「熱血スポ根ストイック女児アニメ」プリティーリズム オーロラドリーム レビュー
画像はタカラトミーアーツ様より引用しました。
https://www.takaratomy-arts.co.jp/specials/pretty10th/
こんにちは。
今回はいつものプリキュアではなく、株式会社タカラトミーから放送された本作品をレビューしたいと思います。
放送は2011年度で、プリキュアで言えばスイートプリキュアになります。監督は赤尾でこ氏で、製作はタツノコプロ。
評価に入る前に軽くあらすじを説明します。本作はストーリーはシンプルなものの、造語が多く理解が難しいところがあるためです。
主人公である「あいら」は、おしゃれが大好きなもののドジなところがある普通の中学二年生。そんな彼女が、ひょんとしたことでアイドル版スケートである、プリズムショーに参加することになった。そこで才能を開花し必殺技のジャンプであるプリズムジャンプをした彼女は、仲間のりずむとともにプリズムスター(アイドルみたいなもの)になっていく。
という感じです。固有名詞が多くてよくわからないと思いますが、要するにスケートショーが、ライブみたいなものになっていると思ってください。
では論評に入ります。
論点
キャラ描写において、ストイックさが一つのキーワード
「仲間」に関する考え方も、ストイックさが観点にある。
普通の女の子を主人公に据えた意味
女の子の夢が詰まっている
キャラ描写
30/30
3人という少ない人数のためか、ストイックなところもそうでないところもしっかり描かれています。特に複雑な人間ドラマ性は圧巻の一言。
演出
10/20
余りにも癖が強く、シュールに見えてしまいます。慣れればそうでもないのですが。
話の構成
30/30
けちのつけようがありません。全体的に起伏がしっかりしています。
個人的評価点
15/20
女の子の夢が詰まっている良い作品ですが、それだけに男性との恋愛もみっちり詰まっているせいで……
総合得点
85/100 傑作
論点
ストイックさについて
まずはここからいきましょう。本作は他のアイドルアニメと異なり、とにかく至る所にストイックさが見えます。
具体的には先ほど説明したプリズムショーにかける想いが半端ではありません。例えば主人公の友達であるりずむですが、彼女はダンスが得意で、そのほかのことが苦手です。
その苦手に関しては徐々に改善されるものの、ダンスにかける想いがかなり強いです。自分の強みに対して誇りに思っており、喧嘩の中で友達の大事にしているファッションへ否定的な言葉を投げかけます。
若干流れが強引だと感じましたが、プリズムショーにかける想いが強すぎるからこそ、このような強い我が生まれたと私は解釈しています。
直前までは仲良くしていただけに、プリズムショーというものに対しては友達だとしても譲らないストイックさがこのエピソードで垣間見えます。
ストイックさを表すエピソードは他にもあり、とある大会に出場した際あいらとりずむの二人の衣装がボロボロにされます。その中で、あいらだけが代わりの着替えを一着だけ持っていました。
ですが、あいらはその衣装をりずむに譲ってしまいます。それが発覚した際、りずむはあいらのことをひっぱたきます。しかも顔面を。
彼女からすると、プリズムショーというのはお互いの全力を尽くす場。それなのに、あいらから一方的に尽くしてもらうというのは納得いかなかったのです。
ここまでストイックな理由として、失踪した母と同じ境地に立ちたいからと描写されています。同じくプリズムショーをやっていた母が、最強の必殺技であるオーロラジャンプというものを披露したことから失踪します。
りずむもオーロラジャンプを飛ぶことで母と同じ立場に行きたい、そして母に見せたいという思いを持っています。それゆえ、プリズムショーに関して強い思いを持っているわけです。
もう一人の登場人物である「みおん」についても触れていきます。彼女は元々読モを務めており、それだけにプロ意識が強いです。またプリズムショーも始めただったものの、最初から高い実力を示します。
彼女もプロだからこそ、仕事には最善を尽くすべきだという主張をします。それゆえ、演出の部分も完璧にこだわります。ちょっとでもずれていたらダメ、傍から見たら問題なくとも納得できなかったらやり直します。
これは生い立ちに理由があり、一人でいることが多く育ち、かつその中で芸能界を立ち回ったことが理由です。ただ、親と一緒にいられない寂しさから、プリズムショーで見てほしいと考えているわけです。
その中であいらとりずむと交流していく中で、自分を知らなかったステージへ連れて行ってくれる存在と認めることで一緒に活動していきます。ですが、そこはプリティーリズム。
他人と同じ演技はしたくないということで、自分だけの最高のプリズムジャンプ(必殺技)を探しに修行へ行きます。
とまあ、一癖も二癖もありますが、二人に共通して言えるのはストイックさ。プリズムショーに関して想いが大きいからこそ、常に最善を尽くします。そこに衝突は避けようとせず、むしろ衝突を繰り返します。こんなアイドルアニメは中々ありません。
仲間に関する描写
本作を語るうえで外せないのはここでしょう。あいらとりずむ、そしてみおんの三人は友達ですがライバルです。一緒に泊まることもあるし、遊びにも行く。
だけど、勝負事には真剣だし馴れ合うことはしない。付き合っているのは、一緒にいて楽しいからという面もありますが、何よりも自分をより高みへと連れて行ってもらえるから。その様子がひしひしと伝わります。
