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「歴代シナリオ最高峰」スイートプリキュア♪ 詳細レビュー


スイートプリキュア(引用元:sony music shop様より)


こんにちは。今回は題名の通りスイートプリキュア(以下スイプリ)のレビューを記述させていただきます。

いきなりプリキュア最難関と言われるスイプリをレビューするわけですが。実はつい先日スイプリを最終話まで拝見しました。その熱が冷めるまえにレビューを書こうという感じです。

なお、ネタバレ有で書きます。特にスイプリはネタバレ有で見てしまうと面白さが半減どころか9割減です。今から見ようとしている方はすぐにブラウザバックして、スイプリを見てからこのレビューを見てもらえると嬉しいです。

点数

①キャラ描写 30/30
過不足なく描写されています。特に主人公の響に関しては、自己実現の部分やプリキュアとして戦う理由までも描写されています。

②演出 14/20
作画の古臭さや、途中の作画崩れが気になります。
一方で、戦闘シーンに関してはハトプリほどではないにしろ、非常に見ごたえがありました。また、変身中に声が混じるようになったのは本作が初です。その点を高く評価してこの点数です。

③話の構成 30/30
プリキュアの中で最高クラスと言ってもよいと思っています。一話たりとも飽きることなく見ることができました。すべての話に構成上の意味があり、伝えたいことがあるため、毎話楽しむことができました。

④好み評価点 16/20
序盤、中盤、終盤、どこも重苦しく、辛い展開が待ち受けています。見ていて息苦しくなりました。

①キャラ描写

響と奏について

この部分で書かないといけないのは、異端とされる響と奏の関係性です。この二人は幼馴染であるものの、ちょっとした喧嘩から一年ほど険悪な関係になっています。

この喧嘩ばかりという関係性がミソになっています。プリキュアになっても、すぐぶつかって解散の危機に遭う……そういう危ない関係性です。

ですが、この喧嘩というのは普通の喧嘩とは少し違っていて、お互いのことを信用しきっているからこそ喧嘩しているという面があります。その中で、二人の思想、性格などが対立しがら描写されています。

ゆえに、喧嘩すればするほどお互いのことが理解でき、そして信頼関係が深まっていきます。その中でプリキュアとして世界を救いたいという理由も言語化されるわけです。

響の場合、音楽が好きで他人を喜ばせたいという思いから。
奏の場合、人の笑顔のためにスイーツを作ることが好きだから。

それゆえ、目の前の他人を不幸に陥れる敵が許せなくプリキュアになるわけです。こういった価値観が17話までに形成されています。

追加戦士について

キュアビート(エレン)は元々敵側だったが、プリキュアになるというフレッシュプリキュア(以下フレプリ)と似たような構造をしています。しかし、その過程は大きく異なります。

フレプリとの大きな違いは、二つほどあります。

  • セイレーンを仲間にできた要因はハミィであること

  • セイレーンの性格を丁寧に描写したこと

この二つです。
そもそも敵キャラがプリキュアになる前に、どういった性格なのか(=敵キャラ時代に内面を描写する)が非常に重要になります。言い換えるなら、「人を守るために戦えるか」を描写しなくてはいけません。

フレプリのキュアパッションは、その部分が明確でなく精々想像するしかなかったところです(強いて言うなら、ダンスとプリキュアどっちかに絞った方が良いと指摘した部分ぐらいです)。

しかし、スイプリは14話で丁寧に描かれており、そこでハミィとの関係性も描写されています。そこでプリキュアとしての適性を描いているのです。

信頼関係を過去回だけで済まさず、途中途中のエピソードや18~24話まででしっかりと描写したところも好印象です。それらの信頼関係があって、セイレーンは再び心の絆を取り戻したいと推測できます。

適性と言えば、本人が「自分は悪事を働き、様々な人に迷惑をかけた。だからそんな自分がプリキュアになる資格はない」と悩むシーンが出てきます。

これもフレプリと同じ展開ですが、そこからプリキュアになる過程はまったく異なります。

キュアパッションの場合は幸せを享受した結果、自分も幸せを守りたいというものです。一方キュアビートの場合、最初は友達であるハミィを守りたいからと言う理由でプリキュアになりました。

ですが、それはあくまで個人の話。言い方を変えるとキュアミューズと同じ立場でも良いことになります。そのため、さらにもう一段階踏み越え「プリキュアとして一緒に活動する話」を別に描写しています。

これらが複合的に組み合わさり、キュアビートがプリキュアとして再び咲き誇ることに成功しました。ゆえにフレプリの焼き直しでは決してありません。

お次はキュアミューズについて。彼女の立ち位置もかなり特殊です。10話から活動しており、仲間になるのは36話。その特殊性もスイプリの特徴と言えるでしょう。

あまり彼女について深堀りする回はなかったですが、その分本編回で描写されています。なんせ父親が自分たちに敵意を向けたこと、それがきっかけでプリキュアになったこと、その父親が意識不明になる。さらに母親も石にされるなど、アコに対して多くの試練が存在します。

