ギロチンチョークの諸相

1 「ギロチンチョーク」という技がある。「ギロチン」=断頭台というイメージの連想からか相手の喉仏を押し潰すようにして極める技だと誤解している人もいるかも知れない。だが、喉仏を押し潰す掛け方は、そもそも「相手の頸動脈を圧迫して落とす」技の総称である「チョーク」すなわち「締め技」でないだけでなく、最悪相手の命にかかわる怪我をさせる危険性があるのでやるべきではない。
 「ギロチンチョーク」も「締め技」である以上は、相手の頸動脈を圧迫して落とす技の一種であり、基本的なサブミッションのひとつとされているにも関わらず、それを正確に掛けられる人はあまりいないのではないかと思う。特に日本では「誰でも知っているが、誰も出来ない技の代名詞」だと述べている方もいるくらいだ。
 だが、「ギロチンチョーク」も「締め技」であるという本質を忘れなければ、これを理解し習得するのもそれほど難しくはない。「ギロチンチョーク」を理解する上で重要なのは、①チョークに使う自分の親指(もしくはその拇指丘の部分)で相手の頸動脈を正確に捉える②手ではなく腰で絞める(以下で述べるように例外はある)という2点を押さえておく事である。
 本稿では、以上の2点に着目しつつ、「クラッシックスタイル・ギロチン」「ハイエルボー・ギロチン」「アームイン・ギロチン」「10フィンガー・ギロチン」の4つについて、それぞれの理合と掛ける際のコツを紹介したい。

2 まず「クラシックスタイル・ギロチン」であるが、次の動画をご覧頂きたい。

 この動画(2:40~)では、①右手の拇指丘(注1)を相手の首の付け根(つまり、両頸動脈の末端)に当てた状態でクラッチを作り(頸動脈にコネクトする)、②そのまま背後に倒れて、(手ではなく)後ろに倒れる自重と腰を突き出す力を用いて相手の頸動脈に圧力を加えて締めている。
 先に「ギロチンチョーク」は、手ではなく腰で絞めると書いたが、せっかく右手の拇指丘で相手の頸動脈を捉えても、手で絞めればほぼ確実に拇指丘は相手の頸動脈から外れてしまう。それでもタップを取れるかもしれないが、その場合ほぼ確実に相手の喉を力任せに潰す危険なやり方になってしまう。
 腰を使って締めるのは、一つには拇指丘で捉えた相手の頸動脈を逃がさない(=拇指丘と頸動脈のコネクションをキープする)ためであるが、もう一つの理由として、腰で絞めれば(手で締める場合と違って)疲れないからである。
 逆に言うと、腰で締める「ギロチンチョーク」は、自分の腰より相手の腰が高い位置にあると、腰を使って締める事が出来なくなるので、「チョーク」として機能しない。そうした「ギロチンチョーク」の理合を理解していれば、相手に「ギロチンチョーク」のグリップを作られても、自分から腰を浮かしてチョークから「エスケープ」する事も出来るようになる(注2)。

注1)本稿で言う「拇指丘」とは、下図における「母指球」の手の甲側の部分を指している。ざっくり言ってしまえば、親指の付け根から手首にかけての部位である。


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