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就活大学院生に「モブサイコ100」が響いた(7、最後。)

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採用面接の後はいつも、あまり精神的に安定しません。

ちょっと喋りすぎたか、話題の選択はあれでよかったか、良い印象を残せたか…などと、あれこれ考えては落とされた時のための心の準備をします。最初の就活での失敗以来、常に最悪の結末を想定した上で動くのが癖になっていました。

第一希望の企業の最終面接後もそうでした。今思えば、話している間の感触は良かったので、別にそこまで落ち込まなくても良かったのですが…。落とされた場合に落ち込む度合いが大きいことが分かっていましたので、それなら事前に落ち込んでおいた方がいいと思ったのです。こうやって書いてみると、我ながら謎な論理だとは思いますが。

でもその日の夜、ちょうど「モブサイコ100」1期の最終話を見て、なんだか気持ちが晴れました。

今のところ、この企業が一番自分に合うと思っているのは事実だ。でもそれが正解だとは限らない。彼らが求める人材の規範に自分がはまらなかったからって、そう落ち込む必要などないのだ。また一からやり直して、自分が生きていけるところを探せばいいじゃないか。

一からやり直すことは、以前に考えていたほど絶望的なことではない。この世界に関する新たな学びとか、今まで知らなかった自分の一面を発見する機会を得られるのだ。失敗はしておいた方が、10年後の話のネタも尽きないだろう。

そう思いつつもソワソワと過ごしていた翌々日、無事に内定をいただくことができました。これにて就活は終了となります。

就活エージェントの相談窓口で担当してくださっていた方や、採用フローでお世話になった方々は、とても喜んでくれました。「貴重な時間をお割きいただき…」というのは社交辞令として使われる表現ですが、この時点の私の心は、真に感謝に満ちていました。会ってくださって、支えてくださって、帆走してくださってありがとうございました。私という人間は、決して自分ひとりでは完結せず、多くの人に支えられて生き、成長しているのだと実感させられました。

さて、就活は終わりましたが仕事は残っています。他の企業さんへの、内定・採用辞退連絡です。その中で、それまで私を高く評価してくださっていたある企業の採用担当者さんから、こんなことを言われました。

「英語が達者なのだから、生かさないと勿体無いですよ。」

そこは英語が公用語の企業です(楽○さんではありません)。第一希望ですでに内定を得たところに進めば、文系大学院生の私がそれまで培ってきた語学力を活かす機会はほぼないことは目に見えていました。

生かさないと…もったいない。

一瞬、ほんの一瞬、心が揺れました。

でも不意に、どこからかモブの声が聞こえた気がして、ハッとしました。戦いの最後に、悪足掻きする「爪」の幹部の前で彼がこぼした一言。

「超能力持ってても、モテないですよ。」

それに続く霊幻。

「それが全てだ。あんたもモテない。諦めろ。」

…そうだ、そうだったわ。

英語好きだけど、別に他人に披露するために身に付けたんじゃなかったわ。何なら英語よりもイタリア語の方が好きだし。

ははっ

とはもちろん言わずに、丁寧にお断りしました。

「働いている方々の人柄や社風に触れ、他と比較した上で自分に最も合っていると思われ、かつ事業の意義も強く感じられたのは第一希望の企業さんでした。有限である己の人生の時間を過ごしたいと、より強く思ったのはそちらでした。だから辞退させていただきます。」もちろん英語云々以前に、これが全くの本音です。

晴れて就活は完結しました。お話は以上です。


終わりに

大学院生の就活の、一つの例についてお話ししてきました。大学院という組織と労働市場には未だ大きな壁があって、どうにもかつての私のように、人生の選択肢を狭めて苦しんでいる人が、他にも大勢いるのではないかという気がしています。これはあまり取り沙汰されませんが、学術界の閉鎖性とかその世間における認識に関する、より大きな、構造的な問題だと考えます。

また今回は、筆者が実際に経験して考えたことを系統立てて文章化する目的から、これを「モブサイコ100」というアニメの内容に絡めてお話ししました。ストーリーだけでなく、コメディ、アクション、サウンドトラック、作画の創意工夫など、どれをとっても本当にいい作品だと思います。これだけネタバレしておいて何ですが、気になった方はチェックしてみてください。

長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました。今後も不定期で、アニメのみならず色んなことに関する記事を更新していきます。よろしくお願いいたします。


おわり




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