その代表的なエピソードは25話ぐらいの試合。
プリズムショーでタッグを組んで取り組もうという回がありました。りずむにとっては、絶対手に入れなければならないもの。
その中で勝負に挑むわけですが、いつも仲良しのあいらとともに挑むことになります。同じコーデかつお互いに配慮した演技のほうが見栄えが良いと考えます。
ですがその防御策で言った結果、お互い個性がぶつかり合った別の二人組のほうが優勝します。その話からあることを悟ります。仲間というのは馴れ合うためではなく、自分たちを高めあうためにいると。
言うなれば、お互いに配慮するのではなく、むしろぶつかり合うことを推奨しているのです。そんなアイドルアニメ、中々みません。
2011年は同じくアイドルものであるアイドルマスターのアニメの放送年です。このアニメではみんなと一緒に目標に取り組むことこそが、大きなことを成し遂げるものだと主張しています。
一方で、そのアイマスは本作から見たら馴れ合いに見える要素が多様に含んでいます。仲間内で、ライバルとしてバチバチ競い合う要素というのはほとんどありません。
そういう要素は昔あったらしいですが、コンテンツを長く続けるために敢えて薄目にしたと聞いています。しかし、プリティーリズムではその要素に敢えて真正面から挑んでいます。
今ではアイマス型のアイドルアニメが深夜だと主流になっている節すらありますが、それゆえに本作が際だって目立ちます。
あえて普通の女の子を主人公に据えた意味
主人公に関する記述を控えていましたが、ここで説明します。主人公の「あいら」は普通の女の子です。ファッションに強い興味があるが、運動音痴で、プリズムショーもよく知らない……という女の子。
そんな少女がプリズムショーに成り行きで参加することになり、そしてその業界に加わるわけです。最初は全く自信がなく、失敗ばかりなあいら。ですが、プリズムショーが楽しいという根源的な想いで続けます。
他の仲間や登場人物はプリズムショーが楽しいというより、それで成し遂げたいことがある、という気持ちで取り組んでいます。言い換えるなら、目標がある。しかし、あいらにはそういった目標意識が薄いです。
自分のために優勝したい、という気持ちがほとんどありません。それも普通の女の子だからですが、他の登場人物に比べると浮いています。闘争心バリバリの女の子ばかりいる中で、友達と一緒にプリズムショーをやるのが楽しいという主人公が浮くのも仕方ない話でしょう。
だからこそ、彼女の物語的な立位置はかなりはっきりしています。それが「他人の夢を叶えること」。言い換えるなら、視聴者の普通の女児であっても、アイドルと言った夢をかなえることができると明示したことです。
普通の女の子でも、楽しいという気持ち一つで夢をかなえることができる。お母さんのためとか、家族に見てほしいから、と言った特殊な事情がなくても、プリズムショーで活躍できる。
それを立証したのが最後の大会で優勝したところでしょう。最後の展開は、プリズムショーで最強の必殺技である「オーロラライジング」を、主人公だけでなく観客も飛んでいました。
意味不明な描写かもしれませんが、これは応援の意味が込められています。テレビの前にいる女児の夢もかなえることができる、とメッセージを込めているわけです。
こういう観点から見ると、献身的な部分も説明できます。最後の展開で、他人の夢をかなえることができる、他人のために頑張るという部分に説得力を持たせるために、衣装を他人に譲るわけです。
以上のことから、本作のメッセージ性を伝えるために主人公は必須です。他キャラがこのメッセージを伝えようとすると、複雑なドラマが邪魔をしてしまいます。普通の女の子でなくてはいけないわけです。
女の子の夢が詰まっている
最後にここの話をしましょう。本作が普通の女の子である「あいら」の物語であることは説明しましたが、夢がたくさん詰まっています。
プリズムショーというアイドル的な立ち位置に立てることもそうですが、イケメンの同僚にも支えてもらえること、本当にアイドルデビューする、歌手としてもデビューするなど、男性から想像できる女の子の夢が詰まっています。
言い換えるなら、「あいら」のサクセスストーリーです。どこにでもいそうな少女が、隠れた才能を発揮しアイドルやイケメンな異性にも好かれていく。
ネット小説でやっていたら臭みがあるものの、そこは女児向けアニメ。好感の持てる主人公のおかげで、むしろ感動すら覚えました。
総評
素晴らしいアニメでした。プリキュアと比べても遜色ない完成度です。夢という部分にフォーカスを当て、熱血スポコンアニメを展開するというのは既存作品であるプリキュアではできないことです。
プリキュアは基本的に仲間は「頼るべき相手」であり、その仲間との友情が奇跡を起こす、というストーリーラインです。ですが、本作は大きく異なります。
仲間は自らを高めあう存在であり、ライバルです。ゆえにメリハリがかなりきいています。主人公の「あいら」であっても、勝負の場面では勝ちを狙います。なによりも、それが楽しいから。
プリキュアと比べると、男性との恋愛描写が多いのも特徴です。私みたいな男性視聴者からすると苦笑ですが、女児向けとして考えると有りでしょう。とにかく熱血スポコンアニメが好きな人は、是非とも12話まで見てほしいです。
85/100点
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