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がん治療の効果が認められていないサプリメントを父母に勧められたこと。

標準治療とサプリメント

「あなたにもポリポーシスがありました」「生検の結果はGroup4(*1)です」「今すぐに急いで、というわけではないですが、早いうちに胃の切除をするということがこの病気への治療になります」という主治医からの診断を受けたわたしに、「このサプリ何にでも効くから飲みぃ!」と母は言いました。

母は、病気と手術の経験があるからか、からだに良いとされるサプリメントには敏感でした。不確定だった手術をした経験があるからか、病院や医者というものを100%信じているわけではないというきらいがありました。ちょうどこの時期にハマっていた民間のサプリメントが、特許を取っていて、利用者から“治る見込みがないと言われたがんが治った”という症例が報告されているから、飲んでみろということだったのです。

でも、よく考えてみてください。“がんが治った”という症例はそのサプリメントと因果関係があるのか。医学的検証や証明、臨床試験がなされているのか。“治った”という症例の分母がどのくらいなのか。どの部分に特許が与えられているのか。そもそも“何にでも効く”サプリとは何なのか。

主治医(=医師)は、当然のことながら【標準治療】を勧めます。標準治療とは“勝率が一番高い治療”を定義しているからです。(*2) 病状が進行していて手の施しようがないというのなら話はべつですが、標準治療で治る可能性が高いというのなら、それを選択しない理由はないのではないでしょうか。

*1 生検の結果Group4とは、生検組織診断分類Group4のことで、“腫瘍と判定される病変のうち、癌が疑われる病変/大きさや内視鏡的な性状を確認し、再生検や内視鏡的切除(EMR,ESDなど)を行い、確定診断を試みる”とあり、易しい言葉で先生が言うには「癌ですと確定はできないけれど、癌の可能性があるということ」です。確定できない要素には、採取した細胞が少なすぎたなどの理由があるそうです。
(参考)日本胃癌学会編 胃癌治療ガイドライン医師用 2014年5月改訂【第4版】Ⅲ章 資料[B 生検組織診断分類(Group分類)の取扱い]


*2 ツイッターで人気のけいゆう先生こと消化器外科専門医 山本健人さんのコラムで、先生の「選択は自由、でも後悔させたくない」の言葉に安堵しました。そして同時に、患者として信頼すべき人は誰なのかが、すっ――とわかった気がしました。
(参考)時事メディカル 「教えて!けいゆう先生」医師が考える最も確実ながん治療 標準治療を選ぶべき理由(2018/06/28 18:32)


ポリポーシス(GAPPS)の捉え方と、素人の捉え方

ただ、わたしのこの病気の微妙なところは、ポリポーシスがあったとはいえ、それが即がんであるとは言えないところです。Group4の診断が出たものの、素人のわたしたちからはそれがどの程度あぶないものなのか、想像もつきません。かといって、もっと手前のGroup1だったとして、それを放っておいてどのくらいの速度でがんへと進行していくのか見当もつきません。

素人ゆえに、Group4が出たとしても(何らかの要因で)Group1になったりして。たくさんのポリープが消えたりして。と考えてしまう部分もあるのかもしれません。また、素人ゆえに、手術をすること(身体を切ることや身体の一部がなくなること)やがんというものが、この世の終わりのような気がしてしまうのかもしれません。

だけれど、まずは怖いなら怖いと主治医に言ってみてもいいのかもしれない。納得のいくまで、病気のことについて、治療法や手術について聞いていいのかもしれない。医師はおなじような患者をたくさん見てきています。だから、当然のことのように端的に説明をされてしまいます。わたしや家族がいろいろな疑問をぶつけると主治医はすこし面食らったようにめんどくさそうな顔をしましたが、患者側にはその権利があります。病状の進行に不安も抱きますが、納得のいくまで医師と話をするというのは大事なことだなと、感じられた一連のサプリメントさわぎでした。

結果、

セカンドオピニオンについては、主治医のほうから「紹介しようか」と言っていただきましたが、GAPPSという病気はこの主治医とそのグループが最先端の研究をされているというので、主治医を信頼することにしました。

なにか疑問があったらメールをしておいで、と、主治医がメルアドをくれたので、母の勧めるサプリメントについて効果を聞きましたが、「全然がんとは関係ないね」と一蹴。もちろん漢方なんかの体質改善でポリープが無くなったりすることは「ないね」ということでした。

従兄弟が生検の結果Group2のまま胃の全摘を決めた理由に、若いうちのほうが身体の回復や仕事への復帰に有利だということ、子どものためにも何かあってからでは遅いとかんがえたことがあります。その客観的な考えにわたしも同意できました。

また、わたしの手術後、妹が胃カメラをしおなじ病気をもつことが判明しましたが、わたしのときとは違い「半年後くらいにまた病気の進み具合を見せてもらいながら、ゆっくり考えればいい」と主治医が言っていたことをふまえると、医師はそのときの判断で的確な言葉をえらんでいるということです。だって、わたしのときには時間があるふうには言わなかった。「半年おいてどうなっているかは約束できない」と言われましたから。

胃を全摘した者のひとつの意見として聞いてください。

胃という臓器が無くなったという大きな感覚の変化は、じつはあまりありません。食べた後の後遺症(以前とはちがう身体の反応)はもちろんありますが、胃の不在を、手術の直後から小腸が補っているという事実のほうがはるかに大きいのです。すごいな。人間の身体はすごいな。人の意思や不安などからは独立して、身体そのものが勝手に順応し、自らを生かそうとしているんだ、と気づけたことのほうがすごく大きいんです。

身体を切ることや身体の一部がなくなること、がんというものが、この世の終わりのような気がしてしまうかもしれません。でも、わたしたちの身体は細胞ひとつひとつが、ただ生きるという方向に進んでいるみたいです。

ですから、生きるという方向に進むために病気を治す“勝率の高い”方法があるのなら、後悔のないように選択していただければと思います。





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