それでもプリキュアの一人として、幸せのために戦うという描写が本編を見ていく中で感じ取れます。

その他敵キャラについても、しっかり描写されています。最後の敵であるノイズも、ただ倒されるためにいる敵ではなく、敵なりの正義を持ってプリキュアに立ち向かいます。

総じて、プリキュアの中でドラマチックなキャラが多いのが特徴です。追加戦士二人がノイズに人生を振り回され、メイン二人もプリキュアの中で絶対譲れない価値観を見つける。そして最後はお互い信念をもって戦う。ゆえに満点です。

②演出

これは正直、書いた通りですがもう少し深堀します。まず、歌声が混じりながら変身するというのは非常に良かったです。初見で聞いた時は衝撃を覚えて涙が出ました。

これからのプリキュアのスタンダードになることから、この点は素直に褒めてよいでしょう。

その他、変身後は前と大きく異なる姿をするというのも良かったです。やはり変身ヒロインと言うのは変身後の姿がなんぼです。最初からピンクや青の髪より、違う髪の色のほうがより変身後の印象が際立ちます。

一方作画のほうは気になる要素がいくつかありました。概ね二つあり、

  • 日常回で結構顔が崩れている

  • 戦闘面において、迫力が全くないシーンがある

この二つです。特に奏の顔がひどかったような……。
戦闘シーンにおいても、度々ただ同じ場所を殴るだけ……というシーンがありました。

敵を倒すなら、ガードしていない別の場所を攻撃すべきです。それを全く行っていないため、説得力に若干の問題が出ていました。

③話の構成

これはもう満点以外ありえないでしょう。大まかな流れを説明していくと、

1~9話 響と奏が信頼関係を深めていく話
10~15話 キュアミューズの登場とその正体について
16~19話 セイレーンとハミィの関係性
20~25話 セイレーンがキュアビートとして活動するまでの話
26~28話 セイレーンの日常(プリキュア以外の)描写
29~33話 ヒーリングチェスト、および敵の正体について
34~37話 キュアミューズ加入回
38~41話 音符集め終了まで
42~48話 VSノイズ

と言う感じです(話数に違いがあるかもしれません)。
見ていただくとわかると思いますが、何回も話題が転換していくわけです。
その中に、次の話題について描写されたり、あるいは伏線を張っていくわけですから見事と言わざるを得ません。

マクロな視点でも面白いことを説明したので、今度はミクロな視点で紹介しましょう。

本作の話が面白いと思える理由は三つあります。

  • 一話ごとに伝えたいテーマが明確

  • ミスリードが随所に行われているため、先が読めない

  • 伏線もきっちり貼られているため、次の展開を予想したくなる

以上三つです。
一つ目に関してはそのままで、そのエピソードを終えた時こちらの心に残すようメッセージ性を用意しています。

例えば響と奏の関係が修復していく様を描く、あるいはキュアビートがプリキュアとして戦いたい理由など、心情面について描写することもあれば。

二人が力を合わせることが大事、今は勉強できなくとも応援してくれる人のために今から頑張る等、視聴者へ伝えたいことを意識して作っています。そのため、一話一話見終わった後にすっきりとした清涼感を持てました。

二つ目のミスリードですが、これは序盤が顕著です。キュアミューズの正体は誰?と言う展開になった時、初見の人はセイレーンを意識したのではないでしょうか。

他には、日常回でもミスリードが見受けられました。例えば3話において響の音楽が嫌いになった理由は何か、と言う部分。当初「失敗したからか」などなど予測したわけですが。

正解は「親に言われたから」というものでした。いや、わかるわけないだろwと思いながらも、こうして予想外の展開を用意してくるわけですから飽きることはまったくありませんでした。

三つ目の伏線ですが、これも実はかなり丁寧に張り巡らされています。
例を挙げるときりがないですが、

  • OPでアフロディーテとメフィストが同じポーズをとっていること

  • 一話でセイレーンがハミィとケンカしたこと

  • 30話で音楽で人を楽しませる+自分も楽しんだ経験をしたこと

などなどでしょうか。特に初期で喧嘩をしている人たちなどは、響と奏の関係修復が活きてくるわけです。自分たちも喧嘩した関係だったけど、心を通じ合わせることができた。だから、貴方たちもそれができるはずだ。

その他、響の夢が「家族と一緒に音楽をやりたい」ですが、こう思ったきっかけもきちんと描写されています。

三話の時点ではただプリキュアとして強くなるために音楽をやっていましたが、十七話で音楽のすばらしさを味わい、三十三話ぐらいで夢のために結果を残すことに成功したなど。

