『檜垣澤家の炎上』を読みました
書店でフラフラしていたときにふと目に入った本でした。物騒なタイトル、帯の『細雪』×『華麗なる一族』×殺人事件、「富と権力の館に拾われた娘が抱いた野望とはー」というアオリ文。気にならないはずもなく。
主人公のかな子がしたたかで、ほんとによくやってました。子どもなんだからもう少しぼんやりすごさせてやりたい、油断をさせてやりたいと思うのは大人の勝手で、彼女は必死だったんだよなぁ。よく生き延びた。
気まぐれにでも可愛がってくれていた雪江のお嫁入りで、かな子が不意に涙を流して戸惑った場面は印象的でした。利用しているだけと思いつつも、気まぐれにでも好意を向けてくれていたことが心に残っていたんでしょうね。
『細雪』というにはサバイバル味の強い小説でしたが、非常にスリリングで面白かったです。「一族もの」とでもいうのでしょうか、この手の小説は面白くて好きですね。『華麗なる一族』も読んでみようかな。『犬神家の一族』先日久々に読み直しましたが、もちろんこちらも面白く。一族の年代記のような小説には、独特の魅力がありますよね。
後半に進むにつれて、アレはそういうことだったのか、という驚きが怒涛のように続いてジェットコースター気分でした。終章のはじめに九月一日、とあるのを見て嫌な予感がしましたが案の定でした。年号までは覚えてなかったんですけど。忠実な部下おミツちゃんをずっと心配していたんです。無事でよかった……。かな子は強い子ですから、暁子さんや「お兄さん」の支え(精神的なものだけでも)とともにこの先の厳しい時代を生き延びるのでしょうね。
ただ少し気になっているのは、郁乃の夫の惣次の生死が明示されていないこと、それから彼の妾腹の子どもがいるようなことがちらっと書かれていたはずなのにそちらの生死も明示されていないことです。(見落としかもしれませんが……)
もし、かな子の力で会社が復調し、順風満帆となったときに彼らが現れたら……。まぁ、その頃にはかな子もスヱや花のような絶大な力で対処できそうですね。惣次は小物のようでしたし。
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