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川 2


朝方の雨の音に
何度も眠りから浮上し
夢を見た
野原に寝っ転がった僕の体に
容赦なく雨が叩きつけていた
喘ぎ叫び
目が覚めた

その夕方もまだ雨が降り続いていた
僕たちは傷口の匂いを嗅ぎ当てたかのように
街角の書店で出会った
生い茂った葉に隠れた
熟れた果実みたいな君は
僕と同時にある音楽雑誌に手を伸ばした

君と僕とはあまりにも似通っていた
傍若無人な種族の言動に傷つき
世間の陰に陰にと身を寄せている
共感が互いを温め
脆さが寂寞を深めた

半年の月日は自然のなりゆきのように
草陰の淀みにふたりを浮かべていた
夕方の街角にはうら寂しい雨風
ふたつの孤独な影がうっすらと落ちていた
そのときの僕はまだどこかに
共に歩み進める道があることを信じていた
君の沈黙を分かろうともしなかったくせに




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