複数の話が絡み合ってキャラが形成されており、心情が見えてくるわけです。こんな素晴らしい話を満点にしなくてどうするのか。

④好み評価点

ここでは、今までの部分で拾いきれなかった部分について語ります。

異端さについて

本作は良く異端なプリキュアと表現されます。それはなぜでしょう。私が見た限りでは、大きく三つの要素が絡み合っていると考えられます。

  • プリキュア同士が喧嘩しあっている

  • 音符争奪戦という、プリキュアと敵キャラがお互い同じものを狙っている

  • 全体的に重く暗い雰囲気が漂う

これら三つの要素が関連しています。一つ目のプリキュア喧嘩ばっかりと言う部分はすでに説明したので割愛します。

二つ目の音符争奪戦ですが、2011年までのプリキュアではなかったやり方です。後ろまで飛ばせばまほプリやプリアラが近い形にはなりますが、それでもスイプリとはまた性質が異なります。

基本的にこの時までのプリキュアが戦う理由と言うのは

  • 妖精たちを守るため(5など)

  • 自分たちに襲い掛かる敵を撃退するため(初代など)

  • みんなの幸せのため(フレプリ、ハトプリなど)

これら三つの理由が主な理由でした。しかし新機軸である「幸せのメロディを作るため音符を集める」は、一見三つ目に該当すると思うかもしれません。

実際のところ、三つ目は「敵キャラが民間人を襲うためそれから守りたい」と言うものに対し、スイプリは敵の目的が民間人を襲うことではないです。結果的に襲っていますが、それはにっちもさっちもいかなくなったため力づくの戦法です。

ゆえにこの音符集めと言う部分においてお互い駆け引きが生まれます。どうすればプリキュアより早く集められるか、もっと効率よく集める方法はないのか、等々様々な方向に話を展開することに成功しました。

この話の幅が結果的に面白さにつながっているわけですね。

三つ目については次の題目の方で語ります。

全体的な雰囲気について

重く苦しいと表現しましたが、これについて説明しましょう。本作の敵キャラは非常に狡猾です。音符を集めるため、プリキュアを騙すという手法を何回も取ります。

セイレーンが敵だった時は、友達に変身する、母親に変身する、(当時正体がわからなかった)キュアミューズに変装する、そして改心したふりをしてハミィを騙す、等々行っています。

セイレーンが味方になった時からは騙すという行為は少なくなりますが、今度は信頼関係を壊すような部分が描写されます。ヘッドホンを使うことで、愛だの友情だのを否定する洗脳を行う、と言う部分。

この過程が実に生々しく、善性が残っているにも拘らずもがき苦しみながら洗脳されていきます。

余談ですが、「心が操られていた」描写が明確なプリキュアは本作が初です。プリキュアに絆される敵キャラはキリヤ君やイースなどいますが、もともと善性だったキャラが洗脳された結果、敵キャラになるというのはいなかったと記憶しています。

他にも、信頼していたキャラに裏切られた、不意を突かれた等々人間不信になりそうな描写がたくさんあります。東日本大震災の後なのにこんなグロテスクなプリキュアを流してよいのか……と思ったことも何度かあります。

それにもかかわらず、最終話ではノイズに対話を示し理解しようと動きます。ノイズが悲しみから生まれた人物。ゆえに、自分の生み出す音すべてが悲しみのものだと主張。

一方、プリキュアたちは羽音や声が不幸をまき散らすのではなく、それすらも幸せの組曲の一部だ、と主張。そして殴り合った結果、分かり合うことができノイズさえ受け入れるプリキュア。

散々な目に遭ったにもかかわらず、その元凶であるノイズすら受け止めようとする。なんとも懐が深いものだと舌を巻いてしまいました。

まとめ

とにかく、好き嫌いがはっきり出るプリキュアだと思います。最初の喧嘩についても、思わず目を閉じたくなる描写がいくつかありましたし、その後もプリキュアが騙されるシーンが多く見ていて辛くなることもありました。

その中で、悲しみを乗り越えて次の幸せへ進む彼女たちを見られたことに強く感謝しています。

物語としての完成度は非常に高く、精緻に作られています。一話も飽きさせることなく高い密度でもって最終話までもっていきました。

どうしてこのキャラはこういう行動をするのか、と言う部分についてもかなりフォローが多く、情報量が豊富なアニメです。大人向けともいえるでしょうか。

様々なことに挑戦し、そのすべてが成功したといって良いと思っています。惜しむらくは、それを受け入れられる人が当時少なかったことでしょうか。

再放送にて再評価されたという声も聞きますが、本来ならもっと評価されてもいい作品です。それだけのポテンシャルを感じました。

点数 90/100 傑作

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