百年法 #読んだ

山田宗樹さんの『百年法』。
上下巻に分かれてるけど、飽きさせない書き方で、すぐ読めてしまう。

科学的処置により永遠の命を手に入れた人類。
ただし100年という時限付き。

万人にとっておそらく夢のような話だけれども、人間は欲深い生き物。
もっと生きたいという欲が出てくるので、百年法の施行は予定通りには行かず、、
というところから物語がスタートする。

複数の人の視点から代わる代わる描かれていく。
全てを書くことはせず、読者の想像に任せる部分もあり、それが逆に想像を膨らませる。
そして(何となく察しはつくものの)最後の一行まで楽しませてくれる。

いざ自分に逃れようのない死が迫ってきた時、人はどう行動するのか。
そして彼らが集まった時どのような集団となるのか。
リアリティのある描き方だった。

本書の大きなテーマの一つであろう、不老。
我々人間は若さを得られるなら多少の費用は厭わない。
しかしいざ不老となり、死ななくなった時のことを考えたことのある人はいるのだろうか。
この本はそんなところを考えさせる。
百年法が一時凍結され、人の生に終わりがなくなった時、混乱し逆に自殺者すら増えた。
ずっと生きるのは恐ろしいという台詞もある。

ここで描かれる人々の機微に共感せずにはいられない。
物事には終わりがある。
だからこそ、その限られた時間だけでも「若くいたい」とか「綺麗でいたい」などと願うのではないだろうか。
それが終わりが分からなくなった時、どこまで続くのか、と恐怖を覚えてしまうのかもしれない。

実際自分の人生に終わりがないと想像すると、とても恐ろしく感じる。
個人的には、時限付きだからこそ、大変なことや煩わしいことも耐えられているところが大きいので、それが永遠と言われてしまったら、逆に降りたくなる。
そんなことを考えるきっかけになった本だった。

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