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セレッソ大阪 第17節 vsヴィッセル神戸


セレサポの皆様、お疲れ様です。
首位撃破!となった試合を振り返ります。

激変したヴィッセル

試合に入る前に、ヴィッセルの話を少し。

今季のヴィッセルを数試合、そしてこの日のセレッソとの試合を見て、「バルサ化」の面影は全くのゼロになったなという印象を抱きました。
何がどう変わったかを一つ一つ書いていくことはしないが、個人的には「よくここまで変化できたな」と思っている。
と同時に、じゃあ去年までのバルサ化はいったい何だったんだ?ということも。

決して彼らの掲げた「バルサ化」が正しいとは思わない。そんな風に思ったことは一度もない。

それはパスサッカーが真似出来るか出来ないかとか、ポゼッションの時代は終わったとかいう話ではなく、彼らの掲げるバルサ化はあまりにも曖昧だったからだ。
イニエスタやビジャ、サンペール、ボージャンらバルサOBを呼び寄せて、監督にはポゼッションサッカーを命じて、たったそれだけでバルサになった気分でいるのなら、なんともお花畑な話だと思う。

もちろん例のバルサ化はヴィッセル自体の方針ではなく、某会長の強い意向だったことは明白なので、ヴィッセルというチーム自体を悪く言うつもりはない。むしろ選手もファンサポーターも振り回された側だろうし。

吉田監督は今季、前線へ素早くボールを蹴っていき、大迫・武藤という強烈な個で勝負する機会を増やすサッカーを志向している。つまりデカくて強い選手にたくさんの勝負の機会を与え、その勝負をどれほど多く勝てるかという局面的なサッカーだ。別にこれが良いとも悪いとも思わないし、それで結果が出ているということはこのチームに適した戦い方なのかもしれない。

だが一方で大迫や武藤が欠場したら?という疑問も残るので、ヴィッセルがこの先どれほど好調を維持できるかは注目してみていきたい。

均衡する試合

セレッソのスタメンは前節から4枚変更。ジンヒョン、山中、徳真、為田に代えてハンビン、舩木、陽、クルークス。
ハンビン、舩木は前節後半から試合に出ており、クルークスは負傷からの復帰。陽は天皇杯の好パフォーマンスでチャンスを掴んだといったところか。

試合後の監督コメントで明らかになったように、ジンヒョン、山中らは負傷を抱えているとのこと。

対する神戸は前節から2枚変更。特に負傷から帰ってきた酒井高徳には注目が集まっていた。

3バックの左からロングボールを
打ち込んでくるヴィッセル
大迫はこのボールに対してめちゃ強い

立ち上がりからボールを保持したのはヴィッセル。ボールを持つと今季よく見る3バック化を行う。
ビルドアップを仕込んでくるチームがよく行うこの4バック→3バックへの可変システムだが、ヴィッセルの場合は3バックへ変化してもビルドアップはほとんど行わず、初瀬から対角の方向へロングボールを打ち込んでくる。ターゲットは大迫、武藤の2人。
ここ数試合は酒井高徳が負傷により欠場していたが、そのときも変わらず左SB残しの3バック化で戦っていた。だが、やはり初瀬の方が精度の高いボールを蹴れるからか、セレッソとの試合ではより「左の初瀬から右へ対角のロングボール」を多用していたように思う。時折、酒井高徳もターゲットとなっていた印象だ。(全試合見ているわけではないのでハッキリしたことは言えないけど)

狙いはここ
毎熊のアンダーラップ以外にも多くの選手が
ここを狙っていた

セレッソは4分過ぎたあたりからボールを持てるようになる。すると狙いはすぐさま見えてきた。5分、奥埜が斜めのランニングでヴィッセルのCBとSBの間へ飛び出す。6分には鳥海がボールを受けた段階で真司がCBとSBの間を指差しボールを要求。真司へはパスは出なかったものの、サイドに張るクルークスへサイドチェンジ。すると今度は毎熊がハーフスペースへ侵入しクルークスからパスが出る。
続いて6分50秒のシーンでも、またしても毎熊がハーフスペースで完全にフリー。残念ながらクロスからカピシャーバのシュートはヒットしなかったものの、ものの数十秒で二度も毎熊がポケットのエリアでフリーになっていた。


