰えるとして計算してみます。)
643.93ドルと250ドルを足して、893.93ドルの受け取りが可能です。

損益計算してみる

実際の暗号資産担保ローンの利率と上記の893.93ドルを比較して、収益計算をしてみましょう。

「デジタルアセット担保ローン」は最低融資額が1000万円ですので、ここを利用額とします。金利は6.0%と仮定します。
必要な担保数量は20.24BTC(BTC価格:988,351円 2020/7/20)です。
1年後に支払う金利は日本円で60万円です。
ローン金額と合わせて、1060万円を1年後に返済する予定です。

プットオプションを20.24BTC分売却します。
1BTCあたり、893.93ドルのプレミアムが貰えますので、20.24BTCで18093ドルの売却益になります。
執筆現在1ドル=107.29円ですので、日本円換算で194万1213円です。

1年後のローン返済を済ませても134万1213円の収益が生まれます。
借りた1000万で1年定期預金を組めば、微々たる額ですがもう少しパフォーマンスは改善しそうです。
価格変動に対する収益は単純にBTCを保有することと同じながら、追加で134万円の収益が期待できるため、有効な投資手法と言えそうです。オプション価格自体がかなり価格変動のあるものですので、高いところを狙って売れば更に収益が期待できます。

注意事項

各取引所でオプション取引にかかる手数料・クリアリングコストは異なるため、実際にトレーディングする際にはより細かな収益計算をしてください。
暗号資産担保ローンはノックアウト型のコールオプションです。期間中にストライクプライス(契約時の約半額=借入金額)で担保のビットコインが処分され、借入金額と相殺されます(注2)。期間中に、ストライクプライスを超える下落をし、その後反発した場合はコールオプション部分が無くなっていますので、運用益は期待できません。これを避ける方法としては、追加担保を差し入れ、担保処分を回避する必要があります。

今回紹介した手法は、権利行使価格の離れた非常に割高なプットオプションの売却による、暗号資産に対する下落懸念の収益化とも言えそうです。
自らの相場観に従い、上昇(下落)により収益を獲得することは、リスクが大きく興奮も大きいですが、勝ち続けることは非常に難しいものです。まだまだ投資対象としては成長過程にある暗号資産ですので、オプション取引には大きな歪みが起こりえます。その歪みを捉えることは、興奮こそ少ないですが、安定した収益機会をもたらすことがあります。

最後に

「デジタルアセット担保ローン」は、暗号資産を投資目的で保有されているお客様に、暗号資産への投資を継続しつつ、事業資金など新たな投資に必要な資金を提供するために開発されたサービスです。
今回は、その暗号資産投資の部分に着目して書かせていただきましたが、デジタルアセット担保ローンの利用の仕方として、もとの暗号資産への投資と調達した資金による新たな投資とを合わせて見ることで、実はお客様のポートフォリオ全体のパフォーマンスを向上させたり、リスクコントロールにも貢献できるのではないかと考えています。
機会があれば、そうした視点でのブログも、今後書かせていただきたいと考えています。

(注1)実際に当社がお預かりしている暗号資産を売却する水準は、市場の流動性等を勘案し、当社の裁量の範囲で決定いたします。必ずしも、担保暗号資産の評価額がお借入元本+経過利息と一致する暗号資産価格の水準ではございません。

(注2)実際のご契約では、市場での暗号資産の売却精算金額が、お客様の債務の額を上回る場合には、お客様にその差額をお支払いいたします。反対にお客様の債務の額を下回る場合には、お客様にその差額をご請求させていただきます。

用語説明・参考サイト

インプライドボラティリティ
https://www.daiwa.jp/glossary/YST2340.html

CMEによるわかりやすい参考(スキューの仕組みを説明しています)
https://www.cmegroup.com/ja/education/featured-reports/equity-options-skews-why-no-surprises.html

※オプション取引の参考サイト(JPX)
https://www.jpx.co.jp/learning/derivatives/options/04.html