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『朽ちないサクラ』正義の形を探す

2024年7月鑑賞
ネタバレありの感想

この映画は、主人公である森口泉
その上司、富樫隆幸の物語だ。

警察署に勤める2人が、森口の親友であり新聞記者である
津村千佳が殺害された事件の真相に迫る。
若手とベテランがペアを組む、よくある警察バディームービー・・・
と思わせる内容となっており、真相に至る最後の瞬間まで相棒役である
富樫がこの事件の黒幕であることに全く気が付かなかった。

物語の最後に現れる2つのサクラは、正義の形とは何かを問いかける。

「俺たちの世代では、公安警察をサクラと呼ぶ」という富樫のセリフがある。
このセリフが、この映画を象徴するセリフになっている。
富樫は、元公安警察というバックボーンがあり、物語冒頭では広報部の課長で
今回の事件とは無関係な振りをしている。
だが富樫は、過去に毒ガス散布事件を起こした宗教団体に内通者を作っており
今回の事件では間接的に人を殺してまで内通者の存在を隠し通した。
公安警察と言えば、テロ組織など危険な団体への監視・密偵活動をすることで
有名な組織である。

富樫は、過去に自分の判断ミスで毒ガス散布事件を引き起こしてしまった
経験があり、捜査活動上の秘密を守るためには人が死ぬのもやむをえないという強い
信念がある。どんな汚い手を使ってでも凶悪な犯罪を未然に防ぐ、という点において
強い正義感を持っている。その強い正義感は誰に責められるものではないようにも
思えるが、行きすぎた正義の行き着く先に犠牲者が出るのでるのであれば、その道
は間違っているのかもしれない。

そして行きすぎた正義を真正面から否定するのが、主人公である森口泉である。
一介の事務員にすぎない森口泉だが、上司である富樫の手助けを受けながら親友
である津村千佳の死の真相に迫る。森口は富樫に誘導されながらも、最後には
自力で真相に辿り着く。親友の千佳を死なせたのは、今まで手助けしてくれていた
上司の富樫であると。記者である津村千佳が、富樫が共謀している内通者の周辺を
調べ始めたので消した、というのが真相である。

「大勢を守るために、一人の犠牲はやむをえない」という富樫に
森口は真っ向から否定する。それは間違っている、と。
だが富樫が真犯人だという証拠もなく、全てを一蹴され富樫に対して
何もできず、森口は真相を看破するも黒幕に敗北して物語が幕を閉じる。

森口は、最後にサクラを見上げながら決意する。自分は今の職場を辞め、
試験を受け直して刑事になると。それは自分なりの正義を追い求める姿
でもあり、公安警察という組織に挑もうとする無謀な姿にも見える。
その姿こそ、美しくも儚い桜のように。

皆さんも、ぜひご鑑賞ください。

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