奥埜がここにいてもフリー


ヴィッセルはここを誰が見るかがハッキリしていないことは明白で、初瀬はクルークスを見ているし、本多はレオセアラが気になる。となると両者の間隔を広げられ、ここのスペースを自由に使われていた格好だ。

グランパス戦でも同じことを書いたが、何度も同じシーンが見られるということは準備している証拠。たとえばこれが、最初の奥埜のときだけ見られたものであれば、単に「奥埜が気を利かせたんだろうな」となる。でもそれが、違う選手で何度も何度も繰り返されるのであれば、チームとして明確に準備し、相手のそこを狙うぞということが徹底できている証ではないだろうか。

小菊セレッソは事前スカウティングの精度は極めて高い。多くの試合で、準備してきたことを発揮している。

このあとも17分などでクルークスが幅を取り、毎熊がハーフスペースを突く動きが見られた。

試合は開始直後からオープン合戦となったが15分頃から落ち着きを見せ始める。

そして次第にヴィッセルが個の強さを全面に押し出して、セレッソを抑えてつけていった印象だ。

とにかく大迫で勝負する回数を増やし(そのために繋ぐのではなくロングボールを多用する)、競り合いで勝つか、負けても五分のボールに出来ればOK。セカンドを武藤や山口蛍、井出らで回収していく。もし完全に跳ね返されても素早くプレスを浴びせ、セレッソの選手から自由を奪う。

今季ここまでヴィッセルの得意とするパターンにハマっていったが、ここを何とか耐えることができた。

耐え凌ぐことが出来たのは後ろの頑張りが大きかった。
特に大迫と真っ向からぶつかった進藤。決して負けていなかったと思う。本当に大きな活躍だった。
そして大迫に対応する進藤のカバーを徹底した鳥海、陽の奮闘にも頭が下がる。彼らの頑張りがなければ、早い時間帯で失点していたかもしれない。

そしてヴィッセルは前へ圧力を強めてくる分、後ろにスペースはあったのでワンチャンカウンターが決まれば…という状況ではあった。相手に強烈な個はいるものの、セレッソとして何も出来ないという状況ではなく、耐えて耐えて虎視眈々とチャンスを窺っていた印象だ。

後半開始早々の動き

48分、ヴィッセルのカウンターが不発に終わると、ボールを回収したセレッソはハンビン経由で逆サイドへ展開。それに対してヴィッセルが前からプレスを開始。しかし人数が足りていない状況でのプレスだったために舩木がフリーでボールを受け、そこに山口蛍がポジションを崩して無理にアプローチに出る。これが全く間に合っておらず、舩木は焦らずフリーの奥埜へ、そして奥埜からこちらも大外でフリーなカピシャーバ。と、ボールが渡っているうちに舩木がスプリントしアンダーラップし、大外のカピシャーバからハーフスペースを陥れた舩木へ。舩木はクロスを上げるも、サイドへ出てきたトゥーレルに跳ね返されスローインとなる。

このスローインから、クルークスの先制点が生まれる。

舩木のクロス、囮になった奥埜、そしてクルークスの入り方も素晴らしいんだけど、気になったのは直前のスローインに至るまでの場面で、ヴィッセルがあまりに無謀な前プレを仕掛けてきたが故にそれをひっくり返し、敵陣深くでスローインを獲得するに至った。
ひっくり返されたあとも、やっぱりハーフスペースへの対応が甘いヴィッセルはまんまの舩木にそこを突かれた格好だった。

前半は右サイドでハーフスペースを使う動きがたくさん見られたが、後半は左サイドでも同じ形が見られた。もしかすると、HTに「左からも狙うように」という指示があったのかもしれない。
実際、後半が始まってからこの場面までも、真司が左の同じスペースを使おうとしていた場面はあったからだ。

