サウロ・ヒベイロ『柔術大学』-白帯-

1 本稿では、『柔術大学』の「白帯」の章について紹介し、それについての私見やエピソードを交えながら、サウロの柔術観について考えてみたい。その際、キーワードは「サバイブ(サバイバル)」である。本章の冒頭に「白帯のゴールはサバイバルである」と掲げられている事からも彼が「サバイブ」という概念を非常に重視して頂けることがお分かりいただけるかと思う。

2 ①そもそも「サバイブ」とは?

 柔術の初心者は誰もが閉所恐怖症、痛み、窒息といった様々な事態に対する「恐れ」を抱いている。彼はスパーのたびにこれらの「恐れ」に直面し、何度もタップをする事を通して次第に「恐れ」を克服していく。彼はこのメンタル面での進化を通じて、恐怖を克服するだけでなく、戦ってエネルギーを浪費する本能的な傾向も克服してゆく。生き残るために物理的なテクニックを使う前に、まずもって不利な状況で精神的にリラックスする事を覚えなけ得ればならない(言い換えれば、物理的な意味での「サバイブ」は、「恐怖」を克服し、困難な状況でもリラックスできるという精神的な面に条件付けられている)。

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