ランドリーバック

 稽古が終わると、多くの会員さんは道場で私服に着替えてそそくさと家路に着く。中には道衣の上にパーカー一枚を羽織って帰る剛の者もいるが、それはひとえに彼が車で道場に通っていて、人目を気にする必要がないからであろう。
 それ以外の人は、脱いだ道衣を「ポリ袋」と言えば聞こえはいいが、要するに「ゴミ袋」に入れて持ち帰っている。
 ショルダーバックやリュックに使用したギをそのまま入れたら、汗でバックが傷む、汚れる、臭う等々気持ちは分かるが、2万円以上の道衣を着ている人が、そのギを「ゴミ袋」に入れている様を見ると、かなりシュールな光景である。
 とは言え、ギを入れた「ゴミ袋」はそのまま翌日のゴミ出しに使うのだろうし、バックを汚さずに済むという点を考えると、周りの目さえ気にしなければ(しかも、ウチの道場の場合、それが普通なので周りの目を気にする必要がない)、使用したギを「ゴミ袋」に入れて持ち帰るのはそれなりに合理的な行動と言えるだろう。

 私はBJJを始めて以来所属先を変えたことがないし、出稽古に行ったこともないので、他の道場では着替えを終えた人々がギをどうやって持ち帰っているのか分からない。
 ただ、マンション住まいであれば、規約で「洗濯機の使用は10時迄」と定められている場合も少なくないだろうから、道場にもっぱら平日の夜通っている人にとって、ギの洗濯というのは結構切実な問題なのではないだろうか。

 「オキシクリーン」を溶かした盥に稽古で出た洗濯物一式を一晩漬けて翌朝洗濯するというのも手ではあるが、ギにカビが生えるのをある程度防ぐことは出来ても、生地へのダメージは避けられまい。

 大手の道場でギを有料で洗濯するサービスをしている所がいくつかあるが、単に公共交通機関を利用する際にギがかさ張るので手ぶらで通いたいという欲求に応えるだけでなく、上述したような洗濯にまつわる問題をも解消してくれるという点で、マンション住まいのBJJ実践者のニーズを上手く汲み取っていると感じる。

 私の場合、お金はないが貧乏臭いのは嫌なので、なんとか「ギをゴミ袋に入れて持ち帰る」以外の手段がないものか?と考えて出した結論が、「そのまま洗えるランドリーバック」にギを入れる事である。
 古流柔術を稽古していた頃は、「そのまま洗えるランドリーバック」が世の中に出回っていなかったので、100均で買える大型の洗濯ネットに道着を入れていたが、さすがにそれはお世辞にも見た目がいいとは言えないし、何より通常の洗濯ネットでは道着を入れて洗うと破けてしまう。
 これに対して、「そのまま洗えるランドリーバック」は1000円も出せば手に入るし、家に帰ったらランドリーバックからギを取り出し、ラッシュガード等はランドリーバックに入れたまま洗濯機に入れ、まとめて洗う事が出来る。
 ラッシュガードは洗濯ネットに入れて洗わないと、洗濯中にギと絡まって伸びたりする事もあるし、「ギをランドリーバックに入れて持ち帰る」というアイデアは私の発案にしてはそこそこ良いのではないだろうか?と密かに自負しているのだが。

 ギに魂や意思が宿っているわけではないが、さすがにゴミ扱いはかわいそうである。余計なお世話と承知の上で、道場の会員さんには「ゴミ袋を止めて、ランドリーバックにしよう」と勧めているが、今のところゴミ袋派の牙城を崩すに至っていない。

 今度試合場に行く機会があれば、試合を終えた人々がギをどう扱っているのか観察してみようと思っている。

 

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