先制に成功したセレッソだが、すぐに追いつかれてしまう。

ヴィッセルはキックオフから初瀬へボールを渡すと、こちらもこれまで何度も見てきた初瀬から対角へのロングボールを蹴る。
これに対して舩木が競り合うことができずに武藤に触られ、セカンドを大迫に拾われる。ここから大迫→佐々木→大迫スルー→武藤の流れで局面を打開され、最後は山口蛍に流し込まれた。

この失点はヴィッセルが得意とする局面の勝負にセレッソが連続で負けたから起きたものだと思う。
まず武藤に対して競ることが出来なかった。そして大迫、佐々木にキープされ、そこから武藤に単独でエリア内へ侵入を許した。全ての局面で敗れてしまっている。
何度も言うがヴィッセルはこういう局面の勝負を増やして、いかに大迫と武藤に数多く勝負させるが肝になってくる。前半は大迫に競り負けてもセカンドを回収することで乗り切ってきたセレッソだったが、ここでは競り負けた上にセカンドも拾われる、ヴィッセルの最も得意な形を完璧にやられた形だった。

個人頼みという見方もできるが、その頼まれる個人が凄まじく強い。今年のヴィッセルの強さはここにありといった感じだった。

オープン合戦

後半の途中からは完全にオープンな殴り合いになっていき、正直あまり書くことはない。
オープンになるとどうしても個の勝負になってしまい、そうなるとヴィッセルに分があったように思う。やっぱり大迫や武藤な強烈だった。

一方で、途中出場のパトリッキは不発に終わる。これは毎熊が上手く対処していた印象だ。

パトリッキはスペースを与えると怖いが、1対1をドリブルで打開してくるようなタイプではない。セレッソは上手くパトリッキをサイドへ追いやり、毎熊に対処させることでスペースを与えず、パトリッキの得意はことをさせなかった。これはやはり元チームメイトであること、そして途中出場してくるパトリッキの怖さを身をもって体験しているセレッソだからこそ出来た対応かもしれない。

セレッソの前線、特に選手交代してからの陸次樹、上門、颯太、為田といった面々は個で打開するタイプではないので、オープンになってもあまりチャンスは作れなかった。スペースはあっても選手間の距離が広く孤立してしまい、彼らは孤立した状況でも何かを起こせたりボールをキープできたりするタイプではない。
結果なかなかボールを待つ時間を作れず、耐え凌ぐ苦しい時間帯が続くことになってしまう。

決勝点の場面は前川のミスであることは間違いないが、そもそもこの試合通じてヴィッセルの守備陣はロングボールに対する対応が微妙だったと思う。
特に、高いボールを自陣のエリア内近辺でバウンドさせてしまうケースが何度か見られた。

もちろん、最後の最後まで裏を狙っていた陸次樹や、諦めずにもう一度プレスに出た颯太の頑張りがあってこそ生まれた得点。
一人で打開する強烈な個ではないかもしれないが、こういったように愚直に「狙い続けること」が出来るのは陸次樹や颯太の強みかもしれない。

最後に

前節がかなり心配になるような負け方だったが、若手の台頭があった天皇杯、そしてこの試合と、良い形で公式戦連勝を飾り、一気に嫌なムードは払拭されたように思う。

クルークスや颯太など、期待を背負いながらもなかなか結果が出せず試合にも絡めない時期を経験した選手の得点で勝てたことも、非常に大きいと思う。

結局、小菊セレッソを支えてるのってこういうメンタル的な部分だと思ってるので、またこれで勢いみたいなものが出てくればいいなと。

また負傷してる選手が多い中で、代役の選手が活躍を見せたこともポジティブな要素だ。
これも小菊セレッソの強みの一つだと思うが、こうして一体感が増していけば、この先チーム状態はさらに良くなるかもしれない。

前回のグランパス戦のnoteでも書いたように、小菊セレッソは目の前の試合に対してどう挑むかが重要なチーム。
良くも悪くも、前後の試合の繋がりは薄い。

だからグランパス戦で悪い負け方をしても、ヴィッセル戦では勝つことが出来た。

裏を返すとヴィッセルに勝てたからといってダービーも、次節コンサドーレにも、どういう試合になるかはわからないということ。

また次の試合へしっかり準備してもらって、その準備が的中することを祈るばかりだ。

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