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【好きなもの100個発見伝】#11 お風呂が好き

アメリカの地から、叫んでいる。

お風呂に入りたァい!!!!!!


正確にはね、入ってるけども。
シャワーという名のお風呂に。
それでもなんだか、自分の中にある色んなものが、出切っている感じがしない。
そういう時に、あっさい湯船(湯船と呼ぶのも憚られるくらい浅い、湯船というより湯ボート)に、お湯を溜めて、お湯に浸かる。

だから、肩まで浸かるのも、めちゃくちゃ寝そべる必要がある。

30分くらい浸かれば、体はホカホカ、汗もかいてスッキリする。


だけど…
これは…

お風呂では、ない…!!!!(cv. 大自然のロジャーさん)


座って、肩まで浸かりたい。
一生懸命体をよじって、全部お湯に浸かるようにしなくとも。
とぷんって、一発で全部この身をお湯に委ねたい…!

そこで、想像してみた。今まで私はどんなお風呂に入ってきたかなと。
イマジナリーお風呂体験。人間は、失ったものを想像で補うことができるのだ。

幼少期に育った、大阪の借家。父はいつも狭そうに膝を曲げて入っていた覚えがある。
兵庫に家を買って、足が伸ばせるお風呂になったときは嬉しそうにしてたな。

神戸のおばあちゃんの家の近くにある、しあわせの村で温泉の入り方を習った。
あのジャングルっぽいインテリア、まだあるんだろうか。

城崎旅行に行った時は必ず行ってたシルク温泉、シルクって何なんだか、どの辺がシルクなんだか、子どもの頃はさっぱり分からなかったけど、大人たちが嬉しそうにしていたのを覚えている。

広島の田舎で一人暮らしを始めると、節約と節水のために湯船に浸からなくなった。体調を崩すと決まって、昭和のかほり漂う診察室でお医者さんに言われたのが、「お風呂、浸かりよる?」だった。湯船は心の薬じゃけぇ、と。

東京で仕事をし始めて、仕事がしんどくて、どうしようもなくなって、マルエツのパック寿司では自分を癒しきれなくなった時は、お風呂に入った。バスソルトは、私の「無理やりご自愛アイテム」だった。バスソルトの効果はよくわかんなかったけど、自分のためにお湯を大量に使って、しかもそれにいい香りをトッピングすることが、ご自愛そのものだった。あゝ贅の極み、ここにあり。

コートジボワール出張の時、トイレとペラペラのカーテン1枚で仕切られたシャワーで、湯(時々、水)を浴びた。シャワーカーテンは何の仕事もしてなくて、毎晩トイレ周辺をびっちょびちょにした。シャワーカーテンを開けっぱなしにして、壁を背にシャワーを浴びたら、床上浸水が水たまりくらいになると気がついたのは、帰国3日前だった。

パレスチナ出張の時は、シャワールームがガラスの扉で仕切られていたから、めちゃくちゃ嬉しかった。10分弱でお湯が無くなるシステムだったから、毎晩オッフェンバッハの「天国と地獄」を脳内再生しながらの行水だったけど。

海外出張でズタボロになって、自分の家の湯船で涙を流した後は、逃げるように下田へ温泉に入りに行った。できる限り誰にも教えたくない、大好きな温泉宿がある。スーパー銭湯みたいに種類はないが、大きな内湯と、里山の声が聞こえる露天風呂が、どこまでも私の背中をさすってくれた。思い出しただけで、涙が出る…くぅっ…行きてえォ…

前に書いた吹上温泉は、あれ秘湯って扱いなんだそうだ。確かに、まごうことなき秘湯。勇者も息絶え絶えだったもんな。あのお湯から見えた空は、一生もんだ。

高校生の時のパリへの留学、大学生の時のワシントン州の田舎への留学、どこにも湯船はなかった。
だから、我が家に湯ボートがあるだけ、今がずいぶんマシなのは痛感している。週一でも、体を捻ってでも、入れるっちゃ入れるから。
それでもさ、心と体は、湯船を欲してるんだよ。叫んでるんだよ。


湯ボートに寝そべって、大阪の借家の湯船や、あんまり入らなかった広島の湯船、東京の贅沢湯船、下田の里山露天に思いを馳せる。

広島のおじいちゃん先生が言ってたことは、本当だったんだね。
一時帰国したら、絶対に船でぷかぷか浮いてやる。
心の薬を、適切に摂取してやる。

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