見出し画像

MSCAフェローシップで欧州留学を目指す方へ

はじめまして。私は、国内の研究機関に勤める30代後半のエンジニアです。2020年の秋頃から Marie Skłodowska-Curie Action Individual Fellowship (以下、MSCA-IF) という、 EU (European Union) が助成するフェローシップにて2年間欧州の大学で過ごす予定です。

MSCA-IFの紹介や自分の申請書作成の経験などを書きたいと思い、noteを始めました。MSCA-IFは欧州で研究をしようとする研究者にはとても良いフェローシップなのですが、日本ではそれほど浸透していないのか、インターネット上にあまり体験談などがありません (それもそのはず、調べたところ2014年~2017年の日本からのMSCA-IF参加実績はたった4件でした [1])。このnoteが、欧州留学やMSCA-IF応募を考える研究者の方々のお役に少しでも立てれば嬉しいです。

第1回目のnoteでは、MSCA-IFの紹介をします。

MSCA-IFは、Horizon2020という欧州の研究・イノベーションフレームワークプログラムの中の公募の1つです。Horizon2020は2014年から2020年まで実施される計画で、総額800億€ (約10兆円)に上るEUからの公的資金が投入されます。

https://ec.europa.eu/research/mariecurieactions/actions/individual-fellowships_en

MSCA-IFは、若手研究者 (ただし年齢制限はありません) が能力向上やキャリアアップのために新しい環境で研究を行うことを助成するフェローシップです。2種類に分かれており、EU圏外の研究者が渡欧して最長2年間 (場合によっては3年間) 研究を行う「European Fellowship」と、EU圏内の研究者が圏外へ出て研究をした後EU圏内に戻るまでの最長3年間を助成する「Global Fellowship」があります。日本国内にいらっしゃる方はEuropean Fellowshipへ応募されると思いますので、ここではそれを対象にします。

MSCA-IF (European Fellowship) の特徴

・手厚い助成 (約5480€/月*の給料、500€/月の家族手当、800€/月の研究費、650€/月の間接経費を支給)

* 渡欧先の国によって多少変わる

・EU圏外に居住していれば*、国籍・年齢不問

* 既にEU圏内に居住している場合でも、申請時点で居住期間が1年未満ならOK

・人文科学系、自然科学系問わず全ての分野の研究者が対象

博士号取得者が対象だが、持っていなくても十分な研究経験 (4年以上)があればOK

・応募は1年に1回で、書類審査のみ(電子申請)。2020年の応募は4月8日に開始され、9月9日が締切、結果通知は2021年2月

・フェローシップ開始時期を自分で決められる(結果通知の1か月後から1年半後までの間に始めればよい)

詳細は、MSCA-IF Guide for Applicants (2020年4月8日版) をご確認下さい。

https://ec.europa.eu/research/participants/data/ref/h2020/other/guides_for_applicants/h2020-guide-appl-msca-if-2018-20_en.pdf

年齢や研究分野が限定されているフェローシップが多い中、全く制限が無いうえに支援額も大きい、魅力的なフェローシップです。ただしその分競争率も高く、例年の採択率は12~15 %です[2]。先述のようにMSCA-IFは日本ではあまり知られていませんが、欧州ではその競争率の高さや評価の高さで有名なフェローシップのようです(欧州の知人やインターネット上の情報)。

今年度の応募は、下記のサイトから行えます。

https://ec.europa.eu/research/mariecurieactions/actions/get-funding/individual-fellowships-2020_en

応募にあたっては、10ページの研究計画書、CV(履歴書)、研究倫理レポートなどの申請書を準備しなければなりません。科研費の申請書を書いたことはあっても英語でこのような申請書を書いたことのなかった私には、非常に大変な作業でした。最初は何を書いたらよいかわからず、完成させるまでほぼひと夏を費やしました。世界の申請者の交流サイトを見ると、そのような方は多いようです。次回以降、私がどのように申請書を作成して応募したかについて書きたいと思います。


引用

[1] 日欧産業協力センター、"Horizon2020の概要と日本からの参加"

https://www.ncp-japan.jp/wp/wp-content/uploads/2019/02/a80f6f2cbe7d9bd949dce67c36d958cb.pdf

[2] Estonian Research Council, "Marie Skłodowska-Curie Individual Fellowship"

https://www.etag.ee/wp-content/uploads/2019/03/2019-MSCA-IF-info-days-1.pdf

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?